No.14 学習その1 馴化、洪水法、脱感作

『しつけ』『トレーニング』については、みなさん興味があると思います。『しつけ』『トレーニング』の元となる『学習』の理論についてです。

経験による行動や心理の変化を学習といいます。学習の理論を知るとしつけやトレーニングに生かせますし、問題行動の改善に役立ちます。また、間違った認識のしつけやトレーニングは百害あって一理なしで、人も動物も不幸です。

まずは『馴化(Habituation)』です。刺激の繰り返しにより反応が減少することを馴化といいます。平たく言えば『慣れる、慣らさせること』です。例を挙げると、カレー屋さんに入った時に、カレー独特の強い香辛料やスパイスの匂いがしますよね。しかし、カレーを食べ終わるときにはお店の匂いはほとんど気にならなくなっていると思います。他人の車に乗ったときなどにも同じような経験をされるのではないでしょうか。また、子犬に初めて首輪を装着したとき、最初は非常に気にしますが、徐々に馴れて気にしなくなります。これも馴化です。馴化をしつけやトレーニングに利用したものに、『洪水法(Flooding)』と『脱感作(Desensitization)』があります。

洪水法は、子犬のうちに触りまくって人の手に馴れさせる。犬のお腹を上にして(服従のポーズ)押さえつけ、人間がリーダー(アルファ)だということをわからせる。などがありますが、うまく行く場合もあるのですが、刺激が強いので注意が必要です。とくに、後者のような体罰を用いたしつけやトレーニングを行うのは非常に困難です。お勧め出来ない方法です。また、前者の方法にご褒美を用いると、トレーニングの効果がアップします(触られる→おやつが貰える→嬉しい。触られる=嬉しいことと。なります。これを古典的条件づけと言います。次回に解説します)

脱感作は、刺激の強度をだんだんと強めることで徐々に刺激に慣らさせる方法です。アレルギー治療の減感作療法と同じ原理です。不安や恐怖症のときに用いると効果的です。例としては、犬嫌いな人が、犬を飼っている友人ができ、少しずつ犬と対面するうちに犬が大丈夫になる。猫アレルギーの人が、仕事で猫と少しずつ接しているうちにアレルギーが出なくなる。実際には、男の人が嫌いなワンちゃんを治療しようとするときに、初日は15mぐらいの距離からおやつを数回投げてもらいます。次の日は14m、その次の日は13m、12m…0mとだんだん距離を縮めて行きます(ご褒美は古典的条件づけの方法です。次回に解説します。複数の方法を組み合わせることによって効果が上がります)また、ご褒美、おやつはほんの少量でオーケーです。たくさん貰っても少量でも嬉しさは一緒です。貰えたってことに意味があります。

今回の内容は、入交眞巳先生(北里大学)の横浜動物医療センターでの講義、高倉はるか先生(株式会社トリーツ)のリンゲルゼミでの講義を参考にしております。