CKDの臨床症状は、初期には無症状のことがあり、病気が進行すると、多飲多尿、体重減少、食欲不振、元気消失、脱水、嘔吐、口臭などが現れてきます。国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)の最新慢性腎臓病ガイドラインとして、従来の1.クレアチニン 2.血圧 3.尿中タンパククレアチニン比(UPC)に、「クレアチニンよりも感度の高い腎機能マーカーである可能性がある」として、SDMA(→No299SDMA)が採用され、ステージ分類が変わりました。
クレアチニン(Creatinine:Cr)は、筋肉で作られる老廃物の一つで、そのほとんどが腎臓の糸球体から排泄されます。そのため、血液中のクレアチニンの増加は、糸球体の濾過機能が低下していることを意味します。ただし、筋肉が多い動物は高めに、筋肉が少ない動物は低めになるために、とくに筋肉質の大型の猫では高値になりやすい傾向があります。これだけでは正確性に乏しい検査です。
具体的なCKDのステージ分類は以下の検査で行います。
ステージ1および2前期を診断
1~4の1つ以上を満たす
1.腎前性要因(心疾患など)のない参考基準値内でのクレアチニンまたはSDMAの上昇
2.持続的なSDMAの上昇(>14μg/dL)
3.エコー画像上の腎臓の異常
4.持続的な腎性タンパク尿(UPC):犬>0.5 猫>0.4
より進行したCKDの診断(ステージ2後期-4)
1と2の両方を満たす
1.クレアチニンおよびSDMAの高値
2.尿比重:犬<1.030 猫<1.035
犬の慢性腎臓病のステージング
猫の慢性腎臓病のステージング
CKDと診断し、IRISガイドラインに従ってステージ化した後は、サブ分類をすることが重要です。動物では、蛋白尿と血圧から判断するサブ分類を用います。
蛋白尿をサブ分類する目的は、腎後性(尿路結石など)または腎前性(心疾患など)の可能性を除外することにより蛋白尿が腎性であることを明確にすることにあります。具体的には、 尿タンパククレアチニン比(UPC)を測定します。UPCは腎臓から蛋白の喪失を測定するもので、尿濃度の影響を受けません。蛋白尿を検出し、その継続性と規模を測定することは、臨床上の判断と患者の治療に対する反応を経過観察する上で重要です。UPCの正常値は犬で0.5未満、猫で0.2未満ですが、猫の慢性腎臓病CKDでは、タンパク漏出は起こりくいと考えられるため、UPCが0.2以上の症例では治療を行うことが推奨されています。
全身性高血圧はCKDの一般的な合併症です。高血圧が管理されていない場合、ネフロン機能の低下を引き起こし、疾患はより急速に進行するおそれがあります。したがって、高血圧の管理は治療上で重要です。(→No259高血圧)