No.267 犬の皮膚の保湿

シャンプーの後や冬場の室内では皮膚は乾燥します。犬の皮膚の乾燥は、痒みの他にも、白いフケがついたり、被毛自体がパサパサしたりなどの症状が出ますが、見た目では分からない場合もあります。特に、アトピー性皮膚炎や脂漏症のような皮膚病がある犬においては、皮膚の乾燥が悪化因子になることが報告されています。これらの皮膚病が、一見良くなっているように見える時のスキンケアは非常に重要です。

犬の保湿剤にも、クリーム、ローション、乳液、ジェルなど様々なタイプのものがあります。被毛が多い部位には塗布しやすいローション、被毛が少ないお腹などには残留性が高いクリームや乳液、肉球などの表面が硬い部位にはジェルなどの浸透性が良いものを使うなど、部位によって使い分けをするのが理想です。また、シャンプーの時に、保湿剤が入った入浴剤を使用することもオススメです。

成分に関しては、セラミド、ヒアルロン酸、リピジュア、アミノ酸、尿素などが配合されたものが保湿力が高く、皮膚の潤いが期待できます。特にセラミドはヒトセラミド、動物セラミド、植物セラミド、セラミド擬似物質などの種類があり、中でもヒトセラミドは最も保湿力が高いと言われています。犬の保湿剤にもヒトセラミドを採用しているものがあります。また、最近では、皮膚の表皮細胞を活性化し、抗酸化物質のグルタチオンの産生を促進し、コラーゲンとエラスチンの働きを活性化させ、皮膚バリア機能を高める機能がある。ナールスゲンも注目されています。

この時期、健康な犬の快適な室温は22-23℃くらいですが、冬場にエアコンを使用すると、湿度はより下がります。加湿器などによって室内の湿度を上げることも重要です。犬が快適な湿度は50-60%です。


乾燥したアトピー性皮膚炎の犬の皮膚


No.266 ウサギの斜頸

首をかしげているように頭が斜めに傾いている状態を斜頸と言います(正確には捻転斜頸)。主に脳か耳の疾患が原因です。首が左右どちらかに傾いていてまっすぐに戻らない、眼振(眼球が揺れ動く、脳の場合は縦揺れ、耳の場合は横揺れが多いです)、まっすぐ歩くことができず同じ方向にグルグルと歩き続ける、立てなくなり横に倒れてグルグル回り続ける(ローリング)などの症状が出ます。

脳の場合は、主にエンセファリトゾーン(微胞子虫)という寄生虫により、中枢神経系に異常をきたし発症します。耳の原因はスナッフルの原因菌であるパスツレラや歯牙疾患からなどの細菌感染により、耳の奥にある平衡感覚をつかさどる器官(前庭)に異常が起こり発症します。

診断は諸症状と身体一般検査の他、神経学的検査、レントゲン検査やCT検査によって鼓室や前庭の状態をみます。また、血液検査でエンセファリトゾーンの抗体値を調べることもあります。

治療は、抗生剤、ステロイド、エンセファリトゾーン症の場合には駆虫薬も使用します。食欲が出るまでは点滴や強制給仕も行います。斜頸は再発も多く、終生治療が必要になることもあります。完全に元通りになる場合もありますが、症状が軽くなっても首は傾いたままの状態で固定されたり、後遺症が残るケースもあります。


捻転斜頸でたちあがれないウサギ


No.265 看取りと安楽死についてとその後

飼主様セミナーのアンケートに入っていた質問です。重いテーマなので別に書きます。読みたくない方はスルーして下さい。

とても悲しいことですがいつかはお別れがきます。最後はご自宅で看取りたいというのは、多くの方々が同じお考えだと思います。我々獣医師、動物看護士も同じ考えです。しかし現在の日本で、まだヒトでもほとんどの方がご自宅で最期を迎えるのが難しいように、痛みが無いように苦しくないようにするには、ご自宅では困難な面があるのは否めません。

また、下記の3つが揃ってしまったら、安楽死も選択肢になります。
1.治らずコントロールもできない病気
2.痛みが取れない状態
3.食事ができない状況
海外でヒトの安楽死が合法化されている地域では、「患者の心身に耐え難い苦痛がある場合」「患者の苦痛を緩和するために安楽死以外の方法がない場合」が実施の条件として挙げられています。

前回のメルマガでも書きましたが、犬や猫、他の動物も明日の心配はしていません。今が快適かどうかです。ご自分の、生き方、哲学、宗教感などを含めて、看取り方は最後は飼主さんのご判断になります。

亡くなった後は、ヒトと同じように火葬をされる方がほとんどです。公共の場所や業者さんなど多くの施設があります。小さな動物や大きなお庭がある方は、少し深く掘って土に返してあげるのも良いと思います。犬の場合は最寄りの区役所に、亡くなったことをご連絡して下さい。


No.264 第19回 飼主様向けセミナー ご質問のまとめ

今回の内容と違うご質問もありますが、私なりに答えさせていただきます。

犬のUV防護服について
犬も強い紫外線を長時間浴び続けると皮膚や眼にダメージを受けます。外飼いでずっと紫外線を浴びるのは良くないと考えられます。しかし、犬はヒトと寿命が違うので、紫外線に対してヒトほど神経質に注意しなくても良いと思います。イタリアングレーハウンドやヘアレスドッグなどの被毛が少ない犬が着るのは良いと思います。また、おしゃれとして犬が喜んで着てくれるならそれもOKです。

動物の皮膚構造
被毛があることを除けば、それほどヒトとかわりませんが、真皮層は厚く、皮膚と筋肉の間の脂肪組織(皮下織)は、動物種によりますが、基本的に動物の方が発達しています。

猫のトイレ
No151 猫の排泄の問題をご参照下さい。

犬にとっての充実した生活
犬や猫、他の動物も明日の心配はしていません。今が心身ともに快適かどうかが全てです。また、犬は飼主さんのことが大好きです。飼主さんが幸せなら犬も幸せで充実した生活を送れると思います。

高齢犬からの歯磨き
若い犬でも高齢犬でも歯磨きは一緒です。デンタルブラシで歯磨きをしてあげる事が最も推奨されています。最初は嫌がる場合も多いので、おやつなどを利用し、少しずつ時間をかけながら習慣づけてあげて下さい。ガムやジェルなどの効果は限定的です。また、歯垢のうちは歯磨きは有効ですが、歯石になってしまったら、いくら歯磨きをしても効果はありません。スケーリングが必要です。
こちらもご参照下さい
No18 歯石
No97 歯周病1
No98 歯周病2
No108 高齢動物の歯の疾患
No134 プラークコントロール
No218 口腔鼻腔瘻

カロリーを抑えた食事を取り、SPF値の高いサンスクリーン剤で紫外線を避け、セラミドを塗りましょう。


No.263 第19回 飼主様向けセミナー

昨日の芋川玄爾先生のセミナー『皮膚のアンチエイジング』にご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。参加出来なかった方のために要旨をまとめました。

・体全身のエイジングに関与する最も大きな因子は細胞内のミトコンドリアで、食物として取り入れたグルコースと、呼吸により取り入れた酸素から、生物体のエネルギー源であるアデノシン三リン酸(ATP)を産生する際に、取り入れた酸素の2%が必然的に活性酸素種(ROS)となり、このROSがエイジングの元凶と言われている。

・摂取カロリーを65%程度とすると、さまざまな生物種において寿命の延長や抗老化現象が見られる。

・加齢に伴い、顔面にはしわやたるみなどの形態変化が起きることはよく知られており、その主要な悪化要因に紫外線(UVAやUVB)による光老化の影響が報告され、この光老化は非露光部位で起こるような自然老化とは区別されている。

・顔が若く見えると長生きする。皮膚の代謝は21歳から落ち、37歳でしわが出る。若くて健康な皮膚は弾力性とハリがある。日焼け、シミがないと若く見える。老け顔にはうねりがある。うねりを化粧で隠す、つまり化粧は若顔を目指している。

・シミ、しわ・たるみの発生は紫外線暴露により生じたROSがより明瞭な作用を引き起こす。

・アセトン・エーテル溶媒(いわゆる石鹸)の処理時間、また、肌荒れの強さに比例して溶出している主成分はセラミドである。

・角層内に存在する水は、単なる普通の水(自由水)ではなく結合水(構造水)なので、乾燥に抵抗して蒸発しない、また低温に抵抗して凍らない水として、角層の柔軟性を保ち、きれいなぷるるん肌を支えている。

・乾燥が生じる最も頻度の高い要因が加齢や皮膚洗浄によるセラミド減少によることから、生じた乾燥を改善する方法として最も合理性のある方法は、この失われたセラミドを補充し結合水を回復させることにある。

・日焼けをしない量の紫外線でも皮膚の弾力性はなくなる。

・コラーゲンは主に皮膚の強さに関係する膠原繊維。体内で作り出すことができる。コラーゲンは増えても仕方なく、増えすぎると皮膚が硬くなる、よって、コラーゲンを経口接種したり塗ったりしても意味はない。塗るコラーゲンはねっとり感で騙されてる。

・エラスチンは皮膚の弾力性に関係する弾性繊維。基本的に再生しない。紫外線でしわができるのは、エラスチンがたわむことによる。UVBは真皮に入らないが、表皮でサイトカインを作り真皮に影響する。

・血管内皮細胞が産生する血管収縮作用を有するペプチド(タンパク質の1種)、エンドセリン(EDN)にUVBを照射すると、メラノサイト細胞が増殖し、メラニン生成の促進に結びつく。EDNがメラノサイトに作用すると、細胞内のカルシウム濃度が上昇してプロテインキナーゼC系が活性化され、メラノサイトの増殖につながる。また、メラノサイト細胞膜上にEDNに対するレセプターが存在することが明らかにされた。このシステムの制御は、新しい美白剤のターゲットになるものと考えられる。

・種々の生薬エキスからEDNによる細胞内カルシウム動員を抑制するものとして、数百のエキスをスクリーニングした結果見出されたもののひとつがカミツレエキスで、シミの予防が期待される。

・ショウキョウエキス(ショウガの根茎)もしわ・たるみの予防が期待される。

・動物は表皮にメラノサイトがないのでシミができづらい。ヒトは表皮の最下層の細胞の10個に1個がメラノサイト。隠れシミは皮膚の中にあるメラニンが原因。突然のシミをシミ爆弾という。若い時の日焼けの経験による。

・チロシナーゼは、メラニン色素をつくり出すメラノサイトが持っている酵素。チロシナーゼ阻害剤でメラノサイトがメラニン合成を抑制して美白効果がある。しかし正常な皮膚もチロシナーゼを持っているため、いずれ破たんが来る。

・UVA(紫外線A波):肌の奥にある真皮まで到達し、真皮にあるコラーゲンやエラスチンを破壊する。徐々にしわ、たるみなど老化の原因になる。

・UVB(紫外線B波):主に表皮を赤くさせ、炎症を起こす。日焼けをして肌が黒くなったり、肌にシミ、そばかすができたりする原因となる。ガラス窓で室内に入って来ない。

・PA(Protection Grade of UV-A,UVA防止効果指数):一時的な黒化を引き起こし、長時間かけて肌の弾力を失わせるUVAを防ぐ効果を表す目安。黒斑が生じるまでの紫外線量を4段階の「+」マークで表示し、「+」の数が増えるにつれ、UVAに対する防御効果が高いことを表すが、実際にはあまり意味がない。

・SPF(Sun Protection Factor、紫外線防御指数):UVBを防ぐ効果指数。1~50+までの数値は、素肌に何も塗らない場合に比べて、この日焼け止めを塗った場合に何倍の紫外線に耐えうるかを表す。つまり、UVBによる炎症をどれぐらい長い時間防止できるかを表しており、数値が大きい方がUVBに対する防御効果が高い。

・日焼けは紫外線からの体の防御システム。出来るだけ長く効くSPF値の高いものを使って繰り返し塗る。冬でも塗る必要がある。塗り込むのはダメ。理想は1時間で塗りなおし。

資料は若干ですがあまりがあります。欲しい方は受付にお申し出ください。


No.262 皮下点滴の方法

慢性腎不全の場合など、ご自宅で皮下点滴を継続して頂く場合があります。皮下点滴の方法をご説明します。

輸液バック チャンバー クランプ 翼状針

 

1.手指を洗って、翼状針をチャンバーに繋ぎます
2.クランプを開け、空気抜きをして、クランプを閉じます
3.保定者は首の下とお腹に腕を回し、しっかりと保定します
4.翼状針のサックを外して、針先が上を向くように持ちます
5.首の後ろの背中の皮膚を、親指、人差し指、中指でしっかり引っ張り三角形を作ります
6.アルコール綿で皮膚を消毒し、親指の下で翼状針を根本までしっかり刺します
7.クランプを開けて皮下点滴を開始します
8.規定量が入ったらクランプを止め、針先を皮膚の上から持ち針を抜きます
9.そのまま1分ほど皮膚を摘んでおきます

輸液バック、チャンバー、クランプ、翼状針は全て医療廃棄物です。終わったら病院へお持ち下さい。
わからないことがあれば、お気軽にお問い合わせ下さい。


No.261 小鳥の開張肢 (ペローシス)

セキセイインコや文鳥などの小鳥のヒナに発症する開張肢(ペローシス)という疾患があります。腱はずれとも呼ばれます。マンガン、パントテン酸、ピリドキシン、ビオチン、コリン等の栄養不足や遺伝的疾患とも言われていますが、根本的な原因はまだわかっていません。

ペローシスの症状は、片脚もしくは両脚の大腿骨が内転し、脛足根骨が外転することで生じる開脚です。脚が自然の状態で開脚してしまい姿勢が維持できません。脚に荷重をかけられないため、胸で全体重を支えて雛鳥から成長していくために胸骨の変形や胸郭が浅くなります。胸郭が浅くなることで慢性的な呼吸不全、呼吸速迫が認められるケースもあります。

治療法としては、生後4週齢くらいまでの幼鳥であればテーピング固定を実施します。趾部を自着生伸縮包帯を用いて肩幅に合わせて固定します。このテーピングは慎重に行っても幼鳥の精神的ストレスや関節への負担で、食欲不振や関節の脱臼などが生じる可能性があります。4週齢以上の場合は生活環境を整備してQOLを上げる処置をしていきます。骨切りピンニングといって大腿骨を炭酸レーザーで切断して、ピンニングで大腿骨のねじれを矯正する手術で対応する方法もあります。


ペローシスの文鳥のヒナ


ギブスをして滑らない止まり木を使用します


No.260 開口不全症候群 (ロックジョー)

開口不全症候群(ロックジョー)は、英名で「Cockatiel Lock Jow Syndrome(CLJS)」と言います。主にオカメインコのヒナに発症する病気で、口(クチバシ)が開かなくなるようになり、食事を摂取できなくなり、衰弱死してしまいます。

ロックジョーの原因は、細菌感染によるものと言われています。ロックジョーを発症する前に、上部気道疾患(URTD)が先に発症します。URTDの中でも特に、化膿性副鼻腔炎に続発するケースが多いです。URTDの病原菌が、ロックジョーを引き起こす原因菌と考えられ、ボルデテラ(Bardetella avim)が最も重要な原因菌であると推測されています。また、その他の細菌やマイコプラズマ、真菌なども関連性が疑われています。

症状は、原因菌による炎症が顎や頬の細胞組織に波及して口が動かなくなります。URTD→半開きの濁った眼→顎の可動域の低下→食事ができなくて衰弱死。という風に病態が進みます。

治療は、抗生剤の投与を中心に、消炎剤、半導体レーザー、代替医療、リハビリなどを組み合わせて行います。自力で食事を摂取できないため、強制給餌による食事も行われます。強制給餌は誤嚥に十分注意して行う必要があります。

ロックジョーを防ぐため、オカメインコのヒナをお迎えした際は、まずは、動物病院で診察を受けて下さい。治療が難しい疾患ですが、早期に見つかれば救命率が高まります。ペットショップやブリーダーからオカメインコのヒナをお迎えする際は、必ず食事をしっかり食べているか確認して下さい。あまり食べていない、口を開きにくそうにしている場合、ロックジョーを発症している恐れがあります。


ロックジョーのオカメインコのヒナ


No.259 高血圧 (Hypertension)

犬猫の血圧の研究はたくさんありますが、正常値は、

・収縮期血圧(最高血圧)100~150mmHg
・拡張期血圧(最低血圧)60~100mmHg
・平均血圧80~130mmHg

と言われています。この数値は人間の血圧の正常値と似ています。ですが体格によっても異なりますし、品種によっても幅がありますし個体差もあります。この数値より異常に高くないか、低くないかという点に気をつけてあげることが大切です。
犬や猫では、最高血圧が150mmHg、最低血圧が95mmHg以上で高血圧と診断されます。とりあえずの目安としては、最高血圧が犬で150mmHg 以上、猫で160mmHg以上なら治療が推奨されます。180mmHg以上の場合はかなり合併症のリスクが高い重度の高血圧と設定されています。

ヒトの場合は、血圧が高くなるはっきりとした原因が特定できない本態性高血圧症が多いですが、犬猫の高血圧は、心臓病・腎臓病・内分泌疾患(糖尿病、犬のクッシング病、猫の甲状腺機能亢進症)などから二次的に認められることがほとんどです。

高血圧を放置しておくと、高血圧が原因で重い症状が現れることがあります。アメリカ獣医内科学会(ACVIM)は、犬猫での血圧測定と全身性高血圧の診断および治療に関するガイドラインを公表しています。このガイドラインでは、血圧を高血圧によって臓器に組織障害が発生する危険度と関連付けて分類しています。
高血圧で組織障害が起こりやすいのは、「腎臓」「眼」「中枢神経」「心臓血管系」の4カ所です。
腎臓の障害は、多飲多尿・体重減少・食欲不振・嘔吐等の症状として現れます。尿検査で蛋白尿が認められる時は、高血圧が原因の場合があります。
眼の障害は、突然の失明・瞳孔の散大・赤目(眼内出血)等の症状として現れます。眼底検査で、網膜の浮腫や剥離・眼底血管の蛇行・眼底出血・視神経乳頭の浮腫等があるかどうかで判定します。特に猫で網膜病変が認められた場合の血圧は、その他の組織障害が認められる場合に比較して、高血圧が著しいことがわかっていますので、網膜病変は、高血圧に伴うすべての症状の中でも、最も重要な所見となります。
中枢神経の障害は、痙攣発作・虚脱・無関心・見当識障害・抑鬱・眼振・斜頚・運動失調などの症状として現れます。これらは高血圧による脳浮腫・脳内出血・脳梗塞等が原因で起こります。神経学的検査やMRI検査で判定します。
心臓血管系の障害は、運動不耐性や呼吸促迫等の心不全兆候・心雑音・不整脈等の症状として現れます。胸部レントゲン検査・心エコー検査・血液検査等で判定します。

ACVIMガイドライン

ACVIMガイドラインでは、高血圧治療の開始の目安として、
1.眼、中枢神経に組織障害が認められる場合では、危険度Iの段階から
2.腎臓、心臓血管系に組織障害が認められる場合では、危険度II以上の段階から
を推奨しています。高血圧はサイレントキラーなどとも呼ばれ、気づいた時には重症化している場合も多いです。個人的には組織障害が出ないうちに治療を開始すべきだと思います。8歳を過ぎたら年に1-2回の健康診断で血圧測定をして、高血圧を早めに発見して対処しましょう。


犬の血圧測定


No.258 犬の脳炎

犬の脳に炎症が起きて、ひどくなると壊死を起こす病気で、てんかんのような痙攣発作や視力障害、頚の傾き(斜頸)や眼振などの前庭障害を起こします。重症化すると意識障害を起こします。若い犬でも発症が見られます。

原因はウィルスや細菌、真菌、原虫に感染して起こる感染性のものと、非感染性のものにわけられますが多いのは後者です。感染性のものは犬ではジステンパーウィルスが原因のものが多いです(猫ではFIPウィルス)。非感染性のものは自己免疫性疾患だと考えられています。

犬の非感染性脳炎は、主に以下の3つに分類されます。

肉芽腫性髄膜脳炎(GME):脳の中に肉芽腫ができて、肉芽腫が出来た場所によって症状が違います。好発犬種はなく、多くの犬種で発生します。大型犬は比較的稀です。

壊死性髄膜脳炎(NME): パグで多く発生するため、別名パグ脳炎とも言われています。シーズー、マルチーズ、ポメラニアン、チワワなどでも発症します。大脳皮質が炎症を起こし、脳が壊死して行きます。

壊死性白質脳炎(NLE):脳の白質に病巣を形成します。ヨークシャーテリア、チワワによくみられます。

脳炎の診断鑑別には、似た症状を示す病気を除外したのちに、最終的にMRI検査やCFS(脳脊髄液)検査で行います。

治療は、免疫抑制剤、抗てんかん剤で症状をコントロールします。GMEの場合は放射線療法を行う場合もあります。代替医療が著効する場合もあります。

こちらもご参照下さい
No89 癲癇、てんかん