No.263 第19回 飼主様向けセミナー

昨日の芋川玄爾先生のセミナー『皮膚のアンチエイジング』にご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。参加出来なかった方のために要旨をまとめました。

・体全身のエイジングに関与する最も大きな因子は細胞内のミトコンドリアで、食物として取り入れたグルコースと、呼吸により取り入れた酸素から、生物体のエネルギー源であるアデノシン三リン酸(ATP)を産生する際に、取り入れた酸素の2%が必然的に活性酸素種(ROS)となり、このROSがエイジングの元凶と言われている。

・摂取カロリーを65%程度とすると、さまざまな生物種において寿命の延長や抗老化現象が見られる。

・加齢に伴い、顔面にはしわやたるみなどの形態変化が起きることはよく知られており、その主要な悪化要因に紫外線(UVAやUVB)による光老化の影響が報告され、この光老化は非露光部位で起こるような自然老化とは区別されている。

・顔が若く見えると長生きする。皮膚の代謝は21歳から落ち、37歳でしわが出る。若くて健康な皮膚は弾力性とハリがある。日焼け、シミがないと若く見える。老け顔にはうねりがある。うねりを化粧で隠す、つまり化粧は若顔を目指している。

・シミ、しわ・たるみの発生は紫外線暴露により生じたROSがより明瞭な作用を引き起こす。

・アセトン・エーテル溶媒(いわゆる石鹸)の処理時間、また、肌荒れの強さに比例して溶出している主成分はセラミドである。

・角層内に存在する水は、単なる普通の水(自由水)ではなく結合水(構造水)なので、乾燥に抵抗して蒸発しない、また低温に抵抗して凍らない水として、角層の柔軟性を保ち、きれいなぷるるん肌を支えている。

・乾燥が生じる最も頻度の高い要因が加齢や皮膚洗浄によるセラミド減少によることから、生じた乾燥を改善する方法として最も合理性のある方法は、この失われたセラミドを補充し結合水を回復させることにある。

・日焼けをしない量の紫外線でも皮膚の弾力性はなくなる。

・コラーゲンは主に皮膚の強さに関係する膠原繊維。体内で作り出すことができる。コラーゲンは増えても仕方なく、増えすぎると皮膚が硬くなる、よって、コラーゲンを経口接種したり塗ったりしても意味はない。塗るコラーゲンはねっとり感で騙されてる。

・エラスチンは皮膚の弾力性に関係する弾性繊維。基本的に再生しない。紫外線でしわができるのは、エラスチンがたわむことによる。UVBは真皮に入らないが、表皮でサイトカインを作り真皮に影響する。

・血管内皮細胞が産生する血管収縮作用を有するペプチド(タンパク質の1種)、エンドセリン(EDN)にUVBを照射すると、メラノサイト細胞が増殖し、メラニン生成の促進に結びつく。EDNがメラノサイトに作用すると、細胞内のカルシウム濃度が上昇してプロテインキナーゼC系が活性化され、メラノサイトの増殖につながる。また、メラノサイト細胞膜上にEDNに対するレセプターが存在することが明らかにされた。このシステムの制御は、新しい美白剤のターゲットになるものと考えられる。

・種々の生薬エキスからEDNによる細胞内カルシウム動員を抑制するものとして、数百のエキスをスクリーニングした結果見出されたもののひとつがカミツレエキスで、シミの予防が期待される。

・ショウキョウエキス(ショウガの根茎)もしわ・たるみの予防が期待される。

・動物は表皮にメラノサイトがないのでシミができづらい。ヒトは表皮の最下層の細胞の10個に1個がメラノサイト。隠れシミは皮膚の中にあるメラニンが原因。突然のシミをシミ爆弾という。若い時の日焼けの経験による。

・チロシナーゼは、メラニン色素をつくり出すメラノサイトが持っている酵素。チロシナーゼ阻害剤でメラノサイトがメラニン合成を抑制して美白効果がある。しかし正常な皮膚もチロシナーゼを持っているため、いずれ破たんが来る。

・UVA(紫外線A波):肌の奥にある真皮まで到達し、真皮にあるコラーゲンやエラスチンを破壊する。徐々にしわ、たるみなど老化の原因になる。

・UVB(紫外線B波):主に表皮を赤くさせ、炎症を起こす。日焼けをして肌が黒くなったり、肌にシミ、そばかすができたりする原因となる。ガラス窓で室内に入って来ない。

・PA(Protection Grade of UV-A,UVA防止効果指数):一時的な黒化を引き起こし、長時間かけて肌の弾力を失わせるUVAを防ぐ効果を表す目安。黒斑が生じるまでの紫外線量を4段階の「+」マークで表示し、「+」の数が増えるにつれ、UVAに対する防御効果が高いことを表すが、実際にはあまり意味がない。

・SPF(Sun Protection Factor、紫外線防御指数):UVBを防ぐ効果指数。1~50+までの数値は、素肌に何も塗らない場合に比べて、この日焼け止めを塗った場合に何倍の紫外線に耐えうるかを表す。つまり、UVBによる炎症をどれぐらい長い時間防止できるかを表しており、数値が大きい方がUVBに対する防御効果が高い。

・日焼けは紫外線からの体の防御システム。出来るだけ長く効くSPF値の高いものを使って繰り返し塗る。冬でも塗る必要がある。塗り込むのはダメ。理想は1時間で塗りなおし。

資料は若干ですがあまりがあります。欲しい方は受付にお申し出ください。