No.317 脊髄空洞症 (Syringomyelia:SM)

脊髄空洞症とは、脊髄の中に過剰に脳脊髄液が溜まって、脊髄実質内に洞ができ、脊髄を圧迫することで起きる疾患です。脊髄を輪切りにした状態にすると、脊髄の中心部にトンネル状に脳脊髄液が溜まり、外側に脊髄を圧迫するため、脊髄に空洞ができたように見えるので脊髄空洞症と呼ばれています。先日、人気アイドルAKB48の柏木由紀さんがこの病気になり手術を受けたと報道され、聞いたことがある方も多いと思います。

脊髄空洞症は先天性のものと後天性のものに分けられ、先天性のものは、後頭骨や脊椎の奇形、キアリ奇形などが原因の場合が多く、後天性のものは脊髄の腫瘍や炎症、椎間板ヘルニアや環軸亜脱臼などがきっかけになり、脊髄の中心を流れる脳脊髄液の流れが異常になることで起こると考えられています。

症状は脊髄の圧迫の程度、発生した位置や年齢などで様々ですが、無症状なものから、重たい神経症状が出るものまであります。一般的な症状としては、感覚神経の異常が多く、皮膚をかゆがる行動(特に頸回り~体にかけて)、四肢のしびれ、足の開脚、体のゆがみ、頸の痛みなどが起こります。重症化すると体全体が麻痺して立てなくなったり、痙攣発作が起きたり、呼吸をする筋肉に麻痺が及ぶと呼吸が停止してしまう場合もあります。神経学的検査や症状から疑わしい場合は、確定診断にMRI検査を行います。

治療は、先天性の場合、前述のキアリ奇形と同様に内科的なものが中心で、小脳による脳幹の圧迫や脊髄空洞症による痛みや不快感を軽減するための内服薬を使用します。後天性のものは、原因に応じて外科手術の対応になる場合もあります。


緑の矢印の先の黒く抜けた部分が脊髄空洞症の所見

こちらもご参照下さい
No316キアリ様奇形
No82椎間板ヘルニア1
No83椎間板ヘルニア2