No.271 猫の便秘

皆様、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。新型コロナウイルスのため、大変なご苦労をされている方も多いと思います。効果的なワクチン、治療薬、状況に合った政治判断が本当に欲しいです。今回は最近とても多い猫の便秘のお話です。

排便困難や排便回数の減少がみられることを便秘といいます。猫はもともと便秘になりやすい動物です。猫の便秘には重篤な病気が隠れている場合もあるので、軽く考えない方が良いです。便の回数や量には個体差があるので一概には言えませんが、3日出なければ何らかの処置が必要です。また、排便があっても、一部しか出ていなくて、実際には重度の便秘になっている場合もあります。そのような時の便は、小さく硬くコロコロしていて表面は乾燥気味です。

排便時に大きな声で鳴いていたり、トイレがいつもより長い場合は便秘かもしれません。便の切れが悪かったり、とくに高齢猫で多い便の後に嘔吐があるような場合は要注意です。生まれつき尻尾が短いマンクスや、腰椎の少ない猫、骨盤狭窄、高齢猫などは便秘になりやすいです。冬場は夏に比べて飲水量が減って便秘になりやすい季節です。

猫の便秘の原因は様々ですが、腸管の神経の異常の他、お腹の中の腫瘍や腎疾患、脱水が原因になっていることもあります。足や腰の骨、骨盤、関節や筋肉、神経などに問題がある場合も排泄時に思うように踏ん張ることができず、便秘を引き起こすことがあります。肥満も悪化因子の1つです。猫の便秘を軽く考えてはいけない理由のひとつに、慢性的な便秘から発症する『巨大結腸症(次回で解説します)』という病気があります。巨大結腸症とは、硬い便が結腸(直腸の手前の腸)に大量にたまることで、結腸が異常に広がる病気です。この状態になると手術が必要になる場合もあり、対応が遅れてしまうと、肝疾患や敗血症で命に関わることもあります。そのため「たかが便秘」と侮ってはいけません。

猫の便秘の治療は、基本的には人と同じように、内服薬で便を柔らかくしたり、浣腸などの処置が中心です。それでも自力で排便をすることが難しい場合には、獣医師が手を使って排便を助ける摘便という方法をとります。毛球症の管理やトイレの環境の見直しも重要です。

予防は水分を多く取る事、適度な運動、一般的には可溶性繊維の入った食事が推奨されます。マッサージなども効果的です。