No.285 低アルブミン(Alb)血症

近年、血液検査でアルブミンの低い動物が増えています。アルブミンは肝臓で合成される蛋白質で、血液の浸透圧の調節や脂肪酸、ビリルビン、無機イオン、薬剤などの保持や運搬を行なっています。アルブミンは脱水以外の理由で病的に増加することは無いとされるため、基本的にはアルブミンの低下のみが問題となります。血清中のアルブミン濃度が、正常値(2.5~3.8 g/dl)より低下することを低アルブミン血症といいます。

低アルブミン血症では、血液の浸透圧が維持できないため、血液中の液体成分が血管の外に出てしまい、浮腫、腹水、胸水といった症状を呈します。血清アルブミン値が2.0~1.5 g/dl以下になると、これらの症状があらわれ始めます。低アルブミン血症は、肝臓でのアルブミンの合成能低下、尿などへのアルブミンの喪失、そして飢餓などの栄養失調によるアルブミン原料の不足などが原因となります。また、輸液などで血液が希釈されてもアルブミンは低値を示します。

病気としては、各種の重度の肝疾患、腎臓からの漏出(ネフローゼ症候群など)、食事からの栄養の吸収不良や消化不良、飢餓による栄養失調、出血による喪失、広範囲の皮膚炎、腸からの漏出(腸リンパ管拡張症など)、腹水や胸水、過剰輸液などが低アルブミン血症の原因となります。また、傷が治り辛かったり、薬が効き辛くなることもあります。

検査結果が正常値を外れている場合でも、必ずしも病気とは限りませんが、原因は血液検査のみならず身体検査や他の検査も行って診断していきます。状況により経過観察を行ったりさらに詳しい検査を行うこともあります。近年では肝不全や腎不全より、消化管の問題がある場合が多いです。この場合、確定診断には内視鏡による消化管のバイオプシー検査か、試験開腹による腸の全層生検が必要です。症状が無い場合は経過観察や食事管理などで様子見をすることも多いですが、血清アルブミン値2.0以下が続く場合は、原因を確認しておいた方が良いです。