No.288 サルコペニア (Sarcopenia)

サルコペニアという言葉はギリシャ語のsarcoという筋肉を表す単語とpeniaという欠乏を意味する単語を組み合わせた筋肉減少症という医学造語です。筋肉量の減少により筋力が低下し、身体機能が低下した状態です。加齢とともに筋肉量は低下しますが、日常生活にも影響が生じた状態がサルコペニアです。また、筋肉は基礎代謝を行い、エネルギーとなる糖質の代謝や体の老廃物となるアンモニアの処理も行います。このようなシステムにも支障が出ます。高齢動物でサルコペニアが起こると、優位に寿命が短くなることが知られています。

加齢で運動量が減って筋力、筋肉量が減って起こる1次性サルコペニアと、加齢以外にも原因がある2次性サルコペニアがあります。関節炎や慢性腎不全や歯周病、心疾患、低アルブミン血症、悪性腫瘍、犬の副腎皮質機能亢進症、猫の甲状腺機能亢進症などは2次性サルコペニアの原因となることがあります。これらが原因で筋肉の代謝にかかわるステロイドホルモンやサイトカインが健康時から変化することで、筋肉の分解量が産生量を上回ることから発症します。立っている時に後ろ足が震える、飲水量が増えたなどの症状と共に体重減少があればサルコペニアの可能性があります。

高齢になればなるほど体重は減りがちですが、体重の減少がみられる場合は、一見元気そうに見えても、病気がないかどうかを注意深く調べて、基礎疾患の治療、食事の見直し、状況によっては運動やリハビリを取り入れ、サルコペニアにならないようにしていくことが重要です。