No.413 乾燥性角結膜炎 (KCS:keratoconjuctivitis sicca)

乾燥性角結膜炎はKCSとも呼ばれ、涙の量の低下に伴い角膜や結膜の慢性炎症と視覚機能の異常を引き起こす眼疾患です。犬ではよく見られますが、猫では稀です。ヒトのドライアイと症状などがよく似ているので同じ意味で使われることがありますが、厳密には違う疾患です。

原因は、先天性、後天性に分かれます。犬では後天性の自己免疫疾患と呼ばれる免疫の異常が一般的だとされています。イングリッシュ・ブルドッグ、フレンチブルドッグ、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、ヨークシャー・テリア、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル、アメリカン・コッカー・スパニエル、シーズー、パグ、ペキニーズ、サモエドなどが好発犬種です。

症状は状態により様々ですが、乾燥した眼の表面、ねばついた目やに、結膜の充血や、色素沈着が見られます。眼を擦ったりする行動が出る場合もあります。また、眼が乾いた状態が続くと角膜に傷がつきやすいので注意が必要です。

診断には、シルマー涙液試験と呼ばれる涙の量を測定する検査を行います。涙液量が15mm/分より少なければKCSと診断します。症状の似ている緑内障との鑑別が重要です。

一般的な犬の自己免疫疾患によるKCSの治療では、免疫抑制剤であるシクロスポリンの眼軟膏を使用します。また眼表面に潤いを与える目的で人工涙液やヒアルロン酸ナトリウム点眼液を組み合わせて併用する場合もあります。治療反応は様々で、効果が得られるまで長期間を要する場合もあります。また、点眼をやめてしまうと再発するケースも少なくありません。長期に治療が必要な疾患です。


KCSのパグ

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No.369 緑内障