No.287 猫ウイルス性鼻気管炎(Feline viral rhinotracheitis; FVR)

猫ヘルペスウイルス1型(FHV-1)による上部気道(鼻腔、喉頭、咽頭)の感染症を猫ウイルス性鼻気管炎、または猫ヘルペスウイルス感染症といいます。発症猫からの直接感染が主体でとくに子猫の感受性が高いです(胎盤感染はしません)。潜伏感染していた母猫が授乳などのストレスで再活性したウイルスが子猫へ感染します。眼や鼻からウイルスが侵入し、末梢神経に侵入後、神経行性に上行し神経節に潜伏します。ライオンやトラなどの猫科の動物には感染しますがヒトにはうつりません。

主な症状は急性期では、発熱、食欲不振、沈うつ、くしゃみ、鼻汁、流涙、羞明などで多くは後に潜伏状態となります。子猫や免疫不全の猫では、気管支炎、副鼻腔炎、ウイルス血症などで亡くなってしまう場合もあります。潜伏期では、蜜飼いや環境の変化などのストレスでウイルスが再活性化して感染源となります。発症時には鼻汁や唾液、涙に多量のウイルスが存在します。角膜に感染すると、涙液減少、鼻涙管の閉塞などにより、ウイルスを除去することが困難となります。角膜の知覚神経(三叉神経の末端)に沿って樹枝状に潰瘍を形成します。潜伏感染する主な神経節は、三叉神経(眼神経、上眼神経、下眼神経)、顔面神経、交感神経、動眼神経です。また子猫では、結膜炎によって開瞼不全(眼が開けられない状態)となってしまう場合があります。

治療は対症療法、抗ウイルス剤の投薬や点眼薬ですが、状況によって点滴や抗生剤などを使用する場合もあります。一度かかってしまうと完治は難しい疾患です。症状が無い時もストレスを減らし免疫力を上げ、発症してしまったら早めに対処するのが現実的な方法です。予防はワクチンで猫のコアワクチンの1つですが完璧なものではありません。


開瞼不全の子猫