No.83 椎間板ヘルニア2 (Herniated disc)

椎間板ヘルニアの主な治療は、内科的治療と外科的治療(手術)ですが、統計上の回復率は、

グレード1:内科的治療95%、外科的治療95%

グレード2:内科的治療84%、外科的治療95%

グレード3:内科的治療70%、外科的治療95%

グレード4:内科的治療50%、外科的治療90%

グレード5:内科的治療7%、外科的治療50%(48時間以内に手術をした場合)

といわれています(論文によって異なります)。あくまで数字です。

内科的治療ではNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)、エラスポール(好中球エラスターゼ阻害薬)などが使用されます(以前はステロイド剤が多用されてきましたが当院では使用しておりません)。その他、半導体レーザーやホメオパシー、鍼、音響療法なども副作用がなく効果的な場合があります。しかし、1番大切なのはケージレスト、安静です。安静が最も重要です。

グレード3以上は外科的治療の適応となります。簡単に言えば、歩けていないなら早急に手術をした方が良いです。胸腰椎の場合は片側椎弓切除術(Hemilaminectomy)を行います。頚部の場合は頚部腹側減圧術(Ventral slot)という手術です。また、予防として造窓術(Fenestration)を行うこともあります。手術後、すぐに歩ける場合もありますが、リハビリが必要な場合も多いです。根気よくリハビリを続けると、前述の回復率よりも確率が上がります。

また、今後、期待される治療には幹細胞移植などの再生医療があります。今のところ症例数が少ないことと高額なことがネックです。早く、簡単で安価な治療法が確立されると良いですね。

予防については、日々の生活の中で出来ることがいくつかあります。まずは、滑らせないこと。爪やパットの間の毛をこまめにお手入れして下さい。そして、お家の床がフローリングなら絨毯を敷いたり、滑り止めのワックスを使用してください。ソファージャンプも大きな原因の1つです。マットなどを上手く使って高さを減らしてみてください。ドッグランやボール投げ、フリスビーなどでは、体を十分に温めてから激しい運動に移ってください。肥満だから椎間板ヘルニアになりやすいというちゃんとしたデータはありませんが、やはり、リハビリなどでも肥満の犬は苦労します(手術も少し大変です)。太らせないことも大事です。