No.479 プロドラッグとアンテドラッグ

プロドラッグとは、体内に入ってから患部に到達するまでの間に、薬効成分が分解されないように化学構造を変換した薬です。投与前はほとんど活性化していない状態、もしくは不活性の状態ですが、投与後に体内で起こる代謝によって本来の薬効を示すようになります。薬物送達システム(Drug Delivery System:DDS)という、疾患部位に必要な薬効成分が、適切な時間のみ作用するように調製する技術を利用して作られる薬の一種です。インフルエンザの時に使用されるタミフル(オセルタミビル)が有名です。また、DDSを利用したその他の薬には放出制御製剤(コントロールドリリース製剤)が挙げられます。

アンテドラッグは、ソフトドラッグとも呼ばれ、特定の部位でのみ強く作用し、体内に吸収されることで急速に不活性化し効果を失う薬剤のことです。こちらも、薬の分子構造に工夫を加えることで製造されます。アンテドラッグの代表的な薬には各種のステロイド薬があります。

このように、プロドラッグとアンテドラッグとは逆のメカニズムによって作用していますが、どちらも副作用の軽減や、薬が必要な部位への吸収率を上げる事、薬の持続時間を調節する事などを目的に使用されます。まだまだ獣医界での研究や報告は少ないですが、これから使用頻度は増えていくと考えられます。


プロドラッグ タミフル