No.190 食道炎(Reflux esophagitis)

最近多い疾患の1つは食道炎です。食道炎も重症化すると治療が困難な疾患の1つです。最も多いパターンは、胃食道逆流(GER)によって胃酸が食道に上り胃食道逆流症(GERD)が起こり、胃酸に耐えられない食道粘膜に炎症が生じます。炎症が粘膜を超えて粘膜下組織や筋層まで破壊してしまうと、その部位を修復しようと食道組織の線維化が進み、食道の内径が狭窄してきたり拡張してきたりする場合があります。この状態を食道狭窄症、食道拡張症と呼びます。誤嚥性肺炎を併発する場合もあります。
食道炎の症状は、首を触ると嫌がる、流涎、食後すぐの嘔吐、食べるのが遅くなった、食べるときに痛がるなどがあります。

原因は、胃酸の逆流の他に、異物の誤飲・誤食、喉頭炎・咽頭炎の波及、感染、全身麻酔(統計でGER16-55%、GERD2.7%と高い数字が出ています。若齢動物で多いといわれています)などがあります。

内科的治療は、粘膜保護剤のスクラルファート(アルサルミン)、胃酸分泌を抑えるH2ブロッカー(ファモチジン)、プロトンポンプ阻害薬(オメプラゾール)、制吐剤のメトクロプラミド(プリンペラン)、オンダンセトロン(サンド)、マロピタント(セレニア)、消化管の運動促進を促すモサプリド(プロナミド)などを使用し、食道炎に伴う痛みや胸やけなどを和らげます。
食道狭窄の状態になってしまった場合は、内視鏡を用いたバルーン拡張術を行います。食道拡張になってしまうと治療は大変です。上記の薬に加え、食事の後に立たせる、水の器を高い所に置いて誤嚥を防ぐなどの処置が生涯に渡って必要です。