No.397 犬の股関節形成不全 (Canine Hip Dysplasia:CHD)

股関節形成不全(Canine Hip Dysplasia:CHD)は、主に大型犬種または超大型犬種に発生する整形外科学的疾患です。小型犬種および猫にも発症します。生まれた時は正常な股関節に徐々に緩みが生じ、股関節が変形し異常に成長してしまう疾患です。アメリカなどでは素因のある固体の繁殖を禁止してかなり減っている疾患ですが、日本ではまだまだ多くみられます。

股関節形成不全に関連した症状の発症する時期には2つの型があります。1つは若齢期に発症する型です。様々な程度の緩みが股関節に生じ、その緩みが股関節の支持組織(関節包、滑膜、大腿骨頭靭帯)の炎症の原因となり疼痛を示すこととなります。もう1つの型は中齢から高齢にかけて発症する型です。こちらは若齢期発現型とは異なり、股関節の緩みはないことが多く、関節構造の形成異常が認められる状態となります。関節の構造異常(不整合性、不安定性)に関連して骨関節炎 (Osteoarthritis: OA) が発症し進行し、関節軟骨の損傷、そして関節の可動域の減少が認められるようになります。

この疾患の特徴的な症状は後肢のふらつきです。両側後肢で同時に地面を蹴るように走行し、この走行形態をウサギ跳び様走行と呼んでいます。飼主様が気付かれるのは下記の様な症状です。また、多くの場合、症状が少しずつ進行していると感じているようです。

・散歩を嫌がるようになった
・散歩の途中に座りたがる
・寝ている状態から起き上がってからすぐの歩様がおかしい。
・長距離を歩けない。
・段差をいやがる
・車に飛び乗らなくなった

これらの症状は他の整形外科学的疾患(膝関節疾患、前十字靭帯断裂)や神経学的疾患(脊髄疾患、馬尾症候群)および後肢や骨盤領域の腫瘍性疾患などにおいても同様に認められる場合があるので鑑別する必要があります。

診断は、犬種、症状、触診、レントゲン検査などで行います。レントゲン検査は麻酔下で行うことが必要です。場合によってはCT検査が必要なことのあります。

治療は、内科的治療法と外科的治療法があります。どちらの治療法を選択したとしても、体重制限、運動制限、そして滑りやすい場所にマットを敷くなどの環境要因の整備を含めた保存療法が必須となります。

内科的治療法:薬剤や半導体レーザー、代替医療などを用い、疼痛を軽減することを目的として行います。股関節形成不全の主要な原因と考えられる股関節の緩みを矯正せず、障害された関節を回復させないため根本的な治療とはなりません。関節疾患の多くに言えることですが、内科的治療により疼痛を軽減させることは可能であり、管理が上手くいった場合には治療を必要としなくなることもあります。しかし異常な関節構造を正常に戻している訳ではないため完全に回復することはありません。

外科的治療法:現在、障害された関節を人工器具に置換する股関節全置換術 (Total hip replacement; THR) または障害された関節を切除する大腿骨頭・骨頚切除術 (Femoral head and neck osteotomy; FHO)があります。後者は当院で可能ですが、前者は専門医の手術が必要です。

一般的に、中齢から高齢で発症し体重の軽い個体の場合は、内科的療法で上手く行く場合が多いです。若齢で発症した場合や中型~大型犬や肥満の場合は、外科的な対応が必要となります。


両側の股関節形成不全

こちらもご参照下さい
No200 半導体レーザー
No103 前十字靱帯断裂2
No102 前十字靱帯断裂1
No31 膝蓋骨脱臼