No.101 気管虚脱と軟口蓋過長症2 (Tracheal collapse、Elongated soft palate)

気管虚脱との合併症で多いのは、軟口蓋過長症です。軟口蓋というのは上顎の一番奥にある柔らかい部分です。ヒトではこの部分にノドチンコ(口蓋垂)があります。軟口蓋過長症はこの軟口蓋が長く厚くなり気管の入り口の喉頭蓋に被って空気の通りの邪魔をする状態です。好発犬種はブルドッグ、パグ、ボクサーなどの短頭種、キャバリア、ヨークシャー・テリア、マルチーズ、チワワなどにもみられます(気管虚脱の好発犬種と被ります)。やはり猫では稀です。軟口蓋過長症があると気道抵抗が増して気管虚脱を悪化させます。

軟口蓋過長症の特徴的な症状はいびきです。短頭種の犬でいびきの大きい犬は軟口蓋過長症を持っている場合がほとんどです。重症例ではチアノーゼや失神を起こすこともあります。

気管虚脱、軟口蓋過長症の治療は症状の重症度によりますが、急性の場合は、まずは酸素吸入が効果的です。薬剤としては、鎮咳剤、去痰剤、気管支拡張薬、ステロイド剤、鎮静剤などが使われますが、もともとが解剖学的な問題である病気なので外科的治療を選択する場合も多くあります。外科的治療の第一歩は、気管虚脱の犬すべてが軟口蓋過長症を持っているわけではありませんが、軟口蓋過長症をもっている犬に対しては軟口蓋の外科的矯正です。この手術は気管虚脱の手術に比べて短時間(通常15分程度)で行え、犬の負担も軽いです。この手術だけで気管虚脱の症状も改善される犬は多くいます。しかし、軟口蓋の矯正を行っても症状が軽減されなかったり、軟口蓋過長症を持っていない気管虚脱の犬で症状が重い場合は気管矯正術を行います。この手術は時間もかかり(通常3時間程度)犬の負担も大きいです。

当院では気管虚脱の内科的治療にホメオパシーを使用して良い結果が得られています。また、軟口蓋過長症を持っている犬に対しては去勢・不妊手術や歯石除去などを行うときに一緒に軟口蓋矯正術を行うことを推奨しております。また、このような呼吸器系の病気を持っている場合は高温多湿の時期や肥満は症状を悪化させるので、とくに注意が必要です。