No.22 高齢犬の変形性脊椎症

年齢が上がってくると、大型犬、小型犬に限らず、後ろの脚の動きがだんだんと衰えてきます。筋力が弱り、脚が細くなり、神経の伝達が悪くなり、手の甲で歩くようになり(ナックリング)、最終的には歩けなくなり、起立が出来なくなり、寝たきりとなります。

立位(立っている)→座位(お座り)→肘状位(伏せの状態で顔を上げている)→伏位(伏せの状態で顔を下げている)→臥位(横に寝ている)。この順番で大変な姿勢です。若くて健康なときはなかなか気付けませんが、立っていられるってことは、実は大変なことなんですね。

寝たきりになってしまったワンちゃんを再び起立させ、歩けるようにするのは非常に困難です。寝たきりになるのを1日でも先に延ばすため、1日でも長く一緒にお散歩に行けるために、出来ることをご紹介します。

高齢犬の後ろ脚が弱ってくる原因の多くは変形性脊椎症です。脊椎(背骨)と脊椎との間のクッションが弱くなり、隣り合う脊椎がCa沈着を起こしてくっついてしまい、神経が圧迫されて、最初は痛みやしびれが起こり、後にだんだんと麻痺していきます(犬ほど顕著な症状は出ませんが、猫にも変形性脊椎症はあります)。

痛みやしびれのレベルで気付いてあげられると治療が早く始められます。もちろん、変形性脊椎症だけでなく、椎間板ヘルニアはじめ、胃腸疾患、泌尿器系の疾患、生殖器系の疾患、各種の腫瘍などでも腰痛を起こすことがあります。まずは診察を受けてください。検査は神経学的検査とレントゲンが中心となります。

変形性脊椎症と診断されたら、マッサージ、ストレッチ、バランス運動などの理学療法やサプリメントの開始です。症状がひどい時は、レーザーや鍼、非ステロイド系の鎮痛薬を使用することもあります。

1番大事なのは体重の管理です。太っているワンちゃんは、食事を10~20%減らし、ご褒美も半分の量に減らしましょう(適正体重はご相談下さい)。学習の項でも申し上げましたが、ご褒美は貰えたことが嬉しいのであって量は関係ありません。また、おやつにしないで必ずご褒美にして下さい。コマンド(命令)を入れて、仕事をして、ご褒美を貰う方がワンちゃんにとって何倍も嬉しいことです(人も仕事をして報酬を得るのと、何もしないで報酬を得るのとでは満足感が全然違いますよね。苦労して手に入れたものの方が満足感が高い。動物行動学的に犬も同じです)。