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No.496 猫喘息

猫喘息とは、突然呼吸困難に陥る慢性気管支疾患です。気管支に炎症が起こり、空気の通り道が狭くなっていく状態が徐々に進行していきます。肺や気管支での様々な変化は、最初は元に戻る変化ですが、慢性的になると元に戻り辛くなります。また、猫喘息は2~3歳ぐらいの若齢で発症すると重症化しやすく、4~8歳ぐらいの中齢で発症すると軽度から中等度の症状になりやすいといわれています。

症状は呼吸に関するもので、咳、呼吸が早い、疲れやすい、遊ばなくなった、喘鳴(息を吐くとき音がする)、開口呼吸などがあります。

犬は呼吸による空気の出し入れにより体温調節を行うので、口を開けて呼吸をしているところをよく見かけますが、猫が開口呼吸をしているときは、重度の呼吸器障害や状態の悪化であることが多く要注意です。また、猫喘息は発作的に呼吸困難や咳が起こり、突然激しい呼吸器症状が現れます。この発作は突然死を招く危険性があります。

原因や発症の仕組みは明確には分かっていませんが主にアレルギーによるものと考えられています。アレルギーの原因となるのは、ハウスダスト、花粉、洗浄剤、消臭剤、ヘアスプレー、煙草の煙、香水など、呼吸で吸い込むアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)です。カーペットや家具を新しく新調したり、新しい家に引っ越したりしたときに新たなアレルゲンにさらされることもあります。

猫喘息の診断は、症状、聴診、血液検査、X線検査、気管支鏡検査などによって行います。

治療は、気管支拡張薬、ステロイド剤、免疫抑制剤などを用い、重度なら酸素吸入を行います。また、代替医療が著効する場合もあります。投薬と同時に、環境中から疑わしいアレルゲンを除去するよう努めます。猫喘息は慢性疾患なので症状の改善があっても内服薬を急に中止することは出来ません。


喘息の猫の胸部レントゲン写真


No.495 クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)

クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)とは爬虫類、鳥類、魚類、両生類、哺乳類などの多くの動物種およびヒトにも感染する原虫(寄生虫の一種)です。オーシスト(成長段階のサナギの様なもの)は水中では数ヵ月感染能力を持ち、オーシストを含んだ水、感染した生体の吐物や便を口にしてうつります。薬剤耐性が強く、通常の塩素の消毒でも死滅せず、ヒトでも汚染された水から感染するため、衛生管理が整っていない場所で蔓延しています。近年、ヒョウモントカゲモドキで大きな問題となっています。

クリプトスポリジウムにも複数の種類がありますが、爬虫類では主に下記の2種が問題となり、複数の種類のクリプトスポリジウムが寄生することもあります。
C.serpentis:ヘビ・トカゲに寄生
C.varanii(saurophilum):トカゲに寄生、まれにヘビ

爬虫類では胃や小腸の粘膜にクリプトスポリジウムが寄生し、慢性的な胃炎や腸炎により下痢を引き起こし痩せていきます。通常、免疫力のある場合は無症状で、他の病気に感染したりストレスを受けると発病する可能性が高くなります。年齢や性差における感染率は知られていません。

クリプトスポリジウムの診断は糞便検査でオーシストを確認して診断できますが、検査を行っても 1 度では発見できないこともあり、数回の検査でも見つからないこともあります。確実な診断は吐物や糞を用いた遺伝子(PCR)検査になります。

有効な治療薬は無いので完治することは難しく、爬虫類の感染では完治することはないといわれています。しかし、パロモマイシンという薬がある程度は効果的で症状が改善したヒョウモントカゲもいます。


ヒョウモントカゲモドキは注意です


No.494 腎性貧血

腎臓はエリスロポエチンという名前のホルモンを分泌しています。このホルモンは骨髄の中にある造血にかかわる細胞に働きかけ、赤血球を作ってくださいという指令を出す重要なホルモンです。慢性腎臓病(CKD)になってしまった動物は、徐々に腎臓の機能が失われていきます。この時、血液から尿を作る働きや血液から老廃物を取り除く働きと一緒に、エリスロポエチンを分泌する働きも少しずつ失われ、体内のエリスロポエチンの量が減り、赤血球がどんどん減っていってしまいます。このように、腎臓の機能低下に伴って引き起こされた貧血を腎性貧血と呼びます。また、腎臓から分泌されるエリスロポエチンの量が減ることが貧血の大きな原因ですが、腎臓の機能が低下していることで体内にとどまっている老廃物の中には、赤血球を壊してしまうものも含まれているため、腎機能低下そのものも貧血の原因になります。

腎性貧血は、慢性腎臓病(CKD)の動物に一般的にみられる合併症ですが、過去の研究では、犬で4~70%、猫で32~65%で認められるといわれています。有病率と重症度はCKDのステージが上がると上昇します。また、腎性貧血は生存期間の短縮とQOLの低下に関連しています。数年前まではヒト用の赤血球造血刺激因子(Erythropoiesis stimulating agents: ESA)製剤が使用されていましたが、現在では猫用のESA製剤ダルベポエチンα(商品名エポベット)が開発され臨床現場で使用されています。

ESA製剤の使用開始は、重度の貧血が認められ、貧血が原因と考えられる臨床症状が現れた場合です。CKDの猫の場合Ht値が20%以下になると、食欲不振、虚弱、疲労、無気力、冷感への不耐性、嘔吐、睡眠時間の増加などの臨床症状が現れるようになります。ケースバイケースですが2週間に1度の投与が推奨されています。注意すべき合併症としては、造血の急速な亢進による鉄欠乏や、Ht値の治療後の上昇により、血液粘稠度が高くなることに伴う血栓塞栓症と高血圧です。とくに高血圧の発生率は40~50%との報告があります。


エポベット

こちらもご参照ください
No301 慢性腎不全(CKD)の推奨される治療
No.300 慢性腎不全(CKD)のステージ分類
No.259 高血圧 (Hypertension)
No.38 貧血(Anemia)2
No.37 貧血(Anemia)1


No.493 カロリー計算

カロリーとは、エネルギーの単位です。1Lの水の温度を1℃あげるのに必要なエネルギーが1キロカロリー(kcal)です。エネルギーは、体を動かす大切な活動の源です。安静にしていても様々な臓器を動かすためにエネルギーが必要ですし、活動量が多ければたくさんのエネルギーが必要になります。食物にはエネルギーのもとになるタンパク質、脂肪、炭水化物の3大栄養素が入っていて、タンパク質は約4kcal/g、脂肪は約9kcal/g、炭水化物は約4kcal/gのエネルギー源となります。

カロリーが不足すると体重減少が起こります。また、成長期のカロリー不足は成長不良につながります。病気や加齢などにより食欲が長期間低下すると、低栄養状態に陥ります。低栄養状態になると、運動機能や免疫機能の低下、傷の治癒の遅延、薬の代謝異常などが起こるため、重度の食欲不振や絶食が続く場合には、シリンジによる強制給餌や胃瘻チューブなどの積極的な栄養補給を行う必要があります。摂取しているカロリーが減少しているのに体重が増加する場合、甲状腺機能低下症などの病気の可能性があります。

カロリーが過剰になると体重が増加します。理想体重よりも15~20%以上増加すると肥満と呼ばれる状態になります。肥満になると、膵炎や関節疾患、呼吸器疾患などになりやすかったり、手術時に麻酔が効きにくかったりするなど様々なデメリットが生じます。カロリーが過剰なのに体重が減少する場合には、タンパク漏出性疾患や糖尿病などの可能性があるため注意が必要です。

ペットフードの袋には体重あたりの給与量の目安が記載されています。しかし、動物に必要なカロリーは、年齢や不妊手術の有無、活動レベルなどで大きく変わってくるため、記載されている量が全ての犬にとって適正であるとは言えません。適正量をきちんと知るためには、必要なカロリー量を計算する必要があります。

必要なカロリーの計算式

一日に必要なエネルギー量(DER)、活動量がほとんどない時のエネルギー量を安静時必要エネルギー量(RER)と呼びます。DERは、RERに活動量や不妊手術の有無などを考慮した係数をかけることで算出します。

RER=〔体重(kg)〕0.75乗×70
電卓で体重(kg)×体重(kg)×体重(kg)→√ √ ×70

若干低値に出ますが、RERの以下の要な簡易な計算式もあります。
RER(kcal)= 体重(kg)× 30 + 70

RER×係数= DER

係数の目安 犬
未去勢・未避妊:1.8
去勢・避妊済み:1.6
肥満傾向:1.2~1.4
減量:1
活発・使役:3~8
安静:1.0
高齢:1.1~1.4
若齢:4ヶ月齢未満;3  4~9ヶ月齢未満;2.5  9~12ヶ月齢未満;2

係数の目安 猫
未避妊・未去勢1.4~1.6
避妊・去勢済:1.2~1.4
活動的:1.6
肥満傾向:1.0
減量:0.8
増量:1.2~1.4
成長期(1歳齢まで):2.5
妊娠中:繁殖時;1.6  分娩時;2.0
授乳中:2.0~6.0
高齢(7~11歳):1.1~1.4  超高齢:1.1~1.6
安静状態、重篤:1.0

DERが出たら、次に実際の給餌量を計算します。それぞれの食物が持つエネルギーを総エネルギー(GE)といいます。動物は口から入った食べ物のエネルギーをすべて吸収できるわけではありません。吸収できなかったエネルギーは糞便中に排泄されます。総エネルギー(GE)から糞便中のエネルギーを差し引いたものを可消化エネルギー(DE)といいます。つまり消化・吸収ができたエネルギーです。吸収したエネルギーもすべてが利用されるわけではありません。利用されずに尿中に排泄されるエネルギーがあります。可消化エネルギー(DE)からこれを差し引いたものを代謝可能エネルギー(ME)といいます。また、食べ物の消化、吸収および利用のときにもエネルギーが消費されます。代謝可能エネルギー(ME)からこれを差し引いたものが正味エネルギー(NE)です。この正味エネルギー(NE)が、体を維持するため、そして生産(発育、授乳、運動など)に用いられるのです。体を維持するのに必要な量以上の正味エネルギーがないと、発育、授乳、運動などの活動はできません。

給餌量の計算には、ペットフードに記載されている代謝可能エネルギー(ME)を用います。代謝エネルギーやME(kcal/100g)などと記載されているため、そこから量を計算します。

給餌量(g)=DER÷ME(kcal/100g)×100

この量を元に食事を与えます。

例:犬 10kg 3歳 健康 去勢済 代謝エネルギー357kcal/100gのフード

REP;10×10×10=1000 1000の√√=約5.6 5.6×70=392
DER;392×1.6=627.2kcal
給餌量;627.2÷357×100=約176g

簡易計算
REP;10×30+70=370
DER;370×1.6=592kcal
給餌量;592÷357×100=約166g


MEは代謝エネルギーの事です

こちらもご参照ください
No.325 胃瘻チューブ (PEGチューブ)
No.169 脂質(Lipid)
No.168 タンパク質の「質」
No.167 タンパク質(Protein)
No.166 炭水化物(Cabohydrate)
No.77 犬の甲状腺機能低下症(Hypothyroidism)


No.492 ウサギの肝リピドーシス

肝リピドーシスは、食欲不振によっておこる肝臓の脂肪化のことです。ウサギの肝疾患で多い原因の1つです。不整咬合や食滞などによって食欲不振になり、治療を行わなければ、胃腸の活動低下、肝臓の脂肪化が起こり、慢性的な肝炎になり、黄疸、食欲不振が進み、やがては命に関わることになります。

食餌量が減り、十分なエネルギーを取り込めなければ飢餓状態になり、体に蓄えた脂肪を分解することで、生きるためのエネルギーを作り出そうとします。しかし、草食のウサギは脂肪の処理能力高くありません。血中に分解された多量の脂肪は行き場を無くし肝臓に蓄積し、肝臓が十分に働かないので肝不全の状態になります。

肝リピドーシスは肥満がリスク因子です。太っているということは、分解できる脂肪が体内にたくさん蓄えられているということで、ひとたび脂肪の分解が始まれば大量の脂肪が血中に溢れ出した状態になり肝臓に沈着する量も増えます。太りやすいドワーフ種、ロップ系品種ではとくに注意が必要です。

血液検査では、肝酵素の上昇や高血糖、貧血、黄疸などがみられます。確定診断は肝臓の組織検査ですが、状態の悪いウサギではリスクが高いです。

治療は、点滴などによる肝臓の保護、食欲不振の原因の治療と、とにかく食べさせることです。強制給餌が必要な場合がほとんどです。治療には時間がかかることが多いです。ウサギの食欲不振には早目の対処が必要です。とくに肥満の場合は要注意です。


ドワーフ種、ロップ系品種はとくに注意が必要です

こちらもご参照ください
No.434 肝内胆汁鬱滞性黄疸
No.426 猫の肝リピドーシス


No.491 マラセチア (Malassezia)

マラセチアは自然に存在する酵母型真菌の一種で、通常はヒトや動物の皮膚や外耳道に生息しています。普段マラセチア自体が問題を引き起こすことはありませんが、異常に増殖した場合、菌体成分や代謝産物が皮膚炎や外耳炎を引き起こします。またマクロファージなどの抗原提示細胞がマラセチアを貪食することで、二次的にマラセチアに対するアレルギー性皮膚炎になることもあります。湿度の高い日本では増殖しやすく、とくに梅雨の時期には注意が必要です。

脇や股、頸の腹側などの間擦部に症状が出やすく、脂漏によってベタベタする、紅斑、痒み、色素沈着、脱毛落屑、皮膚の肥厚、甘酸っぱい臭気などが特徴です。外耳炎の場合は黒っぽく脂っぽい耳垢が溜まります。爪周囲炎を引き起こすこともあり、その場合は爪の表面が脂っぽくなり、色素脱や発赤が見られるようになります。通常の真菌症と違って他の個体へはうつりません。

好発犬種は、シーズー、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、コッカー・スパニエル、プードル、ダックスフンド、ボクサー、キャバリアなどです。猫でも起こります。猫の場合は外耳炎が多いです。遺伝的な原因が示唆されていますが、高温高湿度の環境や肥満も悪化因子です。また犬の場合は、甲状腺機能低下症がある場合もあります。

診断は、症状と病変部角質または耳垢の押捺塗抹検査(スタンプ検査)で行いますが、顕微鏡の検査ではっきりせず、培養検査をしないとわからない場合もあります。

治療は、薬浴、抗真菌薬、マラセチアに対するアレルギーがある場合はステロイド剤を投与します。生活環境の整備、肥満の場合は減量なども重要です。マラセチア性皮膚炎や外耳炎は、そのままにしてしまうと慢性化してしまうことも多いです。しっかりした対処が必要です。


マラセチア

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No.195 シャンプーの方法
No.188 外耳炎3(Otitis Exterma)
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No.58 外耳炎2 Otitis externa
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No.43 犬のスキンケア1


No.490 猫のアミロイドーシス

アミロイドーシスとは、アミロイドという不溶性で繊維状のタンパク質が、細胞と細胞の間に沈着して組織を圧迫し機能障害を引き起こす病気の総称です。アミロイドは全身の臓器のどこにでも沈着しますが、動物ではとくに肝臓・腎臓・副腎・脾臓などに沈着しやすく、これらの臓器の障害により症状が出ます。シャム猫(肝アミロイドーシス)、アビシニアン(腎アミロイドーシス)が遺伝性疾患として知られていますがどの品種でも起こります。比較的稀な疾患ですが猫の肝疾患の中では近年増加傾向です。

肝アミロイドーシス
肝臓は軽度なアミロイド沈着であれば機能を損なうことはありません。しかし、沈着が進むと肝臓が脆くなり、肝機能の低下だけでなく、出血や、最悪な場合では破裂の危険性もあります。肝アミロイドーシスでは肝臓の腫大が認められます。これによりお腹が妙に膨らんで見えたり、膨満感による食欲不振や体重減少が症状として現れます。また、肝機能の低下はタンパク質の代謝や消化に影響を与えるため、食欲不振、嘔吐、下痢や腹水の貯留が認められることもあります。さらに、肝臓の組織が脆くなることと、肝機能低下により起こる血液凝固異常により肝破裂のリスクが伴います。肝破裂が起こった場合、お腹の中で大出血が起こることになりショック状態となります。

腎アミロイドーシス
腎臓には、血液を濾過して排泄物を取り除き、尿の素を作る糸球体という構造があります。糸球体は腎臓の中で最もアミロイドが沈着しやすい場所です。糸球体にアミロイドが沈着し構造の障害が始まると元に戻ることはありません。このため、徐々に腎臓の機能が低下していき、慢性腎不全(CKD)を引き起こす原因となります。糸球体にアミロイドが沈着すると糸球体の透過性が亢進し、通常回収しなければいけないタンパク質が尿中に漏れ出るようになります。尿中にタンパク質が出るということは、血液中のタンパク質濃度が薄くなります。漏出が少量の時は、体重減少や疲れやすくなるなど、体に必要なエネルギーが欠けることによる症状がでます。重度になると浮腫や腹水の貯留が認められるようになります。また、腎臓の75%が機能しなくなるまで糸球体の損傷が広範囲に進むと腎不全の状態に陥ります。多飲多尿や食欲不振気持ちが悪く、流涎、嘔吐などの症状が現れます。このほか糸球体の損傷により、ナトリウムの貯留、ひいては高血圧が起こり、慢性腎不全をより悪化させる原因となります。高血圧は、網膜出血や網膜剥離などの原因となることもあります。まれに、タンパク質の漏出により血液の凝固異常が起こり、肺の血栓塞栓症が起こることもあります。

アミロイドーシスの確定診断は、生検(臓器の一部を取って検査をする)による病理検査診断です。しかし、アミロイドにより障害されている臓器の一部を取ることは、大出血など命にかかわるリスクを伴い安易に行える検査ではありません。そのため、診断までたどり着くことが容易ではありません。ヒトではSAA値が病態と相関性がありますが猫では関連性が不明です。

一度沈着したアミロイドを取り除き、障害された組織を元に戻すことはできません。アミロイドーシスには、現在のところ特異的な治療法は無く、症状を緩和させる支持療法を行います。炎症がアミロイド沈着の引き金になるので、炎症の元となっている基礎疾患の治療、抗酸化剤やビタミンKの補充、代替医療、サプリメント、免疫療法なども組み合わせて維持治療をしていくことになりますが長期予後は悪いです。

良い予防法はありませんが、慢性の口内炎や歯肉炎があって慢性の炎症を起こしている場合、その炎症から炎症性のアミロイドを作ってしまい、アミロイド沈着の引き金になることがあります。そのため、歯周病、口内炎を持っている場合は特に注意が必要です。


アミロイドーシスの病理写真

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No.356 猫の口内炎
No.300 慢性腎不全(CKD)のステージ分類
No.98 歯周病2 (Periodontal disease)
No.97 歯周病1 (Periodontal disease)
No.56 慢性腎臓病(CKD)2
No.55 慢性腎臓病(CKD)1


No.489 肛門腺炎・肛門嚢自壊

犬猫には肛門の両脇(正面から見て4時、8時の位置)に肛門腺という臭腺が存在します。肛門嚢とも呼ばれます。イタチやスカンクの臭いおなら(正確にはおならではありませんが)で有名です。フェレットの場合はペットショップに来る前に手術で摘出されている場合が多いです。肛門腺の中には臭いの強い分泌液が入っており、この臭いによって相手を認識したり、マーキングに利用しているといわれています。普段は排便時や興奮時などに自然に排出されています。犬の場合はトリミング時にトリマーさんが絞って排出させてくれています。

肛門腺の分泌液の出口は肛門の中にあります。この肛門腺が何らかの理由で炎症を起こしたものが肛門腺炎です。肛門腺から肛門までの導管に炎症が起きると管が塞がってしまう事があります。そうなると行き場を失った肛門腺内容物が過度に溜まって破裂を起こします。これが肛門嚢の自壊です。

主な原因としては、肛門腺が排出出来ていない事ですが、細菌感染や不適切な肛門嚢絞りなども原因となります。肛門括約筋の筋力低下や肥満なども原因の一環とされているようですが、実際には痩せていても発症するし、外肛門括約筋の菲薄化など一切ない症例でも肛門嚢破裂が起こります。

一般に、チワワやシーズー、ミニチュアダックス、トイプードルなどの小型犬と猫でよくみるトラブルですが、大型犬での発症もあります。

治療は、軽度なら剃毛と外用薬、抗生剤や鎮痛剤などの投与で改善しますが、重度の場合は外科的な対処が必要です。


肛門嚢自壊

以下もご参照下さい
No.332 肛門腺 (Anal glands)


No.488 犬の耳毛

ヒトと犬の耳では構造が全く異なります。大きな違いのひとつが耳毛の存在です。犬の耳の中には毛が生えていて、かなり密集している犬もいれば、うっすら生えている程度という犬まで品種差があります。ミニチュア・シュナウザーやプードルなど水猟犬として活躍していた犬は、水鳥などを捕るために水中に入ることが多く、撥水のために耳毛がたくさん生えているといわれています。また、マルチーズ、シーズー、ヨークシャテリアなども耳毛が多い犬種です。一方、チワワやダックスフント、ポメラニアンなどは少ない犬種です。

耳毛は水をはじく以外にも、汚れやホコリの侵入を防ぐ役割をします。しかし、ペットとして飼われるようになった現代の多くの犬には、本来の役割のための耳毛は不要になりました。犬にとっては耳毛が生えていることが自然な状態なので、これをむりやり抜く必要はないという意見もありますし、近年、耳毛抜きが動物愛護の観点、動物虐待の観点から実施しない獣医師やトリマーさんも増えてきています。しかし、欧米と異なり高温多湿の日本では、蒸れる事によって外耳炎の原因になっている場合も多いです。外耳炎になった事がある、通気性が悪くなっている、耳掃除の邪魔になっている、外耳道内が脂性という様な場合は抜くかカットが必要です。上手に手早く行えば痛みはほとんどありません。

耳毛の処理は獣医師の間でも、抜く派、カット派に意見が分かれます。個人的にはどちらでも良いと思いますが、自宅で行う場合は、抜くなら毛抜き、カットするなら眉毛用ハサミなどがオススメです。耳が健康なら、月1回くらいの頻度で傷つけない様、丁寧に行って下さい。上手く出来ない場合、また、痒い、赤い、耳垢が多い、臭いがおかしいなど、トラブルが起こっている場合は必ず病院へご相談下さい。


耳毛処理前


処理後

以下もご参照ください
No.188 外耳炎3(Otitis Exterma)
No.58 外耳炎2 Otitis externa
No.57 外耳炎1 Otitis externa


No.487 ハムスターの前庭疾患

前庭疾患とは、様々な原因で平衡感覚を失ってしまう病気全般を指します。動物の身体には、平衡感覚を司る三半規管が両側の内耳に存在します。三半規管が感知した頭の動きや位置が神経を通じて脳幹へ伝えられ平衡感覚が生まれます。三半規管やその信号を受け取る脳幹が機能しないと、世界がグルグルと回ってしまうような感覚に陥り眩暈やふらつきが起こります。

前庭は、末梢前庭と中枢前庭に分けられます。
・末梢前庭:内耳の三半規管と前庭と前庭神経(内耳神経のひとつ)
・中枢前庭:橋、延髄の一部、小脳の一部(片葉:へんよう)
発症する前庭疾患の多くは末梢性のものです。中枢性前庭疾患は比較的稀ですが経過が悪いです。

症状としては、末梢性でも中枢性でも、頭が傾く(斜傾)、まっすぐに歩くことが出来ない、すぐに転がってしまう、眼振、食欲不振などです。

確定診断するために、本来はより詳細な検査、CTやMRIなどが推奨されますが、ハムスターの様な小さい動物になるとなかなか困難なのが現状です。また、ホルモンの異常によっても起こる事がありますが、こちらもハムスターでは診断方法が確立されていません。100%ではありませんが、水平方向に眼球が動く「水平眼振」の場合は内耳の病気が疑われ、垂直方向に動く「垂直眼振」の場合は脳の病気が疑われます。実際は症状から推測して治療的診断を行っていきます。

治療は、抗生剤、消炎剤、食欲がない場合は皮下点滴や強制給餌を行います。代替医療が著効する場合もあります。発生の多い末梢性のものは、斜頸の後遺症が残る場合もありますが回復してくれる場合が多いです。しかし、中枢性の前庭疾患はあまり予後がよくなく、残念ながらそのまま亡くなってしまうこともあります。


前庭疾患で斜傾が起こったジャンガリアンハムスター

こちらもご参照下さい
No.440 犬の前庭疾患