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No.475 開放骨折(複雑骨折)

解放骨折とは、骨折した骨が体の外に開放されている状態の骨折のことです。主に交通事故や転落事故によって四肢の骨や指の骨に起こります。皮膚を突き破って出てきてしまった骨が細菌感染などより汚染され、骨の治癒能力が低下し治療が複雑となることから複雑骨折とも呼ばれます。骨折治療のみならず、感染に対する治療も必要ですから、単純な骨折と異なり手術法の選択肢も少ないうえに難易度が高く、長期の治療(場合によっては年単位)が必要な場合が多いです。とくにGolden hourと呼ばれる受傷後6~8時間までの処置を外傷性ショックの治療と共にきちんと行う事がとても重要です。また、放っておくと敗血症や播種性血管内凝固症候群(DIC)などで命を落とします。

解放骨折は、外固定(ギブスや副木など)のみで治癒することは困難です。基本的にはプレーティング、ピンディング、創外固定などの内固定と外固定を組み合わせます。そして、何よりも感染のコントロールが重要です。

Golden hourに適切な処置が出来なかったり、手術を行っても感染のコントロールが上手くいかなかったりした場合は、残念ながら断脚が必要になります。断脚は悩ましい処置ですが、命を優先という事を考えると決断が必要な場合もあります。とくに、治癒能力が落ちている高齢動物やエキゾチックペットの骨折の場合では選択される事が多いです。動物は基本的に3本脚になっても上手に歩いてくれます。長い苦しみよりはQOLは断然に上です。


猫の解放骨折

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No.180 ロッキングプレート (Locking plate)


No.474 趾間膿胞(しかんのうほう)

趾間膿胞は趾間の感染症から生じます。皮膚深部の細菌感染により腫瘤が形成されます。軽度の感染から炎症が進行し、症状が進行すると疼痛が出て排膿します。

動物が患部を舐めたり咬んだりすることで悪化するので、患部を清潔に保つことは大変困難です。趾間に短い剛毛質の毛を持つ犬種、ダックスフンド、イングリッシュ・ブルドッグ、ラブラドール・レトリバー、シーズーなどによく起こりますが、どの犬種にも発生します。猫では稀です。

原因は、歩行時に毛包内に毛が逆に入り込むことが元になって、毛包の深部で炎症を起こしたり、散歩中に尖った植物の種などの異物が入り込んでしまい炎症を起こすといわれています。また、アトピーや犬の毛包虫症、真菌症、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、自己免疫疾患などが原因となっていることもあります。

内科的な治療は、舐めることを止めさせ細菌の二次感染を防止します。皮膚が治癒するまでの間はエリザベスカラーや包帯で舐める行為を防ぎます。抗生剤やステロイド剤による長期間の薬物療法も必要です。抗生物質が膿胞内に侵入するのは困難であるため8週間以上の抗生物質による治療が必要になることがあります。そのため外科的な切除が最も有効な治療です。小さいうちなら局所麻酔での切除も可能です。アトピーや毛包虫症、ホルモン疾患などの原因が関与する場合には、その治療も行います。趾間膿胞は同部位や他の部位で再発することもあります。

予防は、肉球の間や指の間を清潔に保つようにします。足の裏の毛をカットする。散歩の後に足先を拭く、足浴もオススメです。犬や猫は唯一肉球にだけ汗をかきますので、日常的にこまめに手入れをして細菌が繁殖しないようにすることが重要です。肥満傾向の場合は減量も効果的です。


趾間膿胞

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No.382 皮膚のしこり(結節)2
No.381 皮膚のしこり(結節)1
No.79 犬の副腎皮質機能亢進症(Cushing’s syndrome)
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No.473 ジャーキーの過剰摂取

ジャーキーの過剰摂取により犬や猫に腎疾患(ファンコーニ様症候群)が起こることが知られています。最初はアメリカからの報告でしたが日本でも確認されています。なぜかあまり報道されていませんが中国の工場で作られたものに多いとされています。大手メーカーでも中国の工場で生産されている製品に注意して下さい。袋の裏面まで見ないとわからない場合が多いです。

ファンコーニ症候群とは腎臓の近位尿細管障害により糖やアミノ酸、が尿中に排泄されてしまう状態を言います。遺伝性疾患(バセンジー)の他には何らかの腎障害を引き起こす物質の摂取や感染症が原因となります。初期には多飲多尿がみられますが、高血糖をともなわない尿糖が起こるため他に血液検査に異常がないことが多く、進行していくと体重減少や毛艶の悪さ、元気消失、食欲不振、嘔吐などの腎不全の症状が見られます。また、尿糖により膀胱炎などの尿路の感染症も起こりやすくなります。重症化しなければ、通常摂取を止めると2~3ヶ月で治癒しますが、重症になると死亡例も多くあります。

ジャーキーの過剰摂取に関しての腎障害の原因物質は明らかにされていませんが、おやつの与え過ぎには注意しましょう。また、とくに安い製品には注意して下さい。


大手メーカーの製品も生産地に注意です

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No.472 ヒトの薬で犬や猫にとって危険なもの
No.408 ニコチン中毒
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No301 慢性腎不全(CKD)の推奨される治療
No.300 慢性腎不全(CKD)のステージ分類
No.119 テフロン (Teflon)
No.9 犬、猫に与えてはいけない食品、薬


No.472 ヒトの薬で犬や猫にとって危険なもの

ヒトの薬やビタミン剤の中には、犬や猫にとって危険なものも多いです。ASPCA (米国動物虐待防止協会 中毒事故管理センター)が発表した危険ランクの高いものをご紹介します。

1.非ステロイド系抗炎症薬 (NSAIDs)
イブプロフェン、ナプロキセンなどで、症状は胃腸の潰瘍、猫は腎臓にもダメージを受けます。 少量でもとても危険です。約4.5キロの犬の場合4錠で深刻な腎臓障害がでるという報告があり、鎮痛、解熱剤などで、多くの市販薬に使用されています。有名な薬はエスタックイブ、コルゲンコーワなどです。

2.アセトアミノフェン (Acetaminophen)
犬は肝障害、服用量によっては赤血球がダメージを受けます。猫では赤血球にダメージを受け、酸素供給能力に支障をきたします。特に猫に影響が出やすく、効き目の強いタイプの錠剤1錠で致命傷となります。解熱鎮痛薬の1つで、発熱、寒け、頭痛などの症状を抑える解熱剤、鎮痛剤として用いられる薬物の主要な成分です。バファリン、ルル などにも入っているメジャーな鎮痛剤の成分です。

3.合成エフェドリン、偽エフェドリン、プソイドエフェドリン、シュードエフェドリン (Pseudoephedrine)
心拍の増加、血圧・体温の上昇を起こします。鼻詰まり緩和のための薬に入っています。花粉症対策のための薬などにも使用されている場合があります。

4.抗うつ剤、抗うつ薬 (Antidepressants)
嘔吐、無気力、高体温、血圧と心拍の増加、失見当、鳴く、震え、発作などを起こします。少量でも危険です。当院では1番多い中毒です。

5.ビタミンD誘導体 (Vitamin D derivatives)
嘔吐、食欲不振、腎不全のによる頻尿などが起こります。皮膚疾患の治療の1つである皮膚外用療法に用いられる医薬品です。

6.抗糖尿病薬 (Anti-diabetics)
血糖値の低下による発作が起こります。

7.メチルフェニデート 興奮剤 (覚醒剤Methylphenidate for ADHD)
ナルコレプシーや18歳未満の注意欠陥多動性障害(ADHD)の患者さんに対して使われるアンフェタミンに類似した中枢神経刺激薬です。心拍の増加、血圧・体温の上昇、発作、呼吸停止が起こります。

8.フルオロウラシル (Fluorouracil)
犬で、厳しい嘔吐、発作、心臓停止を起こします。フッ化ピリミジン系の代謝拮抗剤で、抗悪性腫瘍薬です。犬にとってはわずかでも危険です。

9.イソニアジド (Isoniazid)
犬で厳しい発作による死亡の恐れがあります。結核の予防や治療の第一選択薬である有機化合物で、とくに犬は代謝できないため危険です。

10.バクロフェン (Baclofen)
症状は、鳴く、発作、昏睡(死亡の恐れ)です。中枢神経系を弱める筋弛緩薬で、神経・細胞膜などに作用して筋肉の動きを弱めます。

7以下は、通常の生活ではまず無い事故でしょうが、市販薬の風邪薬、花粉症の薬、抗精神薬には十分に注意して下さい。万が一犬や猫が摂取してしまったら、様子を見ずにすぐに受診して下さい。


市販薬にも注意して下さい

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No.471 ウサギの子宮疾患

ウサギの子宮疾患は、子宮内膜炎、子宮水腫、子宮蓄膿症、子宮腺癌、子宮平滑筋肉腫、腺扁平上皮癌などがあります。不妊手術をしていない4~5歳以上で多く発症が見られます。ある程度進行しないと症状を見せないため、なかなか気が付きにくい疾患の一つです。

一番多い症状は血尿です。血尿は尿全体が赤くなったり、尿の中に血の塊がみられたり、鮮血が陰部から出てきたりと程度や状態は様々です。持続的に血尿がみられることは稀で、時々血尿になったり普通の尿になったりを繰り返すことが一般的です。また、初期には一過性のことも多く様子を見てしまいがちです。乳腺の腫れや腹部膨満などの症状が見られることもあります。重症になると元気や食欲がなくなってきます。

診断は超音波検査で行います。あまり大きくなってない子宮の場合は判断が難しい事もあります。また、レントゲン検査や血液検査も行い、他の病気との区別や重症度の判定を行います。

治療は、抗生剤や止血剤などで症状の改善がみられることもありますが、内科療法で完治させることは困難です。放置すると腹腔内出血や腹水貯留、播種性血管内凝固症候群(DIC)などを起こし、手遅れになってしまうこともありますので、なるべく早期に卵巣子宮摘出手術を行います。病気が進行し貧血や多臓器に癒着を起こしてしまうと手術のリスクが高くなります。確定診断には摘出した卵巣・子宮の病理診断が必要です。

予後は原因よって異なりますが、早期発見して手術・治療をして、悪性のものではなかった場合はほとんどの予後は良好です。また、若いうちに不妊手術しておくことで病気の予防に繋がります。肥満している場合には麻酔や手術のリスクが高くなるので、年齢とともに子宮の周囲にたくさんの脂肪を蓄える傾向があることや、年齢とともに他の病気にかかる確率も高くなることを考えると、不妊手術は、性成熟後の6ヵ月~1歳齢くらいがオススメです。

クリックすると手術時の写真が出ます。苦手な方は見ないで下さい。
ウサギの子宮の腫瘍

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No.286 不妊手術(Spay)
No.241 エキゾチックペットへの全身麻酔
No.144 播種性血管内凝固症候群 (DIC)


No.470 心臓腫瘍と心タンポナーデ

心臓腫瘍は、犬では血管肉腫や大動脈小体腫瘍が多く、猫では発生自体が稀ですがリンパ腫が多いとされています。いずれの腫瘍でも腫瘍による圧迫や腫瘍細胞の浸潤で正常な組織が減ることで心臓の働きが悪くなりますが、心タンポナーデという状態になり、急に元気や食欲がなくなってしまうことも少なくありません。心臓は心外膜という膜に包まれており、心タンポナーデではこの心外膜と心臓の間に急速に液体(多くの場合は腫瘍から出血した血液)が溜まり、心臓が十分に拡がることができなくなり、結果として血液を十分に送り出すことができなくなります。心タンポナーデは心臓腫瘍だけではなく、僧帽弁閉鎖不全症時の心臓破裂や明らかな原因の認められない特発性心膜液貯留など他の原因によっても起こります。

血管肉腫は、ジャーマンシェパード、ラブラドールレトリバーやゴールデンレトリバーなどの大型犬に多く発生し、心臓での好発部位は右心耳または右心房で、心膜腔側に突出して拡大するのが一般的ですが、右心房内腔へ突出したり、心基部など他の領域を巻き込みながら拡大することもあります。

大動脈小体腫瘍は、ブルドックやフレンチブルドックなどの短頭種での発生が多く、慢性的な低酸素との関連が指摘されています。比較的ゆっくり大きくなるので症状を示さないこともあり、多くは偶発的に発見される腫瘍です。大動脈小体は、大動脈起始部に存在する抹消性化学受容器の一種であり、動脈血液中の酸素分圧をモニタリングしています。その解剖学的特徴から健康診断などでは発見されにくい特性があります。

心臓腫瘍の症状は、心臓腫瘍による心臓への圧迫や腫瘍組織の浸潤で心臓の働きが悪くなると、疲れやすくなったり、むくんだり、お腹や胸に水が溜まったりします。心タンポナーデになると、急に動けなくなり、歯肉や舌などの色が薄く悪くなり、呼吸促迫、不活発、起立困難などがみられます。急速な低血圧で嘔吐する場合もあります。また、循環不全に陥り、失神、虚脱、呼吸困難となり突然死するケースもあります。

心臓腫瘍は完全切除が難しい場合が多く、腫瘍自体にもよりますが、多くの場合化学療法や代替医療の使用で緩和を目指します。また、働きに悪くなった心臓をアシストするための内服薬を使用する場合もあります。

心タンポナーデの状態では心膜を針で刺して心臓の圧迫の原因となっている液体を抜去します。そうすると一時的には心臓は圧迫が解除され働きは改善しますが、心臓腫瘍が原因の場合には繰り返し心タンポナーデを発症する事が多く、その際には手術で心臓を包んでいる心膜を切除することを検討します。心膜切除を実施する際には、腫瘍の一部を生検し、腫瘍の種類を特定することで予後の見通しの確認や治療法の検討に役立てることができます。一部の腫瘍では経過の長いものもありますが、一般的には心臓腫瘍の予後は良くありません。


心臓腫瘍の超音波

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No.179 血管肉腫 (Hemangiosarcoma)


No.469 水腎症

水腎症は、尿を腎臓から膀胱へと輸送する尿管の通りが悪くなり、腎臓内部に尿が溜まって膨らんでしまった状態です。

主症状としては、お腹が張って見えたり、血尿、頻尿、腹部や腰部の疼痛、食欲不振、発熱などがみられる場合もありますが、症状を示さない事も多いです。その他にも、多飲多尿、食欲不振、嘔吐、削痩、脱水などが見られることがあります。

水腎症には、先天性のものと後天性のものがあり、先天性の水腎症は、腎臓や尿管の奇形などによって起こります。後天性の水腎症で最も一般的な原因は尿路の閉塞で、結石や腫瘍、雌の場合は不妊手術の影響などによる腎臓や尿管の閉塞に関連したものが多くみられます。

治療としては、原因となっている疾患、腎不全を起こしているかどうかによって異なります。結石や腫瘤の摘出など、尿路の閉塞を取り除くための外科的な処置が必要となる場合もあります。片側性の水腎症で、腎臓に重度の感染や腫瘍があったり、腎臓が巨大化して他の臓器を圧迫していたりする場合などは腎摘出を検討します。腎不全の症状がある場合には、その治療を行います。

予防方法としては、定期的な健康診断で尿路閉塞の原因となる疾患を早期発見、早期治療することが重要です。特に腎結石や尿管結石などがある場合は注意が必要です。また、尿路が完全閉塞を起こすと、数時間~数日という短期間のうちに急激に腎臓の機能が低下することもあるので注意が必要です。


水腎症の超音波所見


No.468 木天蓼(またたび)

「猫に木天蓼(またたび)」ということわざがあるように、多くの猫はまたたびが好きです。猫はまたたびを与えると陶酔したように楽しく動き回る姿を見せます。そういった行動は非常に可愛らしいものですが、与え方を間違えると危険です。

またたびとは、マタタビ科マタタビ属の木で山に自生しています。またたびの木には、正常な実と虫癭果(ちゅうえいか)と呼ばれる実の2種類がなります。猫が好むとされているのは虫癭果で、ハエやアブラムシが実に卵を産み付けることで変形したものです。表面がつるんとした楕円形の正常な実に対し、虫癭果は表面が凸凹としています。またたびは夏梅とも呼ばれ、6月頃から葉っぱが白くなり梅に似た白い花が咲きます。

商品としては、枝や実、粉末やスプレー状のものなどが市販されており、猫が舐めたり匂いを嗅いだりすることで反応が起きます。またたびによる反応は、猫の上顎にあるヤコブソン器官(フェロモンを感知する器官)が、マタタビラクトンやアクチニジンといった成分を感作することにより引き起こされます。これらが中枢神経に作用し、転げ回ったり走り回ったりといった酔っ払った陶酔したような姿を見せます。一時的なもので依存性はほとんどないとされています。

反応には個体差がありますが、使いどころには以下の様なものがあります。

ストレス解消:一時的に活発になり、運動することでストレス解消が見込めます。運動不足解消におすすめです。

食欲増進:食欲が少し落ちている時に効果が期待できます。しかし、食欲不振は病気の可能性もあるので、様子がおかしい場合は早めに病院に連れて行ってください。

老化防止:猫は食事をする時にあまり咀嚼をしないので、またたびの入ったオモチャをかじることで脳が刺激を受け、老化防止につながると言われています。

このような良い効果が期待されるまたたびですが、与え方を間違えると危険性もあります。大量に与えすぎると、中枢神経が麻痺を起こし呼吸困難になってしまうことがあります。また、飼い主さんが出かけている時に、猫がまたたびを見つけて丸呑みしてしまうなどの事故にも気を付けて下さい。他にも、またたび入りのオモチャが壊れて中の粉末が出てきてしまうなどの事故により過剰摂取をしてしまうケースは少なくありません。このような事態を防ぐためには、与え方や保管場所に注意しておく必要があります。

また、粉末、液体、実、枝の順で作用の強度が高いとされています。強度によって適量が変わります。最初は少し嗅がせる程度から始め、個体差があるので、様子を見ながら少しずつ量を増やしていき適量を判断しましょう。幼猫のうちは与えない方が良いです。体内の器官が十分に発達していないとパニックを起こす可能性があります。また、老猫や心臓に疾患がある猫にも体に負担をかけてしまうので与えない方が無難です。

与え方は、匂いを嗅がせる方法と直接食べさせる・舐めさせる方法があり、それぞれ特徴があります。匂いを嗅がせる方法は刺激は弱いですが長続きします。オモチャに入れるのが一般的です。直接食べさせる・舐めさせる方法は、刺激は強いものの効き目が短いです。美味しそうに舐めることがありますが、上顎のヤコブソン器官に擦り込んでいると考えられていて、飲み込むとすぐに効果が薄れます。毎日だと効果が薄れていくので、しつけのご褒美といった特別な時に与えるなどが良いです。


またたび(夏梅)の花


No.467 犬の唾液腺嚢胞

唾液腺嚢胞は唾液を産生する組織(耳下腺、下顎腺、舌下腺)や唾液を輸送する管に破綻が生じ、唾液が皮下などにたまって唾液瘤(コブ状のもの)を形成する疾患です。犬に多く、猫にもまれに起こります。舌下に溜まってしまう場合には、ガマガエルののど袋のような外観になることからガマ腫と呼ばれます。下顎から首回りに唾液瘤ができるものを一般的に唾液腺嚢胞と呼びます。

外傷などによるものや唾石が管に詰まってしまう場合もありますが、原因が特定できないこともあります。一部の犬種では遺伝的な影響も考えられています。リードなどにより頸に無理な力がかからないよう努めることや、口腔内を刺激するおもちゃや歯磨きなどで、唾液腺の導管を傷つけないように注意することが肝要です。反対側に症状が起こる場合もあります。

症状は、喉元や首周りにコブ状の腫れ、波動感のある(ブヨブヨとして液体のような)無痛性の腫瘤、FNA検査(針吸引検査)すると白血球を少量含んだ粘稠性唾液が採集されるなどですが、炎症の存在や大きさにより臨床症状が異なります(痛み、嚥下困難、呼吸への影響など)。レントゲン、CT検査などにより、他の組織(リンパ節など)への炎症の波及や腫瘍との鑑別が必要ですが、確定診断は摘出して病理検査を行うまでわからない場合もあり、実は癌だったという例もあります。

導管の破綻部位を特定することは通常困難で、漏出を起こしている部位の唾液腺を外科的に摘出することで治療します。同時に付随する導管も出来る限り分離し取り出します。通常、手術による合併症は少なく、適切に原因が除去されれば予後は良好ですが、再発や残った唾液腺が嚢胞化することもあります。大きくなると手術も大がかりになります。なるべく小さな内の外科手術が推奨されます。


大きくなった犬の唾液腺嚢胞


No.466 誤嚥性肺炎と歯周病

誤嚥とは唾液や食物、胃液などが気管に入ってしまうことをいいます。肺炎と誤嚥性肺炎は原因が異なります。肺炎は細菌や真菌やウイルス、アレルギーなどによって気管や気管支、肺胞などに炎症が起こる疾患です。一方、誤嚥性肺炎は誤嚥によって口腔内の細菌が食べ物と一緒に肺に入り込み炎症が起こる状態です。この誤嚥性肺炎は主に高齢動物に多く見られます。また、寝たきりの状態になるとよく起こります。

通常、食べたものは食道を通って胃に送られ消化されていきます。誤嚥性肺炎は食物が誤って気管に入り込んでしまい生じます。健康な動物でも唾液が誤って気管に入ってしまうことがありますが、嚥下反射という反射機能が働き、むせ返る程度で通常は大事に至りません。しかし高齢動物は嚥下反射の力が低下していて誤嚥が起こりやすくなっています。

口腔中には多くの細菌がいて、その中には肺炎を引き起こす細菌も含まれています(主に嫌気性菌)。不衛生な口腔内では、唾液の誤嚥によって肺に細菌が入り込んでしまうことで肺炎を引き起こす事があります。その細菌の代表格が歯周病菌です。歯周病は加齢とともに増加し、高齢動物のほとんどが歯周病に罹患しています。歯周病が誤嚥性肺炎を引き起こすのは、肺炎の原因菌が肺や気管支に棲みつくのを助けるからといわれています。

また、歯周病時は歯肉に炎症が起こり炎症性物質が放出され、歯肉の毛細血管から全身に入り、様々な病気を引き起こしたり悪化させる原因となる事も知られています。炎症性物質は、血糖値を下げるインスリンの働きを悪くさせ糖尿病のリスクを上げます。また、早産や低体重児出産などの出産のトラブルや、肥満、動脈硬化による心臓病、脳梗塞にも関与しています。このように、歯周病は口腔内のトラブルだけにとどまらず、様々な疾患の原因、悪化要因となります。日頃のプラークコントロールと、定期的な歯石除去で口腔内を清潔に保ちましょう。


歯周病は誤嚥性肺炎の原因になります

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No.359 歯肉炎と歯周病と歯槽膿漏
No.248 スケーリングと犬の寿命
No.134 プラークコントロール (Dental plaque control)
No.108 高齢動物の歯の疾患
No.98 歯周病2 (Periodontal disease)
No.97 歯周病1 (Periodontal disease)

農林水産省の犬の歯石除去に対する見解
農林水産省のウェブサイトに、犬の歯石除去に対する見解が掲載されました。
小動物獣医療等に関するよくある質問:農林水産省 (maff.go.jp)