No.29 心臓疾患時の徴候1

犬も猫も、心臓のトラブルは思いのほか多いものです。心疾患時に見られる症状についてご説明します。

倦怠感、運動不耐

簡単に言えば『元気がない』ことです。もちろん、心疾患でなくても、多くの病気で元気がなくなります。心疾患で起こる場合は、心臓からの血液の拍出量低下に伴い、各臓器や組織の代謝に必要な酸素が供給出来なることが原因です。

もちろん、咳も、心疾患時のみに見られるわけではありませんが、主に心臓の左側(左心系)、左心房、左心室といった場所に問題がある場合に咳が出ます。高齢の犬に多い僧帽弁閉鎖不全症では左心房が拡大します。拡大した左心房が左気管支を圧迫刺激することにより咳が出ます(このタイプは、治療しても咳が止まり辛いです)。また、左心系のトラブルにより肺の血圧が上がり(肺うっ血)、これがひどくなると肺に水が溜まります(肺水腫)。これらの場合も咳が出ます。

一般的には、夜間に咳が始まる場合が多いです。これは、心臓が昼間は交感神経優位で動いていて、夜は副交感神経(迷走神経)優位で動くからだと言われています。交感神経と副交感神経を自律神経と言います。自律神経は自分の意思で動かしていない神経のことです。心臓の他には、肺、気管支、胃腸や肝臓、胆嚢、生殖器などにも分布しています。心臓では、交感神経が主に促進系を、副交感神経が主に抑制系を司っています。つまり、夜の方が心拍数が、ゆっくりになります。心臓はゆっくりの方が同じリズムを続けるのが不得手だと言われています(不整脈なども夜の方が出現しやすいです)また、前述のように、気管支にも自律神経があり、やはり、夜は副交感神経が優位です。気管支は副交感神経が優位だと収縮しやすくなります。気管支が収縮すると咳は出やすくなります。このようなメカニズムで、副交感神経優位の時間帯である夜の方が咳は出やすくなります。

また、心臓の話ではありませんが、猫の咳はアレルギー性の喘息で起こっていることが非常に多くあります。

呼吸困難

心疾患により、肺水腫が生じたり、血液の循環が悪くなって、胸に水が溜まったり(胸水)、お腹に水が溜まったり(腹水、後述します)すると、だんだん呼吸困難の状態になって行きます。パンティングとも言います。重度になると、寝ているよりも座っている方が呼吸が楽なので(横になると、片側の肺が圧迫されるため)、お座りの状態を続け(犬座姿勢)、眠れません。

高齢猫の場合、甲状腺機能亢進症でもパンティングが見られることがあります。

次回に続きます。