No.15 学習その2古典的条件づけ

今回は『条件づけ(Conditioninn)』です。条件づけには『古典的条件づけ』『オペラント条件づけ』の2種類があります。

古典的条件づけはパブロフの条件づけとも呼ばれます。聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。ベルを鳴らす→食事を与える→唾液が出る。という反応が、ベルを鳴らすと食事がなくても唾液が出るという反応になったという実験は有名です(偶然の産物なのですが)。身近な例では、梅干の写真を見た→唾液が出てきた。好きな人と同じ匂いの香水を嗅いだ→ドキドキした。天気が悪くなってきた→雷恐怖症の犬がパンティングしだした。などがあります。多くの問題行動の原因となる反応です。

では、古典的条件づけは実際にはどのように使うのでしょうか。例えば、雨が降って雷が鳴ると涎を垂らし興奮する。というようなワンちゃんの場合。雨降り→雷→恐怖という反応を、雨が降ったら→楽しい遊び時間+おやつというような条件づけを行い、雨降りは楽しい時間への合図とすることによって恐怖症を克服させます。また、前回の脱感作と組み合わせて、男の人が嫌いなワンちゃんを治療しようとするときに、初日は15mぐらいの距離からおやつを数回投げてもらいます。次の日は14m、その次の日は13m、12m…0mとだんだん距離を縮めて行きます。距離を縮めるのは脱感作。おやつを与えて、男の人→怖いを、男の人→おやつ→嬉しいとするのが、古典的条件づけです。前回も申し上げましたが、複数の方法を組み合わせることによって効果が上がります。また、無駄吠え→ダメだよ。などと声をかける→かまってもらえる→嬉しいという風に条件づけされてしまっている場合は、無駄吠え→無視、ケージに入れてしまう→吠えてもしょうがない→無駄吠えをやめる。

というように条件づけをするのもひとつの方法です。

条件づけによって形成された反応が消失または源弱することを『消去(Extinction)』と言います。上記の例では、雷が怖くなくなる、男の人が怖くなくなる、無駄吠えをしなくなる。というのが消去です。注意しなければならないのは、消去の前に、必ずバーストが認められることです。無駄吠え→無視、ケージに入れてしまう→吠えてもしょうがない→無駄吠えをやめる。という条件づけがきちんと完了する前に、無駄吠えは必ず一度ひどくなります。このときに、飼い主さんが負けてしまって、声をかけたり、構ってしまうと、ワンちゃんは、無駄吠え→無視→ひどくなった無駄吠え→やっと構ってもらえた。と条件づけされ、今まで以上に頑張って吠えるようになります。ご自宅での問題行動の治療の上手く行かない理由の多くがここにあります。

ややこしいでしょうが、頑張って理解していただくと、動物と接するときに楽しみが1つ増えると思います。次回はオペラント条件づけです。

今回の内容は、入交眞巳先生(北里大学)の横浜動物医療センターでの講義、高倉はるか先生(株式会社トリーツ)のリンゲルゼミでの講義を参考にしております。