No.80 副腎皮質機能低下症 (Addison’s disease)

副腎皮質の機能が低下する病気もあります。副腎皮質機能低下症(アジソン病)です。若い雌犬に多く発症し、好発犬種は、スタンダード・プードル、グレート・デーン、コリー種、テリア種です。猫では稀です。コルチゾール(グルココルチコイドの一種)とアルドステロン(ミネラルコルチコイドの一種)のいずれか、もしくは両方が不足することで生命を脅かす緊急疾患になる場合があります。

原因は

・自己免疫性の副腎破壊(原発性):コルチゾール、アルドステロンとも不足(コルチゾールのみの場合もあります)

・副腎腫瘍(原発性):コルチゾール、アルドステロンとも不足(コルチゾールのみの場合もあります)

・下垂体からのACTHの分泌不全(二次性):コルチゾールのみの不足

・長期のステロイド投与後の急な投薬休止のよる(医原性):コルチゾールのみ不足

・副腎皮質機能亢進症の治療時のトリロスタンなどの投与(医原性):コルチゾール、アルドステロンとも不足(コルチゾールのみの場合もあります)

上記のようなものです。コルチゾールのみが不足するものを非典型的なアジソン病(電解質バランスは正常)といいます。非常に稀ですが、コルチゾールの分泌は正常でアルドステロンのみ不足する場合もあります。私は2例経験しています。

主な症状は、活力低下、虚弱、食欲不振、体重減少、嘔吐、下痢、多飲多尿、振るえで、重症例では、脱水、心機能低下、除脈、がみられショック状態となりアジソンクリーゼという深刻なケースとなります。また、稀ですが巨大食道症が併発する場合があります。

一般の血液検査では、血中Naの低下、Kの上昇、BUNの上昇、肝酵素の上昇、非再生性貧血、低血糖、低ALB、がみられます。症状が重篤なのに白血球のストレスパターンがみられない場合があります。レントゲンの検査では小さな心陰影がみられます。超音波検査では、通常、副腎は萎縮してみえます。確定診断にはACTH刺激試験が一般的に用いられています。副腎皮質機能低下症の場合はACTH刺激試験に反応しません。

治療は、アジソンクリーゼの状態の場合には入院の上での集中した治療が必要です。長期管理にはフロリネフという薬を使用するのが一般的です。生涯にわたる投与が必要なことが多いです。