No.103 前十字靭帯断裂 2 Cranial Cruciate Ligament Ruputure (CrCL)

歩き方や痛みで前十字靭帯断裂を疑ったら、まずは触診によって確認します。患肢の筋肉の萎縮や膝関節内側部の肥厚、膝関節が腫れて動きにぐらつきが見られたら前十字靭帯断裂を疑います。また、『お座り試験(Sit test)』できちんとお座りができるかどうか。『膝の過伸展』で膝の痛みがないかどうかを確認し、整形学的検査の『前方引き出し兆候(Cranial drawer sign)』、『脛骨圧迫試験(Tibial compression test)』を行います。そしてレントゲン撮影を行い、実際に関節がずれている、関節包が腫れているなどの所見により診断を行います。関節鏡やMRIなどを行うこともあります。

治療は10Kg以下の犬で軽傷の場合は、安静、痛み止め、レーザーなどの保存治療で概ね上手くいきます(猫では体重が軽くても手術が必要な場合が多いです)。体重が多い場合、症状が重度の時、内科的な治療で反応が悪い場合は手術が推奨されます。

手術には関節内固定法、関節外固定法、矯正骨切り術、人工物を用いた靭帯再建術などの様々な手術法が議論されていますが、現在では15kgぐらいまでの犬に対しては術式も簡単で費用も比較的安い関節外固定法の1つであるラテラルスーチャー法、15kgを超える犬に対しては脛骨高平部水平骨切り術(TPLO法)が推奨されています(図参照)。

予防は体重管理と急な運動をさせないこと。また前述したように、膝蓋骨亜脱臼のある犬や高齢犬ではとくに注意が必要です。

前十字靭帯断裂まとめ
・犬で一番多い整形外科疾患
・前十字靭帯は脛骨が前に飛び出さないように制限している重要な靭帯
・体重の軽い犬は内科的治療
・体重の重い犬、猫は外科的治療
・予防は体重管理、急な運動を避けること

TPLO法模式図