アナフィラキシーとは、アレルゲンの体内への摂取によって免疫系が過剰に刺激され、それに伴うさまざまな症状がみられる免疫反応の一種です。食べる、吸い込む、触れる、刺されることなどによって、アレルゲンが体内に入ります。アナフィラキシーは、アレルギー症状の中でも、アレルゲンの摂取直後から数秒~数十分以内という短時間のうちに全身性に、そして急速にアレルギー反応に伴う諸症状が発症する状態を指します。
アナフィラキシーは、発症が稀ではあるものの、通常のアレルギー反応とは症状の悪化の速度が異なりとても早く進行するのが特徴です。また、症状が急速に重症化することも少なくないため、発症後は速やかに、適切に対応しないと命にかかわる場合もあります。
発症の要因としては通常のアレルギーと同様に、症状を起こすアレルゲンを体内に取り込むことが発症のきっかけになり、食べ物、環境中の微細な粒子、投薬やワクチン接種、毒のある昆虫による刺傷、毒のあるヘビによる咬傷など、生活環境の中のさまざまなものが発症の要因になりますが、正確に特定できない場合も多いです。
主な症状は、顔の腫れ、気道の腫れ、膨疹(蕁麻疹)、血圧低下などが代表的です。嘔吐や下痢などの消化器の症状が見られることも稀にありますが、実際には急速な皮膚や粘膜の症状、血圧の変化が起こりやすい傾向があります。
顔の腫れ:顔の腫れの症状は、顔の皮膚全体が腫れて厚みが急速に増し、輪郭や顔貌が全く変わってしまうほど大きな変化がみられます。瞼の強い腫れで眼をきちんと開けない様子になったり、鼻先(マズル)や上唇が腫れあがって別の動物に見えるくらいに顔の形が変わった様に見える場合もあります。症状の進行は、顔全体がごく短時間で急速に腫れる場合もあるものの、まず瞼や唇など、粘膜の境目に近い部位から部分的に症状が出始め、時間の経過とともに徐々に顔全体に広がる経過をたどることが多いです。とくに最初のタイミングでは、瞼の症状が目立って見えることがよくあります。
気道の腫れ:気道の腫れは、外見からだとなかなか直接気づきにくい症状ですが、気道内の粘膜の腫れに伴って空気の通る部分が狭くなるため、呼吸のしにくさが強まる傾向があります。パンティングやゼイゼイするような喉鳴り、咳やえづく様子が見られることもあり、さらに悪化すると呼吸困難となります。
膨疹(蕁麻疹):膨疹(蕁麻疹)は、通常の湿疹とは異なりきれいな円形ではなく、ゆがんだ水玉模様のような赤い斑点状の盛り上がりが皮膚に広がるようにあらわれる傾向があります。お腹などの皮膚の薄い部位に目立って見られることもあります。被毛に隠れて見つけにくい場合もありますが、通常は痒みや違和感を伴う場合が多いです。
血圧低下:血圧低下の症状が起こった際には、急激にぐったりし、舌や口の中の粘膜の色が白っぽく変化し、薄い紫色になるなどの症状が見られます。アナフィラキシーの諸症状の中でも、とくに血圧低下が見られた場合は、その後急激にショック症状に至る場合がほとんどですのでより迅速な対応や手当が必要になります。
アナフィラキシーの症状が見られた際には、その後続けて、アナフィラキシーショックという状態になる場合があります。これは先述のアナフィラキシーの諸症状が進行し、ぐったりして動けない(虚脱)、舌が白くなる(循環不全)、脈が触れなくなる(血圧低下)、呼吸が正常にできなくなる(呼吸不全)といったショック症状が起こる状態です。このような状態になると、適切な治療をしたとしても命にかかわる場合があります。アナフィラキシーを疑う症状が見られたら、まずは速やかに適切な手当てを受け、さらなる症状の悪化を防ぐ対応がとても重要になります。
アナフィラキシーのマズルの腫れ
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