No.38 貧血(Anemia)2

メリークリスマス!今年もあとわずかですね。

貧血の続きです。

『大球性低色素性貧血』は貧血に対して骨髄が反応し、若い赤血球が多く出て来ている状態です。若い赤血球は大きくてHb濃度も高いです。急性の失血・出血(体内での出血も含む)、溶血などの時に起こります。溶血の原因は多くのものがありますが、バベシア・ヘモバルトネラ、レプトスピラ、フィラリアなどの感染症、ネギ類・薬剤、金属や植物などから引き起こされる各種の中毒、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)、腫瘍・血栓などによる細血管の血流障害などが主なものです。

『小球性低(正)色素性貧血』は、赤血球は小さくHb濃度が低い状態です。主に鉄欠乏性貧血のことです。ノミやダニの大量寄生、慢性の出血(消化管や体内の腫瘍、持続的な血尿など)が原因です。

『正球性正色素性貧血』は、大きさ、Hb濃度に変化はなく、骨髄の貧血に対する反応が乏しい状態です。原因は、腎疾患、慢性炎症・慢性疾患(ACD:甲状腺機能低下症やアジソン病などの内分泌疾患、腫瘍や各種の感染症、皮膚病や外耳炎の慢性化した場合なども含まれます)、ある種の抗生剤、抗癌剤によるもの。造血障害(大球性正色素性の場合もあります)です。造血障害は各種の骨髄の疾患です。骨髄癆(骨髄がなくなってしまう状態です。骨髄増殖性疾患、腫瘍細胞の浸潤、肉芽種)・骨髄機能不全(非再生性免疫介在性貧血(NRIMA)、赤芽球癆(PRCA)、再生不良性貧血(AA)など)・骨髄壊死(感染症、毒素、腫瘍、低酸素、播種性血管内凝固(DIC)など)・骨髄の基質異常(骨髄線維症、骨軟化症、大理石骨症)などが見られます。骨髄疾患には難しい名前が並んでいますね。また、皮膚病や外耳炎でさえも長引くと貧血が起こることがあります。

次のステップは、必要に応じて、網状赤血球(成熟赤血球になる1段階前の赤血球)の測定、ウィルスの検査(猫の場合は猫白血病:FeLV、猫免疫不全ウィルス:FIVの検査は重要です)、免疫学的な検査(赤血球自己凝集試験、クームス試験など)、骨髄の検査(基本的に麻酔が必要となりますが、造血障害、骨髄疾患を診断するには必要な検査です)、遺伝子検査(PCR検査)をなどの特殊検査を考慮して、原因を突き止めて行くことになります。

治療は原因によって様々ですが、どんな貧血でも状態がひどい場合には輸血が考慮されます。一般的に、犬でPCVが20%以下、猫で10%以下の場合は輸血が必要なことが多いです。日本には犬・猫の血液バンクがないため、ドナー(血液を提供してくれる動物)を探さなければなりません。運よくドナーが見つかれば、クロスマッチ試験をして血液が適合することを確認して輸血を行います。ちなみに犬の血液型は複雑で、DEN型(犬赤血球抗原型)に関連した12~13種類のグループシステムが報告されています。猫はABグループシステムが用いられていて、A型、B型、AB型の3種類です。日本の調査では約90%猫がA型だという報告があります(とくに日本猫では95%以上がA型)。AB型は稀で1%以下と言われています。


No.37 貧血(Anemia)1

貧血とは、赤血球数(肺で酸素と結合し全身へ運びます。また、不要となった炭酸ガスも運搬します。RBC)、血色素量(RBCの主成分です。Hb)、血球容積(RBCの大きさです)が正常以下に減少することです。赤血球容積比(血中に含まれる赤血球の容積の割合。PCVまたはHt)の正常値は、犬で37~55%・猫で30~45%です。この値を下回ると貧血が示唆されます。

一般に、犬・猫の方が人よりも低酸素状態に強く、貧血に強いといわれています。そのため、飼主さんが気付いたときにはひどい貧血になってしまっていた。などということが多く見られます。貧血時の主な症状は、元気や食欲の低下、粘膜の蒼白、あえぎ呼吸(パンティング)、心雑音などです。黒っぽい便や色のおかしい尿、歯茎から出血している場合も貧血を示唆していることがあります。また、原因によっては発熱を伴っている場合もあります。貧血は診断名ではなく、基礎疾患の一徴候でしかありません。貧血が認められた場合、適切な治療を行うために以下のようなアプローチをしていきます。

まずは、血液が造られているかどうかを見るのが重要です。赤血球は骨髄で造られます。また、鉄分などのHbの材料が足りなくても血液は造れません。再生性の貧血(体からの赤血球の喪失量が造られる量を上回っている状態)なのか、非再生性の貧血(造られる量が少しかなく赤血球の補充が足りていない状態)なのかを分類します。そのためには、平均赤血球容積(MCV)と平均赤血球色素濃度(MCHC)の2つの値を算定が必要です(現在は機械によって数分で算定出来ます)。また、血液塗沫標本を作製し、血球の状態を顕微鏡上で詳細に観察します。

・平均赤血球容積(MCV):赤血球の大きさを評価する指標。正常値:犬60~77・猫39~55(fl)

・平均赤血球色素濃度(MCHC):血球1個に含まれるHbの濃度。正常値:犬32~36%・猫30~36%

MCV値が大きくなるのを大球性、MCHC値が小さくなるのを低色素性と言います。よく認められるパターンは、MCV増加・MCHC減少の『大球性低色素性貧血』。MCV減少・MCHC減少(または正常)の『小球性低(正)色素性貧血』。MCV正常・MCHC正常の『正球性正色素性貧血』の3パターンです。『大球性低色素性貧血』は再生性貧血、『小球性低(正)色素性貧血』『正球性正色素性貧血』は非再生性貧血です。

次回に続きます。


No.36 猫の膀胱炎

猫の膀胱炎の病態は犬より複雑です。下記のようなデータがあります。

特発性膀胱炎(FIC):55~64%

尿石症:15~21%

尿道閉塞:10~21%

先天性の解剖学的異常:10%

行動学的障害:9%

腫瘍:1~2%

細菌感染:1~8%

全部を足し算して100%にならないのは原因が2つ以上存在する場合があるからです。とくに一番多い特発性膀胱炎(Feline indiopathic cystitis FIC)が犬に見られないものです。

FICとは『血尿、排尿困難、頻尿、粗相などの下部尿路症状を伴うが、4~7日で自然寛解することがあり、同様の症状が再発的に繰り返される』と定義されています。簡単に言えば、原因がよく分からない膀胱炎が、良くなったり悪くなったりを1週間毎ぐらいで繰り返している状態です。原因としては、ストレス、神経炎症、病原微生物、尿路上皮バリアの変化、肥満細胞浸潤、自己免疫性疾患などが言われていますが、今のところ原因不明です。肥満猫に多い印象があります。人の間質性膀胱炎に似ているなどとも言われています。

診断は、基本的には除外診断です。最初に尿道閉塞がなければ、尿検査と、状況により超音波の検査で仮診断します。1週間程度で改善しなければ、超音波ガイド下での膀胱穿刺による尿検査(必要なら増菌培養)、尿路造影X線検査、血液検査などをして精査します。

治療はストレスの除去が1番大事だと思われます。パーソナルスペースの提示、楽しい運動、栄養素の見直し、トイレを増やす、人間の時間割を一定にする、雑音・強い臭いを減らす。なるべく高い声で話しかける。猫フェイシャルホルモンを使用する。などです。また、ドライフードをウェットフードに切り替えることや、体重のコントロールも重要です。

薬物治療としては、抗生剤、NSAID(非ステロイド系消炎剤)、鎮静剤、抗欝剤、粘膜保護剤、副交感神経遮断剤、輸液などが用いられますが、FICの場合、当院では、ホメオパシー、漢方薬、サプリメントなどのホリスティック治療をお勧めしています。


No.35 犬の膀胱炎

寒くなると、人と同じように動物でも膀胱炎になりやすくなります。おしっこを我慢し過ぎて過度に溜めてしまうことや、冷えなども原因になるようです。

犬の膀胱炎の一般的な症状は頻尿、血尿、排尿困難、排尿痛などです。発熱や食欲不振、嘔吐や元気が無くなったりしている場合は腎臓のトラブル、雄なら前立腺の問題なども考えます。

症状から膀胱炎が疑われた場合は、まずは尿検査を行います。尿検査は、自然排尿とカテーテルによる方法、超音波ガイド下で膀胱を注射器で刺して採尿する方法などがあり、検査の用途によって使い分けます。

犬の膀胱炎の大部分は細菌感染があり(多くは大腸菌の感染だと言われています)、抗生剤や止血剤の投与を開始すると同時に、おしっこを我慢しないですむようにお散歩の回数を増やしたり、トイレの数を増やしたり、寒くない環境を作ります。通常、1週間後に尿検査をして、状況が改善していれば同じ治療を2~3週間継続します。1週間経っても尿の状態が改善していない場合は、結石や腫瘍がないか、抗生剤がきちんと効いているか、先天的な膀胱の異常がないかなどを、超音波やレントゲン検査、血液検査などで精査します。

犬の膀胱結石は、ストラバイト、シュウ酸カルシウム、尿酸塩、シスチン、シリカの種類があります。多くは、ストラバイトかシュウ酸カルシウムで他の3種は稀です。ストラバイトのみ、ストラバイト溶解食と抗生剤の投与で内科的に小さく出来る場合がありますが、他の結石は外科的な処置が必要になります。ストラバイトでも大きなものは外科的な処置が推奨されます。

犬の膀胱腫瘍は、良性、悪性と両方ありますが、悪性腫瘍は移行上皮癌が最も多く、スコティシュ・テリア、ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア、シェットランド・シープドッグ、ビーグル、ワイヤー・ヘアード・テリアなどに発生が多いです。治療は手術、抗癌剤、放射線の癌の3大治療をベースとして、症例によって、ホメオパシー、漢方薬、サイマティクスなどの代替治療も考慮します。


No.34 肥満が原因で生じる主な疾患2

肥満が原因で生じる主な疾患2

泌尿生殖器疾患

不妊手術をした雌犬が高齢になると、尿道括約筋機能不全(尿失禁、お漏らし)が見られることが多くなります。理由は、まだ、明確ではありませんが、肥満による内臓の圧迫は発症を後押ししているようです。また、シュウ酸カルシウム結石も肥満により発症リスクが高まります。

腫瘍

人では肥満が閉経後に発症する乳癌の危険因子であることが指摘されています。犬猫でもメカニズムは不明ですが、疫学調査で肥満が乳癌の危険因子であるという結果が出ています。良性の脂肪腫の発生も肥満犬によく見られます。

呼吸器疾患

気管虚脱や軟口蓋過長症、パグ、ブルドッグ腫、ボストンテリアなどの短頭腫の呼吸困難も肥満によって症状が悪化します。また、体脂肪の増加に伴い熱中症のリスクも増大します。

麻酔リスク

脂肪組織は全身麻酔薬の貯蔵庫として機能するため、肥満動物の全身麻酔はリスクが増加することが報告されています。もちろん、前述の循環器、呼吸器の問題も理由となります。

関節疾患

体重の増加は各関節に過度の負担をかけます。通常、体重が倍になると、関節は4倍の強度が必要になると言われています。関節炎、前十字靭帯断裂や膝蓋骨脱臼、椎間板疾患の危険因子となります。

外耳炎、皮膚疾患

以外に思われるかもしれませんが、体脂肪の高い犬は、マラセチア(酵母型真菌、カビの一種です)性の外耳炎、膿皮症のリスクが有意に高くなることが報告されています。メカニズムは、まだ、分かっていません。

肥満は色々な疾患の危険因子となります。犬や猫にとっても、食事やおやつは大きな楽しみですが、ある程度はきちんとした管理が必要です。


No.33 肥満が原因で生じる主な疾患1

肥満が問題となるのは、肥満がなんらかの健康障害を発生させることがあるからです。人医学では1つの診療科を形成するまでの大きな分野になってきています。犬猫の肥満の病態は人と異なることも多いのですが、主な疾患をご説明します。

循環器疾患

肥満によって高脂血症を持っている人では、低密度リポ蛋白(LDL)が増加して血管病変を作ることが動脈硬化の発端として知られています。心臓の筋肉に分布する冠状動脈の血行障害が虚血性の心疾患です。虚血が部分的なものを狭心症、進行すると心筋梗塞となります。

犬猫では、冠状動脈の数が多いことや代謝酵素の違いから、人のような虚血性の心疾患にはなりづらいとされていますが、体重が増加すれば、抹消の酸素要求量が増し、左心室の負荷が増大し心疾患のリスクが高まります。

猫の糖尿病

人では肥満は糖尿病の危険因子と考えられています。人の糖尿病は、膵臓のインスリン分泌細胞の障害から発生する1型糖尿病と、抹消組織のインスリン抵抗性の増大を発端とする2型糖尿病に分類されています。このうち、肥満と関連するのは2型です。人の分類を犬猫に当てはめると、犬の糖尿病には1型が多く、猫の糖尿病は多くが2型です。様々な実験調査の結果からも、今のところ、肥満が犬の糖尿病の危険因子とみなせるだけの結果は出ていませんが、猫の糖尿病に関しては肥満が危険因子と考えられています。

猫の脂肪肝

肥満している猫は脂肪肝のリスクが高いです。数日間の絶食によって発症する危険があります。猫の脂肪肝は背景には膵炎があることが多く、膵炎+脂肪肝の状況は非常に予後が悪いです。どのような原因であっても、太っている猫の食欲が急に落ちた場合は迅速な治療が必要です。減量も急激なものは危険です。

犬の急性膵炎

犬では肥満は急性膵炎の危険因子です。痩せている犬で急性膵炎が起こることも、もちろんありますが、肥満による高脂血症を持っている犬と、そうでない犬の急性膵炎の発症率には有意差が出ています。詳しいメカニズムは、まだ、分かっていません。

次回に続きます。


No.32 肥満(Obesity)

動物の肥満に対する認識も年々高まりつつあります。人の話を当てはめがちなのですが、違いもあります。

肥満の定義は『体脂肪が過剰に蓄積した状態』です。研究結果によりますが、日本の25~30%の犬猫が肥満だと見積もられています。肥満は加齢によって増加し、多くは5~7歳以上で肥満になる傾向があります。性別では雄より雌の方が太りやすく、去勢、不妊手術の影響もあります。犬種別では、ラブラドール・レトリーバー、ダックスフント、チワワ、プードル、コッカー・スパニエル、シェルティー、キャバリア、ビーグルなどで肥満が多く、ジャーマン・シェパード、ヨークシャー・テリア、グレーハウンド、ドーベルマン、ブル・テリアなどで少ないとされていますが、飼育環境が多大に影響するのは言うまでもありません。

原因は摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることで、症候性肥満と原発性肥満とに分けられます。なんらかの疾患が背景にあり、その症状の1つとして肥満になるのが症候性肥満です。よくある原因として、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症などの内分泌・代謝性の疾患があります。胆嚢の働きが悪くなり脂質の排泄がうまく出来なくなると、肥満しやすい体質になります。また、ステロイド剤などの薬剤によって肥満になる場合もあります。原発性肥満はこれら以外のもの全てで、遺伝因子と環境因子の複雑な相互作用によって生じます。

エネルギー制限食が犬の寿命に及ぼす効果について、10年以上の年月をかけた実験があります。48頭のラブラドール・レトリーバーを2群に分け、一方は自由採食、一方はエネルギー制限群(25%減)として、ともに終生飼育したとき、平均寿命が自由採食群では11.2年(最長12.9年)、エネルギー制限群では13年(最長14年)だったそうです。この差をどう考えるかは人それぞれだとは思いますが、大型犬の約2年の寿命の差は、人に置き換えると10年くらいになります。いずれにしても、いつも、お腹いっぱい食べるというのは、よろしくない様ですね。

次回は肥満が原因で生じる主な疾患についてです。


No.31 膝蓋骨脱臼

犬に非常に多い膝蓋骨脱臼についてです(猫でも稀に見られます)。膝のお皿のことを膝蓋骨(しつがいこつ)といいます。大腿骨の端にある膝蓋骨を受ける部分を滑車溝(かっしゃこう)といいます。

膝蓋骨脱臼とは、滑車溝から膝蓋骨が変位した状態を言います。平たく言えば、膝のお皿が外れることです。原因によって、外傷性と先天性に分類されます。内方に変位した場合を『膝蓋骨内方脱臼(MPL)』と言い小型犬に多く見られます。外側に変位した場合は『膝蓋骨外側脱臼(LPL)』と言い大型犬に多いです。重症になると、内にも外にも脱臼するようになることもあります。

外傷性膝蓋骨脱臼の原因は、交通事故や咬傷などの強い外的圧力によって、膝周辺の組織が損傷を受けることです。先天性膝蓋骨脱臼の原因は、滑車溝の形成不全、大腿四頭筋の変位、頸骨粗面(膝のお皿の靭帯が脛の骨にくっつてる部分)の変位などの構造的異常が考えられていますが、決定的な原因は解明されていません。膝蓋骨脱臼の原因は、ほとんどはこちらの先天性のものです。

症状は破行(正常な歩行が出来ない状態)です。ケンケンをする、膝を痛がる、膝を使わないで歩くなどですが、軽症の場合は無症状のこともあります。重症度の判定にはSingletonの分類が代表的な分類法です。

Singletonの分類

グレード1:膝蓋骨は手で押すと脱臼するが、手を離せば正常位にもどる。

グレード2:膝蓋骨は膝を屈曲するか手で押せば脱臼し、膝を伸展するか手で押せば整復される。

グレード3:膝蓋骨は常時脱臼したまま、手で押せば整復、手を離せば再脱臼する。

ゲレード4:膝蓋骨は常時脱臼し、手で押しても整復されない。

内科的な治療は、痛みがあれば非ステロイド系の鎮痛剤(NSAIDs)やレーザー、ホメオパシーなども有効な場合があります。内科的な治療は、グレード1~グレード2の比較的症状が軽い場合に行われます。

グレード2で症状が進んで来てしまった場合、グレード3~グレード4については、外科的な治療が推奨されます。手術は症例に応じて色々な術式を合わせて行いますが、中心になるのは、滑車溝形成術(膝の溝を掘る)、頸骨粗面転移術(お皿の靭帯が頸にくっついている部分をずらす)、内側広筋解放術(内方脱臼の時、大腿部の内側の筋肉を切る)、外側大腿膝蓋靭帯筋膜の縫縮術(内方脱臼の時、大腿骨の外側の筋膜を締める)も考慮します。

また、幼年期にO脚が激しい犬は、屈伸運動(ヒンズースクワット、I-Z運動などとも呼びます)により、膝蓋骨脱臼を予防出来る場合があります。


No.30 心臓疾患時の徴候2

失神(意識喪失)

血液の循環不全により、一時的に脳血流量が減ると失神します。よく、てんかんと間違われます。てんかんはいきなりバタッと倒れます。心臓からの場合はフラフラッと倒れます。慢性の僧帽弁閉鎖不全症の小型犬に多いですが、各種の先天性の心奇形、様々な不整脈でも起こります。

失神のきっかけは、咳や興奮です。咳こむことや過度の興奮により交感神経が興奮し、それを抑えようと副交感神経が強く作用します。すると、心拍数が落ちて脳の血流量が減り失神します(神経調節製の失神)。

その他

麻痺:猫の心筋症(心筋の肥大・変性などによって引き起こされます。肥大型、拡張型、梗塞型などがあります)において、血栓により後肢が麻痺することがあります。この場合は24時間以内の治療が必要です。

体重減少:慢性の僧帽弁閉鎖不全症や拡張型の心筋症の場合によく見られます。とくに側頭筋(こめかみの筋肉)や腰背部の筋肉が顕著に減少します。

腹囲膨満:心臓の右側(右心系)、右心房、右心室といった場所のトラブルにより、肝臓の中の門脈の血圧が上昇し、腹水が溜まります。体重増加と間違えられている場合があります。

抹消の浮腫:各細胞の間にある液体(間質液)と血液中の細胞以外の液体成分(血漿)を細胞外液と呼びます。心不全が進むと、細胞外液にも還流障害が起こり、細胞外液はうっ滞し、抹消の浮腫をおこします。

粘膜の色:舌、歯肉、口腔、結膜、爪、パット、包皮、膣の粘膜や皮膚の薄い部分で毛細血管の豊富な部位が、動脈内の酸素が足りなくなると青黒く見えます。これをチアノーゼと言います。チアノーゼは大きくわけて、中心性のもの(肺でのGas交換が上手く行ってない、動静脈に短絡がある)、末梢性のもの(ショック、うっ血性心不全、血栓、寒さ)があります。

視力異常

高血圧が長期間持続すると眼底出血や網膜剥離が起こり、視力障害が起こります。猫で非常に多いです。

心疾患は様々なトラブルを起こします。上記の様な症状が認められたら、すぐに検査を受けて下さい。また、健康そうに見えていても、小型犬や猫では10歳を超えたら、中型犬、大型犬では8歳を超えたら、半年~1年に1度のチェックをお勧めします。


No.29 心臓疾患時の徴候1

犬も猫も、心臓のトラブルは思いのほか多いものです。心疾患時に見られる症状についてご説明します。

倦怠感、運動不耐

簡単に言えば『元気がない』ことです。もちろん、心疾患でなくても、多くの病気で元気がなくなります。心疾患で起こる場合は、心臓からの血液の拍出量低下に伴い、各臓器や組織の代謝に必要な酸素が供給出来なることが原因です。

もちろん、咳も、心疾患時のみに見られるわけではありませんが、主に心臓の左側(左心系)、左心房、左心室といった場所に問題がある場合に咳が出ます。高齢の犬に多い僧帽弁閉鎖不全症では左心房が拡大します。拡大した左心房が左気管支を圧迫刺激することにより咳が出ます(このタイプは、治療しても咳が止まり辛いです)。また、左心系のトラブルにより肺の血圧が上がり(肺うっ血)、これがひどくなると肺に水が溜まります(肺水腫)。これらの場合も咳が出ます。

一般的には、夜間に咳が始まる場合が多いです。これは、心臓が昼間は交感神経優位で動いていて、夜は副交感神経(迷走神経)優位で動くからだと言われています。交感神経と副交感神経を自律神経と言います。自律神経は自分の意思で動かしていない神経のことです。心臓の他には、肺、気管支、胃腸や肝臓、胆嚢、生殖器などにも分布しています。心臓では、交感神経が主に促進系を、副交感神経が主に抑制系を司っています。つまり、夜の方が心拍数が、ゆっくりになります。心臓はゆっくりの方が同じリズムを続けるのが不得手だと言われています(不整脈なども夜の方が出現しやすいです)また、前述のように、気管支にも自律神経があり、やはり、夜は副交感神経が優位です。気管支は副交感神経が優位だと収縮しやすくなります。気管支が収縮すると咳は出やすくなります。このようなメカニズムで、副交感神経優位の時間帯である夜の方が咳は出やすくなります。

また、心臓の話ではありませんが、猫の咳はアレルギー性の喘息で起こっていることが非常に多くあります。

呼吸困難

心疾患により、肺水腫が生じたり、血液の循環が悪くなって、胸に水が溜まったり(胸水)、お腹に水が溜まったり(腹水、後述します)すると、だんだん呼吸困難の状態になって行きます。パンティングとも言います。重度になると、寝ているよりも座っている方が呼吸が楽なので(横になると、片側の肺が圧迫されるため)、お座りの状態を続け(犬座姿勢)、眠れません。

高齢猫の場合、甲状腺機能亢進症でもパンティングが見られることがあります。

次回に続きます。