No.69 乳腺腫瘍2(Mammary tumor)

治療

麻酔がある程度安全にかけられる場合で、炎症性乳癌(はっきりしたしこりが乳腺にはないが、炎症、発赤、痛みが強い、悪性度の高い乳腺癌)などの特殊な状況以外においては、一番良い治療法は外科手術です。放射線治療や内科治療(抗癌剤、ホルモン剤)なども研究はされていますが、現在、外科手術に勝る治療法はありません。犬、猫の場合の基本的な手術法は、癌細胞がリンパ節を通じて転移することを防ぐため、腫瘍がある側の乳腺と鼠径リンパ節(場合によっては腋窩リンパ節も)を全部摘出する、片側乳腺全摘出術を行います(両側に腫瘍がある場合には、両側の乳腺を1度に切除する両側乳腺全摘出術を行う場合もあります)。ウサギの場合は、各乳腺が独立しているので、その腫瘍のみの摘出をします。注意すべき点としては、多くの症例で卵巣や子宮にも病変が確認されるので、卵巣・子宮の摘出も同時に行います。卵巣や子宮に病変が認められない場合は、乳腺の手術のみで良いという考え方もありますが、個人的には、卵巣、子宮にもいずれ問題が生ずることが多いので、一緒に手術することをお勧めしています。摘出した乳腺腫瘍に病理組織検査を行い、良性か悪性かを判断します。

予防

犬でのデータですが、最初の発情を迎える前に不妊手術をした場合の発生率は約0.05%であるのに対し、初回の発情後の手術の場合は約8%、2回目発情後以降の手術の場合は約26%となり、発情周期の経過とともに発生率が高くなることが報告されています。また、出産を経験している動物は、未経産の動物と比べると、発生率が低いことが知られています。つまり、生後5~6ヶ月での不妊手術が一番の予防です。その時期をのがしても、子供を取らないのであれば、出来たら3歳くらいまでに不妊手術をしてあげて下さい。そして、不妊手術をしないのであれば出産を経験させることが、乳腺腫瘍の発生リスクを減らします。

お腹にしこりをみつけたら、なるべく早く診察を受けて下さい。とくに猫の場合は、乳腺腫瘍はほとんどが悪性です。他の多くの悪性腫瘍と同様に、悪性の乳腺腫瘍でも、早い段階で手術すれば根治する場合も多いです。