No.48 EBM (Evidenced Based Medicine)

EBM (Evidenced Based Medicine)とは『エビデンスに基づく医療』のことを言います。エビデンスとは簡単に言えば『根拠』のことです。実験や調査の統計を基に、科学的根拠のある治療をすることをEBMと言います。

エビデンスの例を挙げると、この病気にこの治療をすると何%は治癒する。この病気の死亡率は何%だ。この薬は何%の患者さんに効果的だった。などと、数字で表されるものです。わかりやすく、一見、説得力があるので我々も多用する言葉です。

しかし、全ての病気に対して、しっかりしたエビデンスが用意されているわけではありませんし、統計学というのは数字のマジックを作りやすいものです。例えば、製品になっている薬に対してのエビデンスはたくさんあるでしょうが、2種類の薬を同時に使ったエビデンスはガクッと減ります。3種類だと実験や調査をするだけでも途方もない時間とお金が必要でしょう。4~5種類だとエビデンスがある場合が特殊です。また、何百例もの結果が揃う場合は良いですが、全ての場合で多くの数が揃うわけではありません。たまたま、数例で上手く行ったことが、その他大勢の結果と結びつかないことがあるのは当たり前です。また、製薬会社が多くの時間とお金を使って開発した薬を、多くのお金を支払って臨床現場で調査する場合、良い結果に傾くこともあるかもしれません。病気が2つ、3つ同時にある場合のエビデンスもほとんどありませんし、抗癌剤を使う場合なども、1度目の再発、再燃までは、エビデンスがある場合もありますが(少ないですが)、2度目の再発に関しては、エビデンスはほとんどありません。今、出したいくつかの例は、ヒトの医療の場合ですので、当然、動物に対してのエビデンスはその何十分の一となります。また、品種によってのエビデンスは、多くの場合存在しません。

誰しも自分の動物たちに、きちんとした科学的根拠がある治療を受けさせたいというのは当然のことですし、我々も診断、治療がガイドライン通りに進めば、非常に楽でストレスも減ります。しかし、エビデンスがない治療はしないとなると、多くの疾患が治療できないことになります。しっかりしたエビデンスを多く積み上げていくことは、現代医学、獣医学にとって重要なことだと思いますが、上記のような問題もまだまだ多いのが現状です。エビデンスはきちんと理解して使用することが必要だと考えます。