No.389 カメの飼育

カメ目の自然界での生活様式は種により多様化していて、飼育管理法も大きく異なります。一般に飼育されることの多い種を生活環境によって以下の4つのグループに分けてみます。この4つのグループ以外にウミガメもありますが、水族館以外での飼育は困難なため割愛します。また、カメの飼育に重要な照明と食事についてもご説明します。

水棲ガメ(ミシシッピアカミミガメ等)
生活場所のほとんどを池や川、湖などの淡水域とするもので、通常鋭い爪とみずかきのある四肢を持ち水陸いずれにも対応できるものが多いです。小学校で飼育されることの多いミドリガメ(ミシシッピーアカミミガメの幼体)やゼニガメ(イシガメやクサガメの幼体)はいずれもヌマガメ科でこのグループです。

半陸棲ガメ(ハコガメやヤマガメ等)
ヌマガメ科の中でもハコガメやヤマガメの仲間は水辺の草むらや森林に棲息し、水を好む反面、より陸上での生活に適しています。天然記念物に指定されているセマルハコガメやリュウキュウヤマガメがこのタイプです。中国産のセマルハコガメやマレーハコガメ、スペングラーヤマガメといった種がよく飼育されています。

より水棲傾向の強いカメ(スッポンモドキ等)
産卵等の特殊な状況以外にはほとんど陸に上がらない種です。スッポンモドキのようにオール状の四肢で遊泳するものや、マタマタやワニガメのように水底でじっとしていることが多いもの、スッポンのように水底の泥の中に潜むものなどがこのタイプです。

陸ガメ(ギリシャリクガメやロシアリクガメ等)
生活場所のほとんどを陸上としていて、歩行に適した丈夫な四肢と乾燥に耐える皮膚を持ちます。通常草食性です。ロシアリクガメやギリシャリクガメなどの温帯域に生息するものはそれほど大きくなく飼育しやすく人気があります。陸ガメは大人しく平和的な動物ですが、ゾウガメやケズメリクガメといった大型種は力が強く、相応の設備が必要です。

照明
室内でカメを飼育する際には、照明に配慮が必要です。中波長紫外線(UVB)ライトと全てのカメに必要なわけではありませんがバスキングライトを用意します。日中は明るく、夜は暗くすることは多くの動物と同様、生活のリズムをつくる上で重要です。多くのカメが十分な明るさのもとで食欲や行動が活発となり、暗くなることで安心して休息することができます。

・中波長紫外線(UVB)ライト
多くのカメが正常な骨代謝に不可欠なビタミンD3を合成するために、中波長紫外線(UVB)が必要です。特に陸ガメでは、その食餌となる植物質のほとんどがビタミンDを含有しないことからも、UVBの照射は重要です。最良の方法は定期的な日光浴ですが、困難な環境ではUVBを含む広域スペクトルの照明灯の使用が必要です。このような照明灯はいくつかのメーカーから市販されていて、放出されるUVB量は製品によって差があります。カメにおけるUVB要求量の詳細は明らかにされていませんが、ペットショップで売っているもので通常充分です。

・バスキングライト
赤外線を出し亀の体温を上昇させる役割をもつライトです。一般にバスキングスポット(ホットスポット)を30~35℃程度に温められれば良いとされています。また、長時間点灯させているバスキングライトは高温になっており火傷に注意してください。バスキングライトの取り付け位置があまりに下過ぎると、カメが触ってしまう可能性があります。触れやすいのは頭や手です。水棲ガメの場合は夜間は温度の下がりにくい水中にいることも多いので使う必要性は薄いと思われます。

食餌管理
イシガメ、クサガメ、ミシシッピーアカミミガメ、スッポン等の水棲ガメの多くは肉食傾向が強く、自然界では小魚や甲殻類、その他の水棲生物を捕食しています。また種によっては水草等の植物質も多少食べています。飼育下では食用の魚介類を与えることもできますが、注意すべき点は、骨や内蔵を含む丸ごと与えられていないと長期的には栄養障害を起こす危険性があることです。生餌しか受け付けない種ではメダカや金魚、ドジョウ等の淡水魚やヌマエビ、ザリガニ等の甲殻類、その他の水棲生物、ミミズ等を与えます。ただし多くの種は水棲ガメ用のペレットを食べるので、質のよい製品を選べばこれだけでも栄養的に十分で衛生的です。また、小松菜やチンゲンサイのような葉野菜も少し与えるとよいです。給餌は幼体には毎日、成体には週に2~3回を目安に行います。
ハコガメやヤマガメのような半陸棲ガメの自然界での食性は様々ですが、飼育下では雑食性として解釈するとよいです。多くの種に推奨される給餌内容は50%の動物質と50%の植物質で、動物質のものとしてミミズ、ナメクジ、昆虫、その他の節足動物、もしくはドッグフードや水棲ガメ用のペレットを与え、植物質のものとして緑黄色野菜や豆類、イモ類等の野菜を主に少量の果物を与えるとよいです。偏食しがちな種が多く、幼体の頃から、できるだけいろいろな食物を食べるように訓練しないと栄養性疾患に陥りやすいです。ハコガメ専用のペレットも市販されており、食べる場合はこれらを主食でもよいです。給餌は幼体には毎日、成体には2日に1回ぐらいを目安に行います。
陸ガメのほとんどは草食性であり、通常は植物質のものを与えます。一般的に推奨されている給餌内容は90%以上の葉野菜(濃緑色の葉を持ち、カルシウムと繊維質に富んだもの、小松菜、チンゲンサイ、ダイコンの葉、サラダ菜、モロヘイヤ等)と10%までのその他様々な野菜(マメ類、イモ類、カボチャ、ニンジン等)です。ペレットを利用するのも便利です。果物は嗜好性のよいものが多いですが、草食性のカメに適した栄養組成のものはほとんど存在しないため、与えてもごく少量にすべきです。食事は毎日与えます。