No.183 犬の不安障害1

不安とは「気がかりな心の状態。安心できないさま」のことをいいます。不安は、誰もが感じるもで、少々の不安を感じるからといって日常生活に支障をきたすわけではありません。不安障害とは、誰もが感じる程度をはるかに超える不安を持ち、それがもとで日常生活に支障をきたしてしまう状態をいいます。脳科学的には不安はセロトニンが不足していると考えられています。犬はヒトの言葉や行動を理解することにおいては9歳児の知能があると考えられていますが、精神年齢は3歳児程度です。このギャップも犬の不安を理解するために認識して下さい。

分離不安症(Separation anxiety)
犬の不安症で1番有名なものが分離不安症です。

定義
一般的に飼主さんという愛着を多く感じる人(達)が外出した時、あるいは外出を予測できた時に不安行動として、破壊行動、過剰な吠え、排泄行動などを示す。潜在的に恐怖、不安、飼主さんへの過度の愛着、適切な社会とのかかわりあいの不足などの問題も関連していることが多い。

分離不安症に関する特徴・危険因子
・品種・性別に差異なし
・どの年齢でも発症しうる
・譲渡された犬、迷い犬であった個体に多い
・飼主さんが一人暮らし
・飼主さんが出かけてしまうことに対する不安感が非常に高い
・飼主さんが外出の準備をしている間にarousal(脳興奮・覚醒=不安感)がどんどん増す
・飼主さんが出かけたときに不安感がピークとなる
・脳の興奮(不安感)を落とすために行動がでる

臨床兆候
不安から発現する行動すべてが当てはまります。
・過度に吠える
・トイレの失敗
・逃避を試みて破壊行動 をする
・脱毛や抜毛などの自虐行動
・不安になると水を飲む→多飲・多尿
・嘔吐・下痢
・過度の流涎
・同居の他の動物とのけんか
・飼主さんの臭いのついているものに対してのいたずら

上記のような行動があり不安障害を疑ったら、まずは以下の鑑別診断をします。

鑑別診断
・生理学的な問題:何らか内科的・外科的疾患があって、不安な気持ちが大きい時にも上記の症状が出る場合があります。とくに、整形学的な痛み、甲状腺・副腎などの内分泌疾患に注意します。
・行動学的な問題:行動学的にも鑑別診断が必要です。
分離不安症 (外出、分離のときだけ)
全般的不安症
認知機能不全 (Cognitive dysfunction)
学習、刺激欠如
その他

このようなことを踏まえ下記の特徴が多ければ、分離不安症と診断します。

診断
・飼主さん(達)が出かける際に過度に不安
・飼主さんの外出時のビデオや録音情報が犬のストレスや不安を示している
・特に不安を起こさせる異常が他に身体にみられない

前述したように、犬のヒトの言葉や行動のの理解力は9歳、精神年齢は3歳です。犬はヒトの言葉や行動を9歳の知能で理解していますが、心が追い付いていきません。飼主さんの外出を小さなことで認識してしまい不安になります。

次回は治療のお話です。