No.352 肺腫瘍

犬や猫の肺腫瘍の多くは、乳腺の悪性腫瘍など、他の部位の腫瘍からの転移(メタ)で、原発性のものは犬では稀で、猫ではさらに稀です。

原因として、遺伝的素因、都会的生活や受動喫煙が発生率と関連があると言われてはいるものの確実な疫学的根拠はありません。犬猫ともに平均10歳で発生し、性別や犬種・猫種で特異性はありません。

犬猫の原発性肺腫瘍のほとんどは悪性であり、最も一般的なのは肺腺癌です。その他、扁平上皮癌や組織球性肉腫などがあります。犬の原発性肺腺癌の多くは孤立性であり転移は比較的稀です。転移部位として、典型的には気管-気管支リンパ節や別の肺葉に起こります。

症状は末期になると咳や呼吸促拍、疲れやすくなるなどが出ますが、初期にはほとんどわかりません。早期発見には日頃の健康診断がオススメです。他の疾患にもいえることですが、目安は10歳以下で年に1-2回、10歳以上で年に3-4回程度、麻酔の必要のない検査で十分ですので、全身のチェックをすることが推奨されます。また、非常に稀ですが、腫瘍随伴症候群として肺性肥大性骨症を起こし四肢に痛みを示す場合があります。

診断はレントゲン検査で怪しい影を見つけたらCT検査を行って、手術可能かどうかを見極めます。孤立性の場合は大きくても外科適応です、多発性の場合は外科不適応です。FNA(針生検)などで細胞の検査ができると診断の助けになります。また、転移性のものは多くの肺葉に病変(メタメタ)を作るので外科的な治療ができません。

治療は、原発性のものは可能なら外科手術です。放射線治療もありますが外科手術に付随して行うことがほとんどです。残念ながら効果的な抗癌剤は今のところまだありません。

原発性肺腫瘍のレントゲン