No.37 貧血(Anemia)1

貧血とは、赤血球数(肺で酸素と結合し全身へ運びます。また、不要となった炭酸ガスも運搬します。RBC)、血色素量(RBCの主成分です。Hb)、血球容積(RBCの大きさです)が正常以下に減少することです。赤血球容積比(血中に含まれる赤血球の容積の割合。PCVまたはHt)の正常値は、犬で37~55%・猫で30~45%です。この値を下回ると貧血が示唆されます。

一般に、犬・猫の方が人よりも低酸素状態に強く、貧血に強いといわれています。そのため、飼主さんが気付いたときにはひどい貧血になってしまっていた。などということが多く見られます。貧血時の主な症状は、元気や食欲の低下、粘膜の蒼白、あえぎ呼吸(パンティング)、心雑音などです。黒っぽい便や色のおかしい尿、歯茎から出血している場合も貧血を示唆していることがあります。また、原因によっては発熱を伴っている場合もあります。貧血は診断名ではなく、基礎疾患の一徴候でしかありません。貧血が認められた場合、適切な治療を行うために以下のようなアプローチをしていきます。

まずは、血液が造られているかどうかを見るのが重要です。赤血球は骨髄で造られます。また、鉄分などのHbの材料が足りなくても血液は造れません。再生性の貧血(体からの赤血球の喪失量が造られる量を上回っている状態)なのか、非再生性の貧血(造られる量が少しかなく赤血球の補充が足りていない状態)なのかを分類します。そのためには、平均赤血球容積(MCV)と平均赤血球色素濃度(MCHC)の2つの値を算定が必要です(現在は機械によって数分で算定出来ます)。また、血液塗沫標本を作製し、血球の状態を顕微鏡上で詳細に観察します。

・平均赤血球容積(MCV):赤血球の大きさを評価する指標。正常値:犬60~77・猫39~55(fl)

・平均赤血球色素濃度(MCHC):血球1個に含まれるHbの濃度。正常値:犬32~36%・猫30~36%

MCV値が大きくなるのを大球性、MCHC値が小さくなるのを低色素性と言います。よく認められるパターンは、MCV増加・MCHC減少の『大球性低色素性貧血』。MCV減少・MCHC減少(または正常)の『小球性低(正)色素性貧血』。MCV正常・MCHC正常の『正球性正色素性貧血』の3パターンです。『大球性低色素性貧血』は再生性貧血、『小球性低(正)色素性貧血』『正球性正色素性貧血』は非再生性貧血です。

次回に続きます。