メリークリスマス!今年もあとわずかですね。
貧血の続きです。
『大球性低色素性貧血』は貧血に対して骨髄が反応し、若い赤血球が多く出て来ている状態です。若い赤血球は大きくてHb濃度も高いです。急性の失血・出血(体内での出血も含む)、溶血などの時に起こります。溶血の原因は多くのものがありますが、バベシア・ヘモバルトネラ、レプトスピラ、フィラリアなどの感染症、ネギ類・薬剤、金属や植物などから引き起こされる各種の中毒、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)、腫瘍・血栓などによる細血管の血流障害などが主なものです。
『小球性低(正)色素性貧血』は、赤血球は小さくHb濃度が低い状態です。主に鉄欠乏性貧血のことです。ノミやダニの大量寄生、慢性の出血(消化管や体内の腫瘍、持続的な血尿など)が原因です。
『正球性正色素性貧血』は、大きさ、Hb濃度に変化はなく、骨髄の貧血に対する反応が乏しい状態です。原因は、腎疾患、慢性炎症・慢性疾患(ACD:甲状腺機能低下症やアジソン病などの内分泌疾患、腫瘍や各種の感染症、皮膚病や外耳炎の慢性化した場合なども含まれます)、ある種の抗生剤、抗癌剤によるもの。造血障害(大球性正色素性の場合もあります)です。造血障害は各種の骨髄の疾患です。骨髄癆(骨髄がなくなってしまう状態です。骨髄増殖性疾患、腫瘍細胞の浸潤、肉芽種)・骨髄機能不全(非再生性免疫介在性貧血(NRIMA)、赤芽球癆(PRCA)、再生不良性貧血(AA)など)・骨髄壊死(感染症、毒素、腫瘍、低酸素、播種性血管内凝固(DIC)など)・骨髄の基質異常(骨髄線維症、骨軟化症、大理石骨症)などが見られます。骨髄疾患には難しい名前が並んでいますね。また、皮膚病や外耳炎でさえも長引くと貧血が起こることがあります。
次のステップは、必要に応じて、網状赤血球(成熟赤血球になる1段階前の赤血球)の測定、ウィルスの検査(猫の場合は猫白血病:FeLV、猫免疫不全ウィルス:FIVの検査は重要です)、免疫学的な検査(赤血球自己凝集試験、クームス試験など)、骨髄の検査(基本的に麻酔が必要となりますが、造血障害、骨髄疾患を診断するには必要な検査です)、遺伝子検査(PCR検査)をなどの特殊検査を考慮して、原因を突き止めて行くことになります。
治療は原因によって様々ですが、どんな貧血でも状態がひどい場合には輸血が考慮されます。一般的に、犬でPCVが20%以下、猫で10%以下の場合は輸血が必要なことが多いです。日本には犬・猫の血液バンクがないため、ドナー(血液を提供してくれる動物)を探さなければなりません。運よくドナーが見つかれば、クロスマッチ試験をして血液が適合することを確認して輸血を行います。ちなみに犬の血液型は複雑で、DEN型(犬赤血球抗原型)に関連した12~13種類のグループシステムが報告されています。猫はABグループシステムが用いられていて、A型、B型、AB型の3種類です。日本の調査では約90%猫がA型だという報告があります(とくに日本猫では95%以上がA型)。AB型は稀で1%以下と言われています。