No.171 ミネラル(Mineral)

ミネラルは無機質ともいい、骨や歯などの硬組織の形成や、細胞内外液の主要電解質、神経の伝達などの生理機能の調節を行います。ミネラルもビタミン同様、生体のエネルギー源にはなりませんが、体内のさまざまな酵素反応の活性化において重要な働きを担っています。

ミネラルにも必須ミネラルがあり、現在24種類あります。必須ミネラルは、多量ミネラルと微量ミネラルに分類され、多量ミネラルはカルシウムCa、リンP、カリウムK、ナトリウムNa、塩素Cl、イオウS、マグネシウムMgがあり、微量ミネラルは、鉄Fe、亜鉛Zn、銅Cu、モリブデンMo、セレンSe、ヨウ素I、マンガンMn、コバルトCo、クロムC、ヒ素As、鉛Pb、ニッケルNi、ケイ素Si、バナジウムV、フッ素F、スズSn、リチウムLiがあります。

ミネラルの適正量はその範囲が狭く、また相互に影響し合う特性を持つために摂取バランスが重要です。経口摂取されたミネラルは、小腸、大腸から吸収されます。体内で最も多く存在するミネラルはカルシウムで次はリンです。犬と猫のカルシウムとリンのバランスは、カルシウム1~2:リン1とされています。

良質なペットフードを主食としている場合は、ミネラルは十分に含まれているので、基本的にはサプリメントなどで補充する必要はありません。一方でミネラルの過不足はそれぞれの働きに影響を与えます。とくに小鳥や爬虫類ではカルシウム不足による、脚弱症や代謝性骨疾患が非常によくみられます。また、成体の犬猫、ウサギなどにカルシウムを与えすぎると結石の原因になります。ミネラルも過不足なく与えることが大事です。

ミネラル一覧表

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No.170 ビタミン(Vitamin)

ビタミンは微量で生理機能の調節を行う有機化合物です。脂溶性ビタミンA、D、E、Kと、水溶性ビタミンのB群、Cに分類されます。脂溶性ビタミンには油脂に溶ける性質があり肝臓に蓄積されます。そのため、脂溶性ビタミンの過剰摂取は中毒症状をおこします。ビタミンAは野菜や果物に含まれているイメージが強いですが、実際に含まれているのはβカロテンというビタミンAの前駆物質です。ビタミンAはバターや肝臓などの動物性食品のみに含まれています。食事から摂取したβカロテンは、犬やヒトでは肝臓でビタミンAに変換できますが、猫はできないため、動物性食品からビタミンAを摂取することが必要です。経口摂取されたビタミンは主に小腸から吸収されます。

水溶性ビタミンは、水に溶けるので過剰な分は尿中に排泄されます。そのため、過剰摂取となるのは稀ですが、軟便、下痢をおこすことがあるといわれています。犬や猫ではヒトや猿などの霊長類、モルモットなどが体内合成できないビタミンCを体内合成することができます。そのため、サプリメントなどで過剰摂取するとシュウ酸カルシウムの尿石症を引き起こすことがあります。ビタミンB群は、エネルギー変換の補酵素、神経機能の調整、赤血球の構成成分などに重要な働きをしています。働きも多く水溶性で損失しやすいため、食事からの十分な摂取が必要です。また、生魚や甲殻類にはビタミンB1の吸収を阻害するチアミナーゼという酵素が含まれています。このようなものばかり食べていると、下痢、嘔吐などの消化器症状が生じ、重症化すると神経症状を呈し死に至ることがあります。猫にイカを与えると腰を抜かすなどと昔からいわれているのはこのためです。ローフード(生食)を行うときには注意が必要です。

βカロテン、ビタミンE、ビタミンCには抗酸化作用があり、活性酸素で細胞が障害を受けるのを防ぐ作用があります。疾病や肥満などで体内の活性酸素が増加する環境では、βカロテン、ビタミンE、ビタミンCの必要量が増加します。また、ビタミンの過不足は生体機能の調整に影響を与えます。例えば魚の不飽和脂肪酸は、活性酸素と結合して病気の引き金となる過酸化脂質を生成しやすいという性質がありますが、それを防止するのがビタミンEの抗酸化作用なので、ビタミンEの少ない食事を与えていると猫の黄色脂肪症が起こります。

ビタミンB群とビタミンKは腸内細菌によって体内合成が可能ですが、腸内環境が悪い場合や、抗生物質を使用している場合は注意が必要です。ビタミンDは紫外線を浴びることで体内合成できますが、犬猫では合成量が十分ではありません。また、犬はアミノ酸のトリプトファンから ナイアシン(ビタミンB3)を体内合成できますが、猫はできません、不足すると皮膚炎が起こることがあります。また、猫ではシアノコバラミン(ビタミンB12)の欠乏で嘔吐、下痢、食欲低下、活力低下、貧血などを引き起こすことが知られています。

ビタミン一覧表

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No.169 脂質(Lipid)

脂質とは、生体成分のうち、水には溶けずに、エタノールやベンゼンなどの有機溶媒に溶けるものの総称です。食事中に含まれる脂質は中性脂肪が多いことから脂肪と呼びます。脂肪はバターやラードのような動物性の食品から得られる動物性脂肪と、種子類やナッツ類から得られる植物性脂肪に分類され、1gあたり9kcalのエネルギー源になります。動物性脂肪は常温で固体、植物性脂肪は常温で液体です。炭素C、水素H、酸素Oで構成され、中性脂肪、コレステロール、リン脂質、糖脂質などに分類されます。

脂質は効率の良いエネルギー源であると同時に、体温調節、脂溶性ビタミンの運搬、生体膜の構築、ホルモンや胆汁の合成など生理機能の維持に重要です。食事から摂取された中性脂肪は、胃液、胆汁、膵液によってグリセオール脂肪酸に分解され小腸から吸収されると再び中性脂肪となり、リンパ管から血液に移行して全身へ送られます。

脂肪酸は飽和脂肪酸不飽和脂肪酸に分類されます。不飽和脂肪酸には炭素の二重結合があり、その数が1つのものを単価不飽和脂肪酸、2つ以上のものを多価不飽和脂肪酸といいます。さらに二重結合のある場所の違いにより、オメガ-6脂肪酸(n-6)、オメガ-3脂肪酸(n-3)に分類されます。

犬猫、ヒトは二重結合が2つ以上ある脂肪酸を体内合成できないので、オメガ-6脂肪酸とオメガ-3脂肪酸は必須脂肪酸となります。犬とヒトの必須脂肪酸はリノール酸(n-6系)とα-リノレン酸(n-3系)です。リノール酸はコーンやひまわり油などの植物油に多く含まれ、体内でγ-リノレン酸、さらにアラキドン酸に変換されます。猫はリノール酸からアラキドン酸を体内合成できないため、アラキドン酸も必須脂肪酸となります。アラキドン酸は動物性油脂にしか含まれません。オメガ-6脂肪酸は、繁殖や皮膚、被毛の健康に重要ですが、アラキドン酸はエイコサノイド(生理活性物質)を産生するため、過剰摂取は皮膚の炎症につながる可能性があります。

α-リノレン酸は亜麻仁油に多く含まれ、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)に変換されます。EPAやDHAはニシン、サケ、サバなどの魚油に多く含まれており、抗酸化作用、抗炎症作用、抗癌作用などが注目されています。

脂肪の過剰摂取は、下痢、肥満、膵臓疾患、肝臓疾患の原因となり、不足は、成長阻害、皮膚障害(被毛の劣化、脂漏症)、外耳炎などの原因となります。

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No.168 タンパク質の「質」

生命活動に重要な多くの働きを持つタンパク質は、その質を評価する方法として「アミノ酸スコア」「生物値」が使われます。アミノ酸スコアは必須アミノ酸のバランスを、生物価は窒素の体内利用率をそれぞれ100を最高とした数字で表しています。

食品に含まれている必須アミノ酸がどれくらい満たされているかでアミノ酸スコアは算出されます。タンパク質を構成する窒素1g あたりに占める各必須アミノ酸のmg 数で表され100に近い数値であるほど理想的です。また、アミノ酸スコアはそれぞれのバランスがとても重要です。

図にあるように、1つの必須アミノ酸を、1つの板にみたてた桶に例えて考えてみましょう。左の桶は、アミノ酸スコア100の場合を記しています。全てのアミノ酸が満たされていることで、桶の高さを作り、桶の中の水(タンパク質)がこぼれないようになっています。この状態のときに、体のなかでは十分なタンパク質が生成されると考えられています。
それに対して、右の桶はリジンが不足することにより、リジンの高さまでしか水(タンパク質)をためることができません。つまり、板の長さが1枚でも短いと(アミノ酸含有量が1つでも少ないと)それだけのタンパク質しか生成できないことを示します。

アミノ酸スコア表

 生物価=体内に留保できるタンパク質量/消化できるタンパク質量です。生物価の高いたんぱく質は動物の体内で利用されやすいことになります。タンパク質要求量が100の場合、生物価100であれば、そのまま100gを与えればよいことになります。しかし、生物価80だと125g、50だと200gが必要です。一般的に動物性タンパク質の生物価は高く、植物性たんぱく質のそれは低い傾向にあります。生物価の低い原材料のペットフードではタンパク質含有量を高くしなければなりません。

主なタンパク質の生物価

 アミノ酸スコアや生物価が高いときは、質の良いタンパク質と考えられ、良質のタンパク質と呼ばれます。良質のタンパク質は消化吸収率が高く、低いものより少ない量で必要量を得ることができます。そのため、排便量が減り、アンモニアの産生量が少なくなり、未消化物を減らして腸内環境の悪化を防ぐなどの利点があります。

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No.167 タンパク質(Protein)

食品中のタンパク質は、肉、魚、卵、乳製品に含まれる動物性タンパク質と、穀類や豆類(とくに大豆)に含まれる植物性タンパク質に分類され、1gあたり4kcalのエネルギー源となります。

炭素C、水素H、酸素O、窒素Nで構成され、アミノ基とカルボキシル基の両方を持つ有機化合をアミノ酸と呼んでいます。タンパク質はアミノ酸の集合体で、アミノ酸同士の結合をペプチド結合といいます。

食事から取り込まれたタンパク質は、胃酸に含まれるペプシンと十二指腸に分泌される膵液に含まれるトリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、カルボキシペプチターゼ、腸液に含まれるアミノペプチターゼ、トリペプチダーゼの働きによって、ペプチド結合が切られアミノ酸に分解されます。そして小腸から吸収され血管に入り、門脈から肝臓に送られ、体タンパク質(筋肉、各組織、血液、酵素、ホルモン、免疫抗体など、体を構成していくタンパク質)の成分となります。タンパク質は、生命システムで最も多様な機能を持つ栄養素なので、エネルギー源としてよりも、体を作るために十分に利用されることが重要です。

アミノ酸は20種類あり必須アミノ酸非必須アミノ酸に分類されます。必須アミノ酸は体内合成ができない、あるいは合成できても不十分であるため、必ず食事から摂取する必要があるアミノ酸で、ヒトで9種類(バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、ヒスチジン)、犬はアルギニンを加えた10種類、猫は犬と同様にアルギニンと、厳密にはアミノ酸には分類されませんがタウリン(タウリンはカルボキシル基を持たないため)を加えた11種類です。非必須アミノ酸、アルギニン(犬猫、小児では必須アミノ酸)、グリシン、アラニン、セリン、チロシン、システイン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸)は、体内合成ができます。

タンパク質に含まれる窒素は、生体にとって重要ですが、消化の過程で有毒物質であるアンモニアを産生します。そのため、肝臓にはオルニチン回路(尿素回路)という解毒システムがあり、アンモニアを尿素に変換して尿中から対外へ排泄します。このオルニチン回路のためにアルギニンが必要です。犬猫では体内でのアルギニンの合成が不十分なので(とくに猫)、食事中のアルギニンが不足すると高アンモニア血症を生じ、死に至ることもあります。

また、厳密にはアミノ酸には分類されないタウリンですが、猫の健康にとっては非常に重要です。タウリンは、肉、卵、魚などの動物性たんぱく質にのみ存在し、穀類や野菜には含まれません。ほとんどの哺乳類で、必須アミノ酸のメチオニンと非必須アミノ酸のシステインから合成できますが、猫は体内のタウリン合成が微量であるため、食事から十分の量のタウリンが摂取できないと、心筋や網膜のトラブルが起こります。

タンパク質の要求量は、肉食性が高い動物ほど高くなるため、ヒトより犬、犬より猫の方が高くなっています。タンパク質の過剰摂取は、肥満、腎疾患、肝臓疾患などの原因になります。また、不足すると、成長不良、食欲不振、貧血、体毛の劣化、体重減少の原因となります。品種、年齢、ライフスタイル、健康状態などによっても異なるため、過不足なく食事管理をすることが重要です。

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No.166 炭水化物(Cabohydrate)

炭水化物は糖質食物繊維からなり、糖質は生体のエネルギー源に、食物繊維は腸管の健康に役立ちます。食品中には、お米や小麦などの穀類や、じゃがいも、さつまいもなどといった芋類、野菜類や果物類に多く含まれます。1gあたり4kcalのエネルギー源となります。

炭水化物は炭素C、水素H、酸素Oで構成され、基本分子である単糖(グルコース、ガラクトース、フルクトース)の結合数により、単糖類、少糖類、多糖類に分類されます。とくに単糖類の中のグルコースは細胞のエネルギー源であり、血糖値のコントロールにおいても重要な役目をはたしています。ヒトの低糖質ダイエットが効果的なのは、血糖値の上昇を抑える事ができ、体内に蓄積された脂肪がエネルギーとして消費されやすくなるからですが、急激に糖質を減らすと、疲労の蓄積、脳の栄養不足、肝機能の低下、酷くなるとケトアシドーシスという危険な状態になってしまう場合があるので注意が必要です。

食物から体内に取り込まれた炭水化物は、膵液に含まれるアミラーゼによって単糖に分解され、小腸から吸収され小腸の血管から門脈を通り肝臓に運ばれ、細胞が利用するエネルギーを産生します。また、多糖類には、犬猫、ヒトが消化することができるでんぷんグリコーゲンと、消化できない食物繊維があります。でんぷんは植物の貯蔵エネルギーで、グリコーゲンは動物の貯蔵エネルギーです。グルコースは肝臓や筋肉にグリコーゲンとして貯蔵され、必要に応じてグルコースに分解・利用されます。また、余剰なグルコースはさらに脂肪組織に貯蔵されます。脳神経系、赤血球はグルコースのみをエネルギー源としています。そのため、糖質からのエネルギー供給は重要です。糖質の過剰は、肥満、糖尿病、肝臓疾患を引き起こします。また、不足すると、低血糖や組織喪失を生じます。

食物繊維は水溶性食物繊維不溶性食物繊維に分類されます。食物繊維は、犬猫、ヒトの消化酵素では消化できないため大腸に移行し腸管に影響を与えます。水溶性食物繊維は、熟した果物、海藻類などに多く含まれ、水を吸ってゲル状になり、満腹感や血糖値のコントロールに役立ちます。また、発酵する性質があり、短鎖脂肪酸(酢酸、酪酸、プロピオン酸)を産生し、腸の粘膜の再生を促し腸内環境を整えます。胆汁酸やコレステロールを吸着して、便中に排泄させる作用もあります。不溶性食物繊維は、にんじん、ごぼう、ひじき、キノコ、ごまなどに多く含まれ、消化管の蠕動運動を刺激するので、犬やヒトでは排便の促進、便の形成、有害物質の排泄に役立ちます。どちらの食物繊維も重要ですが、ペットフードには適度に発酵する食物繊維が便利なので、一般的には甜菜(サトウダイコン)に含まれるビートパルプやシュウ酸の量が少ないチコリーパルプ(シュウ酸は尿石の原因になることがあります)、セルロースが配合されています。一般的には食物繊維の過剰は、軟便、下痢、栄養吸収障害、鼓腸などを起こし、不足は便秘や大腸障害を起こします。とくに猫では不溶性食物繊維の取りすぎは便秘の主な原因の1つです。

猫はもともと便秘になりやすい動物です。現在は水溶性食物繊維サイリウムの入った『消化器サポート』というキャットフードがあり、便秘や糖尿病の猫に使われています。消化器サポートは犬用もあります。下痢や嘔吐の時にも良いフードです。

猫の消化器サポート

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No.165 水(Water)

今回から六大栄養素についてのお話です。炭水化物、タンパク質、脂肪のことを三大栄養素といい、これにビタミン、ミネラルを加えたものを5大栄養素、水を加えると六大栄養素です。最初は1番大切な水からです。

水は生体にとって最も重要な栄養素であり、全体重の約60%、脂肪を除いた体重の約70%を占めます。また、血液・リンパ液・細胞中の主成分であり、栄養素を運んだり体温をコントロールする他、消化や化学反応の溶媒など、多くの役割があります。動物は10%程度の脱水でも死に至ることがあります。

体外への水分の排泄は尿によるものがほとんどです。大便からの排出は大腸での水分の再吸収に問題がなければそれほど多くはありません。その他には皮膚や呼吸からの不感蒸泄があります。毛が多く体表の汗腺が少ない動物はヒトのように発汗で体温調節ができないため、気温や湿度が高い季節では呼吸が早くなり、水分の損失量が増加します。

犬や猫の水分摂取源は、飲料水、食事に含まれる水分、代謝水(体内で栄養素がエネルギーになる際に生成される水)です。しかし、代謝水は総摂取水の5~10%に過ぎないため、実際には、飲料水と食事から、つまり口からの摂取が重要です。一般的に必要な1日当たりの水分量はDER(1日あたりエネルギー要求量→No41)にccを付けた量が目安です。理想体重(BCS3→No40)の5kgの犬だと約367cc、10kgの犬だと約618ccです。ドライフードのみの食事であればこの量が必要ですが、ウェットフードのみの場合はウェットフードの80%は水分のため、BCS3の5kgの犬だと約73cc、10kgの犬だと約124ccと、かなり少なくなります。また、犬や猫は必要な水分量の70%程度が確保できていれば喉の渇きを覚えないといわれていますので、いつの間にか水分が足りなくなっていることもあります。24時間、いつでも新鮮な水が飲める環境にしておくことは、とても重要です。

また、猫では水分の体内再利用効率が高く、自発的水分摂取量が少ない場合が多いです。そのため尿が濃縮しやすく尿石症などのリスクが増大します。猫に水分摂取を促す工夫としては、猫はもともとは狩猟動物であるので、動くものに反応し、獲物をすぐに食べるので温度や風味が刺激になります。下記のような方法があります。
1.動き:噴水式の給水器や流れる給水器を使う
2.温度:ぬるま湯にする
3.風味:缶詰の肉、肉のゆで汁などを水に加える

今でもミネラルウォーターを動物に与えてはいけないと書いてある一般書やサイトがありますが、たしかにカルシウムやマグネシウムの含量の多い硬水を長く使用すれば結石の原因となるかもしれませんが、軟水なら構いません。

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No.164 脳-腸-微生物相関

前回の脳腸相関からの続きです。

現在、数兆の腸内細菌の理解が進むにつれ、脳-腸-微生物相関という概念が生まれてきました。受胎時には腸管内は無菌であり、生まれるときに産道を通るときから細菌が繁殖し始めます。その後、親や兄弟をはじめ多くの人と触れ合う事で細菌が育っていきます。乳幼児期にそのような多くの細菌に触れるという事は腸内細菌の発達にきわめて重要です。実際、最近のヒトの研究では、幼少期の腸内細菌の発達が大人になってからのメンタルヘルスに重要な働きをすることを示唆しています。

犬猫での研究はまだ少ないですが、McMaster大学のコリンズ教授らは、マウスの腸を他のマウスと交換する実験を行いました。彼らは臆病な性格のマウスの腸と社交的な性格のマウスの腸を手術で入れ替えたのです。するとその結果、それらのマウスの性格もまったく入れ替わりました。臆病なマウスは外交的に、その一方で外交的なマウスは臆病になりました。これは腸内細菌が態度や行動を決めている事を示唆しています。

消化管の神経伝達物質の1つとして、GAVA(ギャバ、γ-アミノ酪酸gamma-aminobutylic acid)があります。GAVA は哺乳動物の脳から発見され、その後、消化管においても神経伝達物質として機能していて、動植物界に広く分布していることがわかっています。中枢神経系や腎臓、膵島細胞でグルタミン酸から合成されますが、腸内細菌の中にもGAVA産生能力を持つ菌がいます(GAVAの受容体は脳だけでなく腸にも存在します)。高等動物においては、抑制系の神経伝達物質として、脳が興奮したときのブレーキの役割をしています。GAVAが不足すると興奮系の神経伝達物質が過剰に分泌されるのを抑えきれなくなり、緊張が続いてしまいます。不安なマウスに乳酸菌を与えた実験では、不安のレベルが下がり、ストレスホルモンが減り、GABAの受容体が増加しました。腸内環境改善は確かに脳機能に影響を与えると言えそうです。

その他にも、反芻動物の乳に含まれる主要なタンパク質であるカゼインを消化管中でトリプシン加水分解したα-カソゼピン(加水分解ミルクプロテイン)は、GAVA受容体に結合することで、気分を落ち着け不安を取り除きます。また、α-カソゼピンの作用はGAVA受容体だけでなく、セロトニン受容体やドパミン受容体にも作用しているといわれています。
セロトニンは消化管粘膜に90%、血小板内に8%、脳に2%存在し、体内にアミノ酸の1種であるトリプトファンを取り入れることによって合成されます。トリプトファンは大豆製品、乳製品などに多く含まれます。不安の緩和および幸福感の上昇の作用があります。
ドパミンは中枢神経に存在するカテコールアミンの一種です。気持ちを緊張させたり興奮させたりする神経伝達物質です。統合失調症の陽性症状に脳内のドパミンの過剰が関与しているのではないかと考えられています。脳にとって「報酬」のシグナルと考えられています。

このように動物の腸と脳は双方向の情報伝達を行っていて、動物と細菌が共通する伝達物質を産生しています。これらは、動物が個体だけで生きているわけでないという事実を強く認識させます。食事は、動物本体だけでなくお腹の中の細菌も一緒に養っています。これを『脳-腸-微生物相関』といいます。

実際の臨床応用としては、腸内環境を整えることにより、イライラや鬱の治療、ダイエット、アンチエイジングなどにも利用されています。GAVAを産生できる乳酸菌を利用してストレスの軽減を目的とした飲料や、α-カソゼピンの入ったサプリメントやキャットフードも発売されています。

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No.163 脳腸相関(Brain-gut interaction)

腸は非常に原始的で基本的な機関です。発生学的にも脳より先に出現します。また、体内に侵入した外敵やストレスに対して、脳が考えるより先に反応する腸は「第二の脳」と呼ばれ、独自の神経ネットワークを持っています(腸は脳に次いで神経細胞が多いです)。

以前から脳と腸の関係については議論がありましたが、その連絡はあくまでも、脳から腸への一方通行と考えられてきました。しかし、今ではこの道は両側通行であることがわかってきました(図参照)。

自律神経系の一部をなす腸管神経系は、食道から肛門までの消化管壁に、消化管の蠕動運動に関与している筋層間神経叢(アウエルバッハ神経叢)と、粘膜上皮における電解質や水の分泌制御に関与している粘膜下神経叢(マイスナー神経叢)からなる神経ネットワークを構築しています。

これらは、腸神経系とも呼ばれ自律神経からの調節を受けますが、腸管神経系自体が消化管を支配する完全な反射回路を持っているので、脳や脊髄からの指令がなくても独立して基本的な諸機能を果たすことができます。

試験の前にお腹が痛くなったり、大勢の前で発表するときに緊張してトイレに駆け込んだり、お腹が空いているのに極度の緊張で食欲が出ないなど、経験上、私たちは精神的な状態とお腹の調子に関係があることに気づいています。これは、脳が自律神経を介して腸に刺激を与えているからです。逆に、腸に病原体が侵入することによって脳で不安感が増加するという報告もあります。また、脳で感じる食欲にも腸から放出されるホルモンが関係しているといわれています。

このように脳と腸は双方向に情報伝達を行って作用を及ぼし合っています。これを『脳腸相関』と呼んでいます。最近では、病原体だけでなく、腸内に常在する細菌も脳の発達や機能に影響を及ぼしているという研究も注目されていて、『脳-腸-微生物相関』という言葉が提唱されています。

次回はこの『脳-腸-微生物相関』の話です。

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No.162 家庭での心肺蘇生 (Cardio Pulmonary Resuscitation:CPR)

考えたくないことですが、ご自分の大事な動物の心肺停止(CPA)をご自宅で見つけることがあるかもしれません。死後硬直が始まっていて体が固まってしまっていたら、いくら処置をほどこしても蘇生は無理ですが、まだ温かかったら、確立は低いですがチャンスはあります。今回はその時にご自宅で可能な心肺蘇生(CPR)の方法です。

最初に、意識があるかないか、呼吸をしているかどうか、股動脈で脈があるかないかを確認します。脈・意識・呼吸がなければCPR開始です。まず、目指すのは自己心拍再開(ROSK)です。

家庭でのCPR手順

1.家族全員を呼びながら舌を引っ張る
1人でも多くの人が必要です。胸部圧迫をする人、人工呼吸をする人、病院に連絡する人、タオルなどを用意する人、車の手配をする人など、人数が多いほどCPRは上手く進みます。大声でご家族を集めてください。また、舌を引っ張ると気道が開き、呼吸が再開するかもしれません。

2.胸部圧迫(心臓マッサージ):最重要
動物の向きは右下左下どちらでも良いので(イングリッシュ・ブルドッグだけは仰向け)、背側から基本ですが腹側からでも良いので胸部圧迫を始めて下さい。(動画参照)
胸郭の1/3-1/2の深さで圧迫し胸郭復帰(リコイル)という動作を1分間に100-120回、休まないことが重要です。10秒休むと蘇生率5%低下、休む前の状態に戻すまで45秒必要といわれています。しっかりやると結構きつい処置です。基本は2分で交代といわれています。
胸部圧迫では、全身灌流の30%の維持、換気(肺血流のサポート)、冠血流の改善(リコイル時)の効果を期待します。

3.人工呼吸
1分間に10回くらいの割合で、動物の頚を伸ばして鼻から大きく人工呼吸して下さい(マウスto ノーズ)。この時、胸部圧迫とバッティングしても構いません。
また、肺水腫などの場合は、鼻や口から多量の薄い血液のような液体が出てきます。この場合は動物を逆さまにして、液体を出してください。
また、1人しかいない場合はとても厳しいのですが、30回胸部圧迫→人工呼吸(鼻先から)2回を繰り返してください。

4.除細動器(AED)
もし、近くにAEDがあれば動物にも使用可能です。基本は1回目が3J/kg、2回目は5J/kgです。この数値を参考にしてやってみてください。除細動は、心室細動(VF)、無脈性心室頻拍(VT)の時、いわゆる心臓が暴れている時に効果的です。

5.病院へ
病院と連絡が付いたら、可能な限りの胸部圧迫をしながら向かってください。この時、くれぐれも交通事故に注意して下さい。胸部圧迫は休まない方が良いのですが、飼主さんが事故に合ってしまったら元も子もありません。人数が少ない場合は必ずタクシーなどを使ってください。

股動脈は普段から触る練習をしていてもよいかもしれません。奇跡的な場合は別として、統計上はCPRを10分行っても自己心拍が再開しない場合、蘇生は困難です。それ以上の胸部圧迫は遺体を傷つけることになるかもしれません。

当院でも可能な限りの緊急の受付はしておりますが、前述のようにCPRの成功は人数がいないと難しいです。深夜の救急はDVMsどうぶつ医療センター横浜もご活用下さい。

DVMsどうぶつ医療センター横浜
TEL 045-673-1289 http://www.yokohama-dvms.com/
行かれるときは必ず当院からの照会であることを告げてください。初診料が半額になり、次の日の引継ぎもスムーズです。

以下のリンクから動画をご覧頂けます。音と通信容量にお気をつけください。
心肺蘇生(CPR)の動画

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