No.199 肥満細胞腫 (Mastcytoma)

肥満細胞はアレルギーや炎症などに関与している細胞で、体の中のいろいろなところに存在します。太っている肥満とは全く関係ありません。この肥満細胞ががんになってしまったものが肥満細胞腫です。犬の肥満細胞腫は皮膚に発生しやすく、犬の皮膚の悪性腫瘍の中で最も多くみられます(16-21%)。皮下、筋肉、内臓(とくに肝臓と脾臓)にできることもあります。
肥満細胞は、ヒスタミンやへパリン、プロテアーゼなどの様々な物質を含んでいて、過度に触るとダリエ徴候といって、腫瘍が赤くなって大きくなり、体内で胃潰瘍が起こり、嘔吐、下痢、血便、食欲不振、血が止まりにくい、ひどい場合は胃穿孔などの症状が出る場合があります。
どの年齢でも発症し、性差もありません。パグ、ゴールデン・レトリーバー、ボストン・テリア、ボクサーなどが好発犬種です。多くは単発性ですが多発性の場合もあります(11-14%)。主な転移先は、局所リンパ節、肝臓、脾臓、骨髄です。一般的にマズルや口唇部に発生した場合は効率に転移を起こします。
肥満細胞腫の肉眼所見は様々で、偉大なる詐欺師と呼ばれています(写真参照)。見た目では全くわかりません。大きさも様々です。大きくなったり小さくなったりする場合もあります。
また、猫の場合、皮膚の肥満細胞腫の85%は良性腫瘍の挙動を示しますが、内臓型(脾臓に多い)では高率に転移します。
診断はFNA(穿刺吸引生検)といって注射針を腫瘍に刺して中の細胞を検査することによって行います。悪性度の判定は手術後の病理学的検査が必要です。

犬の肥満細胞腫の悪性度
グレード1:悪性度は低く、転移・再発は起こしにくい
グレード2:悪性度は高く、転移は起こす事あり、再発はしやすい
グレード3:悪性度は非常に高く、転移・再発は非常に起こしやすい

治療は外科手術が基本となります。完全切除が出来た場合は、グレード1.2なら他の治療は必要なく経過観察をします。不完全切除だった場合は、拡大再手術か放射線治療、グレード3の場合は完全切除ができていても、術後にイマチニブという抗がん剤を使用します。グレード3で不完全切除だった場合はイマチニブと拡大再手術もしくは放射線治療を併用します。

偉大なる詐欺師:肘の円形の腫瘍は、一見脂肪腫にも見えますが肥満細胞腫です