No.426 猫の肝リピドーシス

肝リピドーシス(脂肪肝)は、肝臓に脂肪が蓄積しすぎて正常に働かなくなる病気です。猫でよくみられます。ヒトとはメカニズムが違い、猫の場合は何らかの原因で食欲不振になり食事をとらなくなると肝臓が急激に脂肪を蓄積しようとしてこの病気を発症します。若くて痩せている猫でも起こりますが、太っている中高齢の猫の発症が多く、肥満の猫が食欲をなくした場合はとくに注意が必要です。

食欲不振が引き金になる病気ですが、原因によっては嘔吐や下痢など、別の症状が先に出ることもあります。本病では肝機能に障害が起きるため進行すると黄疸が起こり、さらに重篤化し肝臓の解毒作用が働かなくなると、肝性脳症を起こして意識障害や痙攣などが起こります。

診断は、血液検査で肝数値の上昇を確認後、超音波検査で肝リピドーシスの兆候が出ていないか確認します。確定診断には、超音波ガイド下で肝臓に針を刺して肝臓の細胞を採取し(FNA検査)、顕微鏡で脂肪の蓄積を観察する方法や、開腹手術により肝生検をとる診断方法もあります。

本病は食欲不振を生じる他の疾患が原因となっていることが多いため、原因となる疾患の診断も重要です。よくある疾患には、
・胆管肝炎
・膵炎
・炎症性腸疾患
・腫瘍
・糖尿病
・甲状腺機能亢進症
などがあります。

治療は、点滴で栄養を補いながら食事をとらせます。猫自身が口から食事を食べてくれればよいのですが、食欲不振の猫が自ら食べることはほとんどありませんので、最初は、チューブなどで強制的に食事を与えます。チューブを入れる部位は鼻、食道、胃とさまざまあり、獣医師が猫の状態を確認した上で、飼主様と相談しながら治療方針を立てていきます。また、本病の原因となる疾患がわかっていればその治療も並行して行います。

前述の通り、本病は太った猫に多い病気ですので、猫が肥満にならないよう体型管理には気をつけましょう。肥満は本病のみならず糖尿病など、様々な病気のリスク因子です。長く健康でいられるよう、適度な食事と運動で健康的な体型キープを目指しましょう。


肥満猫の食欲不振は早急な対応が必要です

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No.304 糖尿病 (Diabetes)
No.296 生検
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