No.165 水(Water)

今回から六大栄養素についてのお話です。炭水化物、タンパク質、脂肪のことを三大栄養素といい、これにビタミン、ミネラルを加えたものを5大栄養素、水を加えると六大栄養素です。最初は1番大切な水からです。

水は生体にとって最も重要な栄養素であり、全体重の約60%、脂肪を除いた体重の約70%を占めます。また、血液・リンパ液・細胞中の主成分であり、栄養素を運んだり体温をコントロールする他、消化や化学反応の溶媒など、多くの役割があります。動物は10%程度の脱水でも死に至ることがあります。

体外への水分の排泄は尿によるものがほとんどです。大便からの排出は大腸での水分の再吸収に問題がなければそれほど多くはありません。その他には皮膚や呼吸からの不感蒸泄があります。毛が多く体表の汗腺が少ない動物はヒトのように発汗で体温調節ができないため、気温や湿度が高い季節では呼吸が早くなり、水分の損失量が増加します。

犬や猫の水分摂取源は、飲料水、食事に含まれる水分、代謝水(体内で栄養素がエネルギーになる際に生成される水)です。しかし、代謝水は総摂取水の5~10%に過ぎないため、実際には、飲料水と食事から、つまり口からの摂取が重要です。一般的に必要な1日当たりの水分量はDER(1日あたりエネルギー要求量→No41)にccを付けた量が目安です。理想体重(BCS3→No40)の5kgの犬だと約367cc、10kgの犬だと約618ccです。ドライフードのみの食事であればこの量が必要ですが、ウェットフードのみの場合はウェットフードの80%は水分のため、BCS3の5kgの犬だと約73cc、10kgの犬だと約124ccと、かなり少なくなります。また、犬や猫は必要な水分量の70%程度が確保できていれば喉の渇きを覚えないといわれていますので、いつの間にか水分が足りなくなっていることもあります。24時間、いつでも新鮮な水が飲める環境にしておくことは、とても重要です。

また、猫では水分の体内再利用効率が高く、自発的水分摂取量が少ない場合が多いです。そのため尿が濃縮しやすく尿石症などのリスクが増大します。猫に水分摂取を促す工夫としては、猫はもともとは狩猟動物であるので、動くものに反応し、獲物をすぐに食べるので温度や風味が刺激になります。下記のような方法があります。
1.動き:噴水式の給水器や流れる給水器を使う
2.温度:ぬるま湯にする
3.風味:缶詰の肉、肉のゆで汁などを水に加える

今でもミネラルウォーターを動物に与えてはいけないと書いてある一般書やサイトがありますが、たしかにカルシウムやマグネシウムの含量の多い硬水を長く使用すれば結石の原因となるかもしれませんが、軟水なら構いません。