No.333 変性性腰仙部症候群 (馬尾症候群 Degenerative LumboSacral Stenosis;DLSS)

変性性腰仙部症候群とは、腰仙椎移行部(第7腰椎と仙椎の間)の病変により神経徴候が現れる疾病で、腰部の痛み、後肢の跛行・歩様異常、酷くなると歩行困難、排尿・排便以上が出現します。馬尾症候群やDLSSとも呼ばれます。ボーダーコリー、ボクサー、ジャーマンシェパード、雑種犬などの中~大型犬に多く、使役犬やアジリティー犬でよくみられます。また2:1で♂の方が多いといわれています。小型犬や猫にもみられますが稀です。中年齢以降(平均7歳)で徐々に症状が進行する慢性疾患です。

原因は、
・椎間板ヘルニア Hansen II型(→No82椎間板ヘルニア1No83椎間板ヘルニア2)
・関節間靭帯の肥大
・仙椎アライメントの不整
・L7(第7腰椎)の骨棘形成
・仙椎間関節突起の骨棘形成
・硬膜の線維化
上記の様なものから、腰仙部の慢性進行性の変形により神経が圧迫や血行障害などを受けることで発症します。

疑う初期症状は、
・運動後やジャンプ後に動きたがらなくなる
・腰仙部を圧迫すると痛がる
・後肢を後ろに伸ばすと痛がる
・後肢伸展時の痛みに左右差がある
です。通常いずれも慢性経過を辿ります。

診断は、症状と神経学的検査、直腸検査も有効です。レントゲン検査、脊髄造影、CT、MRIが必要なこともあります。

治療は薬剤による疼痛管理と安静が基本ですが、半導体レーザー、代替医療などが効果的な場合もあります。重症例は手術ですが、背側椎弓切除術(Dorsal Laminectomy)、外側椎間孔切除術(Lateral Foraminotomy)などの手術法が報告されていますが、かなり難易度の高いものです。全身麻酔は必要となりますが、硬膜外ステロイド投与は比較的簡単に行えて効果的です。


変性性腰仙部症候群のレントゲン(すべての症例がこのように見える訳ではありません)