No.398 インスリノーマ

インスリノーマは、膵臓のインスリン分泌性β細胞の腫瘍であり、犬やフェレットにみられ猫では極めて稀な腫瘍です。ヒトのインスリノーマの約90%は良性ですが犬やフェレットでは悪性が多いです。

症状は、低血糖によるものと代償性カテコールアミンの放出によるものがあり、元気食欲の消失の他、痙攣発作、虚弱、運動失調、振戦、精神鈍麻などの神経症状が主体となります。

診断は、低血糖に関連した症状、血液検査で低血糖と高インスリン血症が同時に認められればインスリノーマが強く疑われます。超音波検査も診断と転移の確認に推奨されますが、インスリノーマの病変が非常に小さく膵臓の腫瘤が確認できないこともあります。CT検査が用いられることもありますが検出できない事もあります。治療も兼ねて試験開腹によって確定診断をする場合もあります。最も多い転移部位は、局所リンパ節と肝臓です。

犬のインスリノーマには、下記の臨床ステージングシステムが使用されています。
ステージI:転移なし
ステージII:リンパ節転移あり
ステージIII:遠隔転移あり

治療は、外科的切除が推奨されます。
ステージI:腫瘍だけをくりぬくように摘出する核出術ではなく、可能であれば膵臓部分摘出術を実施します。核出術は膵臓部分摘出術に比べ腫瘍制御と生存期間が劣ります。
ステージII:膵臓部分摘出術と腫大あるいは転移したリンパ節を可能な限り切除します。たとえ腫瘍を完全に摘出できず、減容積手術に終わっても低血糖を緩和できることがあるため、生存期間の延長が期待できます。
ステージIII:初期の場合を除き、手術適応とはならないことが多く、内科療法のみを実施します。

内科療法は、術前の安定化および手術適応とならないインスリノーマで実施され、血糖値を維持し、低血糖症を防ぐために行われます。具体的には、食事療法(単糖類を軽減した高タンパク・複合炭水化物を含有した食事を1日4~6回に分けて与える)や、プレドニゾロン、ジアゾキシド、オクトレオチドなどの薬剤を使用します。

化学療法としてはストレプトゾトシンが使用されますが、腎毒性が強い薬剤であり、大量の輸液の投与も必要となるため、腎機能や心機能が低下している場合は使用できません。そこで、まだ一般的な治療ではありませんが、腎毒性を軽減し腫瘍への薬剤濃度を高めることができる動注化学療法が、今後、切除不能なインスリノーマに有効となる可能性があります。

インスリノーマの予後は、臨床ステージや治療法により様々で、通常は要注意ですが、数回の減容積手術により、3年以上良好に経過した例も報告されています。犬のステージIIIの犬の中央生存期間は6ヶ月未満であり、ステージI、あるいはステージIIの18ヶ月に比べて顕著に短いです。保存的治療のみで治療した犬の中央生存期間は74日で、外科的治療を実施した犬の381日と比較して短いという論文がありますが、投薬に代替医療を加える事で2年以上生存した例もあります。また、膵臓の結節を外科的切除したフェレットの平均生存期間は462日(14日~1207日)と報告されています。

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No395 犬の低血糖