No.414 低Na(ナトリウム)血症

低Na血症とは血液中のNa濃度が低い状態のことです。健康な動物では腎臓が尿の排泄量を調節することで体内で一定の濃度が保たれていますが、何らかの原因で水分とNa量のバランスが崩れると、体内の水分量に対してNaの量が少ない状態になります。Naは体内の浸透圧を調節したり、神経や筋肉を正しく機能させたりする役割をもっています。体内のNa濃度が下がると疲労感や震えがみられはじめ、重症化すると痙攣を起こしたり、昏睡状態に陥いります。

低Na血症を引き起こす原因には、ホルモン分泌異常や腎疾患、心疾患、薬物によるものなど様々なものがあります。腎機能が低下する高齢動物でよくみられます。ただし、下痢や嘔吐、激しい運動後や厚い季節に水分を補給しようと水を多量に摂取することなどでも低Na血症を引き起こすことがあります。また、ホルモン分泌異常は年齢を問わずみとめられます。

低Na血症がみられた場合は体の水分量とNa量のバランスから考えられる原因を特定します。細胞外液(血漿と間質液より構成される細胞外の体液)量とNa量のバランスがどのように変化しているかによって3つのタイプに分けられます。

細胞外液が少ない場合:体内の水分とNaが共に失われていますが、水分よりもNaの減少量が大きいために低Na血症を発症している状態です。アジソン病、強い嘔吐や下痢、膵炎、腸閉塞、広範囲の火傷、ある種の利尿薬の使用などが原因となっています。

細胞外液が正常な場合:体内の水分量を調節するホルモン(バソプレシン:抗利尿ホルモン)の分泌異常が原因のときにみられる特徴です。抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)、甲状腺機能低下症、ユーサイドシック症候群,、腫瘍や炎症、脳疾患やある種の精神病薬や抗癌剤、胃薬などで引き起こされる可能性があります。

細胞外液が過剰な場合:ネフローゼ症候群、腎不全、肝硬変、心不全、多量の水分摂取などでよくみられる特徴で、いわゆる浮腫(むくみ)の状態です。多量の水分が体内に保持されるためNa濃度が低下します。

低Na血症の診断は血液検査で血中のNa濃度を調べることで分かります。診断基準は検査を受ける医療機関によっても異なりますが、一般的には血清Na濃度が135-138mEq/L未満のときに低Na血症と診断されます。しかし原因を特定することは簡単ではなく、他の症状や他の血液検査結果、ホルモン検査、服用している薬、場合によっては、レントゲン検査、超音波検査、CT検査などを含め総合的に判断し、考えられる病気を推測します。

治療は、早期発見が出来て症状が軽い場合、または無症状の場合は原因疾患の治療のみで改善する場合が多いです。
原因疾患の治療だけで不十分な場合は、細胞外液量が減少しているタイプに対しては、病態に応じて生理食塩水や高タンパク食、高塩分食によるNaの補充、副腎のはたらきを改善する薬剤などを使用します。これだけで不十分な場合は、Naの点滴投与や、体の水分の排出を促すための利尿薬を使用することもあります。
細胞外液量が正常か増加しているタイプに対しては水分の摂取量を制限します。
細胞外液量が増加している場合は、それに加えNa摂取の制限、利尿薬が原因になっている場合は使用量の減量や薬の中止を行います。
Naの投与スピードが速いと浸透圧性脱髄症候群と呼ばれる神経症状が現れることもあるため、数日間にわたってゆっくりとNaの補正を行います。低Na血症の程度が大きい場合は脳に重篤な影響を及ぼすこともあるため、直ちにNaを補充する必要があります。ただしこの場合も急激にNa濃度を上げすぎることで脳に影響を及ぼすことがあるため、症状や継続の検査結果を観察しながら慎重にNaを投与します。

こちらもご参照ください
No300 慢性腎不全(CKD)のステージ分類
No80 副腎皮質機能低下症
No77 犬の甲状腺機能低下症
No30 心臓疾患時の徴候2
No29 心臓疾患時の徴候1