No.409 ウサギの胸腺腫

ウサギは犬や猫に比べると胸腔が狭く、呼吸器疾患による呼吸状態の悪化を引き起こしやすい動物です。胸腔内には胸腺と呼ばれる臓器が存在します。胸腺はリンパ球であるT細胞の分化や成熟など、免疫系 に関与する一次リンパ器官(リンパ球のT細胞・B細胞の発生において重要な役割をする器官)です。胸小葉とよばれる二葉から構成されています。多くの動物では成長に伴い退縮していきますが、ウサギは大人になっても遺残しており、この胸腺が腫瘍化することで胸腺腫が発生します。胸腺腫は胸腺上皮由来の良性腫瘍です。中齢から高齢で発生が認められます。腫瘍化してしまうはっきりとした要因については不明です。

軽度では、元気や食欲の低下などが認められることもありますが、無症状の場合が多く、症状が進行すると腫瘍が肺や血管を圧迫することにより、瞬膜突出、眼球突出、呼吸促拍などが認められます。稀ですが剥離性皮膚炎が起こる場合もあります。胸腺における異常な抗原提示によるT細胞の関連が考えられています。重症化すると呼吸困難に陥ります。注意が必要な疾患です。

胸腺腫の診断には、レントゲン検査やエコー検査で胸腔内の腫瘤病変を確認し、細胞診や組織生検を行って確定診断していきます。

治療は外科的な切除が理想ですが、多くの場合は困難なので、治療はステロイドやシクロスポリンといった免疫を抑える薬の内服と代替医療が中心となります。呼吸困難を引き起こすほどの大きさになった場合は嚢胞の穿刺吸引を行います。これらの治療によって腫瘍が縮小することが多いですが、投薬を休止すると胸腺腫が再度増大することが多いため、長期的な治療が必要となります。


ウサギの胸腺腫