No.180 ロッキングプレート (Locking plate)

骨折治療の基本は、折れた骨をもとの位置に戻し(整復)、固定することです。きれいに固定し、固定を妨げるような外力をかけないようにすれば、ほとんどの場合は後遺症を残さずに治ります。適切な治療が遅れたため治癒までに時間がかかったり、骨の変形が残ったり、あるいはくっつかないままになったりすることを避けるために、正しい診断と適切な処置の選択が重要です 。
骨折の治療には、大きく分けて、外固定(ギブスや副木)と内固定(ピンニング、プレート、髄内釘固定)があり、通常これらを症状にあわせて組み合わせて行います。現在の獣医学ではプレートが多く用いられます。

近年は、交通事故よりも、ソファーから飛び降りたとか、コードなどに引っかかったとか、同居の動物と激しく遊んでいたから、ヒトが間違って踏んでしまったとか、家庭内のささいな事故による骨折が増えています。今はトイプードルやチワワ、ポメラニアンなどの小型犬・超小型犬が人気犬種です。このような品種の骨折治療は、従来の古典的プレートでは困難で癒合不全(骨がくっつかないこと)の可能性が高かったのですが、ロッキングプレートの出現によって癒合不全のリスクが大幅に軽減されました。

古典的プレート法は、スクリュー(ネジ)でプレートを骨に押し付ける事で固定力を獲得していました。その際、骨を強く圧迫する事で骨膜の血流を阻害し骨折端の細胞が壊死するなどして治癒に悪影響を与えていました。
ロッキングプレートは、プレートとスクリューをロックする事によるAngle stability(骨の角度安定性)によって固定するもので、骨膜の血流を維持することができます。
簡単にいうと、古典的プレート法は『完璧な固定(骨を融かすリスクがある程に)』を重視しているのに比べ、ロッキングプレートでは『生物学的癒合を優先』した骨折治療となっており、従来の骨折治療のトラブルの多くを解決できる方法です。

ロッキングプレートの普及と種類が増えたことによって、犬や猫だけでなく、ウサギやモルモット、鳥類などにも応用できるようになりました。


ハトの骨折にロッキングプレートを用いた例
(注;この例では世界で1番細いロッキングプレートを使用していますが、これでもプレートが太過ぎて理想的ではありませんので、あくまで一例とお考え下さい)