No.98 歯周病2 (Periodontal disease)

猫の吸収性病巣について簡単にご説明します。正しくは破歯細胞性吸収病巣といい、破歯細胞により歯が進行性に吸収される病変です。以前は齲歯だといわれていましたが、現在では違う病態だということが明らかになっています。ネックリージョンとも呼ばれています。症状としては、食欲低下、沈うつ、嚥下障害、口臭、疼痛などといわれていますが、経験上は、多くの場合吸収された部分が歯肉や肉芽組織で覆われているので無症状の猫が多いですが、病態が進めば前述のような症状がでてきます。原因としては、機械的刺激、免疫異常、Ca代謝の異常、栄養、炎症などが考えられていますが、よくわかっていません。

歯周病の治療のためには、歯石の除去や場合によっては抜歯が必要になります。歯石をきちんと除去するためには、動物の場合はほとんどの場合全身麻酔が必要となります。無麻酔での処置は歯の裏側やポケットの歯石がきちんと除去できませんし、前述のように骨が薄くなっている場合などには骨折や瘻管を作ってしまうおそれがあります。また、経験上、大きな歯石を除去すると腫瘍がある場合もあります。抜歯に関していえば無麻酔で歯を抜かれるなんて考えたくもありませんよね。

このような状態にならないように、日ごろのデンタルケアは重要です。最も基本的で効果があるのはやはり歯磨きです。しかし、いきなり歯ブラシを用いても犬や猫は嫌がります。最初はコミュニケーションの一環として、口の周りを触るのに慣れさせるところからはじめます。通常行っているブラッシングや頭をなでたりするとき、シャンプーのときなどに少しずつ口元にも触っていきます。そのときに口元を触らせたら誉めてあげたり、少量のおやつを与えます。それができるようになったら唇を反転させ口腔内に指を入れて歯の表面を触れることに鳴らしていきます。その次は歯の裏側を触られることに慣れてもらうというようにと少しずつ進めていきます。

口の中を触らせてくれるようになったら、まずはガーゼなどを指にまいて軽く歯をこすってみましょう。これが可能になったらいよいよ歯ブラシです。犬も猫もヒトに比べて歯の表面のエナメル質が薄いのでなるべく柔らかい歯ブラシを使用してください。ペーストは発泡剤の入っていないものを使っていただいても良いのですが、キシリトールの入っているものは絶対に使用しないでください。低血糖、肝障害を起こします。その他の口腔衛生商品、口腔内スプレー、口腔内洗浄剤、歯石付着予防療法食、デンタルガム、歯磨きガムなどはあくまでも歯ブラシによる歯磨きに併用するおまけだと考えてください。どんなに一生懸命に歯磨きをしても数年に1度は歯石を取る必要がでてきます。あまりひどい歯周病になる前に対処してあげてください。