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No.486 イレウス (Ileus)

イレウスとは、様々な原因により、腸の内容物が通過し辛くなる状態をいいます。これにより、腸管内にガスや液体が溜まり腸の運動が妨げられ、腹痛、膨満感、嘔吐などの症状が現れます。イレウスは大きく分けて、物理的な原因で腸管が閉塞する機械的イレウスと、腸管の運動が低下または停止することによる機能的イレウスに分類されます。

機械的イレウスの原因には以下の様なものがあります
1.腫瘍:腸管内外からの腫瘍が腸を圧迫する
2.癒着:手術後の癒着が腸を引っ張ったり捻じれさせる
3.ヘルニア:腸管が腹壁の弱い部分を通って外に出る
4.腸捻転:腸管が自ら捻じれて血流が遮断される
5.腸重積:腸の一部が後ろの腸に引き込まれて重なり合う
6.異物:食物の塊、胆石、寄生虫、硬化した便などが腸管を塞ぐ
7.炎症:慢性炎症性腸疾患が腸管の狭窄や閉塞を引き起こす

機能性イレウスの原因には以下のものがあります:
1.腸麻痺(イレウス麻痺):腹部の手術後、重篤な感染症や腸の炎症、外傷、脳血管障害、熱中症、膵炎などにより、腸管の運動が一時的に停止することによる
2.薬物:抗コリン薬、オピオイド(麻薬性鎮痛薬)、抗うつ薬、抗パーキンソン薬などの薬物が腸の運動を抑制する。
3.代謝異常:電解質異常、特に低カリウム血症や高カルシウム血症などが腸の運動機能を低下させるたり、糖尿病のコントロールが不十分な場合に腸の運動が低下
4.自律神経障害:自律神経系の異常が腸管の運動に影響
5.その他:重篤な疾患(腎不全、心不全、肝不全など)や全身麻酔の影響も腸の運動を低下させる原因となる
6.特発性:原因不明

イレウスの症状は、腹痛、腹部膨満、嘔吐、排ガスや排便の停止、食欲不振などです。重症な場合はショック状態になり命に関わる場合もあります。診断は、臨床症状、身体検査、画像診断(X線、CTなど)を基に行われます。内視鏡検査が必要な場合もあります。治療は、原因や重症度に応じて異なりますが、重篤な場合や外科手術が必要な場合も多く、迅速な対応が求められます。


イレウス時に特徴的なセンテニアルループが見られるレントゲン写真

こちらもご参照下さい
No.482 熱疲労と熱中症
No.402 誤食をしたかもしれない時
No.391 腸重積
No.189 膵炎(Pancreatitis)
No.141 消化管内視鏡
No.117 全身麻酔 (General anesthesia)


No.485 動物の受動喫煙

タバコの煙は、肺の中に吸入される主流煙と、火のついた先端から立ち上る副流煙があります。有害物質は副流煙の方が多いと言われています。受動喫煙は、吐き出された主流煙と副流煙が混ざったものに触れる事と定義されています。副流煙のない電子タバコも無害ではありません。受動喫煙でタバコを吸わない動物の健康に害を及ぼすことがあります。

動物が受動喫煙にさらされると様々な病気になりやすい事が分かっています。厚生労働省によると、副流煙の有害物質は主流煙よりも、ニコチンは2.8倍、タールは3.4倍、一酸化炭素は4.7倍も多くなります。また発癌性のある化学物質のベンゾピレン、ニトロソアミンなどもあります。動物はこれらを小さい体の中に取り込むことになります。

また、3次喫煙という言葉をご存知でしょうか。これはタバコの副流煙が衣服や壁、カーテン、絨毯、ヒトの髪の毛などに付着して、その残留物が再び直接・間接的に被害をもたらすというものです。ペットの前でタバコを吸わなくても、喫煙者の服や髪にタバコの副流煙が付いています。抱っこされることで、動物の被毛に付いたり舐める事で、口からタバコの成分が体内に入っていきます。

自宅に空気清浄機があるから大丈夫、換気扇の下なら大丈夫と考えている方もいるかもしれません。空気清浄機は粒子状物質を除去できますが、ガス状物質は全て除去できません。換気扇にはたいした効果が無い事が分かっています。

動物は自分で毛づくろいします(とくに猫は懸命にします)。そのため、動物の前で喫煙しなくても飼主さんの体や毛に付いている副流煙で被害が起こります。

受動喫煙による主な疾患は、喘息、眼の疾患、アレルギー、肺、口腔内や鼻腔内の悪性腫瘍(とくにリンパ腫)です。

また、タバコのポイ捨てをする人たちがいます。水たまりに投げ捨てられるとたばこは溶け出し、水溶性のニコチンを多く流出します。外にいる猫は外の水がその水を飲んでしまうと中毒を引き起こす場合があります。


様々なタバコによる害に注意しましょう

こちらもご参照下さい
No.420 猫の原発性肝臓癌
No.408 ニコチン中毒
No.202 リンパ腫 (Lymphoma)


No.484 インコの嘴形成不全

セキセイインコやコザクラインコ、オカメインコなどのインコ系の鳥は、嘴が食べる時に重要な役割を果たします。嘴は爪のようなもので日々伸び続けています。

通常は少しずつ削れていくので変わらないように見えます。嘴形成不全は、肝機能障害や高脂血症、アミノ酸欠乏、PBFD(サーコウイルスの感染症)、疥癬などが主な原因です。肥満鳥も要注意です。特発性(原因不明)の場合もあります。これらの様々な原因によって嘴の成長板細胞に異常が生じ、嘴のタンパクの合成異常が起こり、主に上嘴が過伸長し、場合によっては変色や出血班などがみられます。また、羽根の破損やストレスライン(羽根に白や黒の横線が入ったり一部が途切れたりしている状態)がみられることがあります。放置するといずれは上手く食事が出来なくなってしまいます。

治療法は、嘴のトリミングをして基礎疾患を治療していきます。切る過ぎると食事をしづらくなるので注意深くカットします。意外に伸びるのは早いです。一度歪んだ嘴はなかなか元に戻りませんので、基礎疾患が完治しないと定期的(3-5週間毎くらい)に嘴を削る事になります。

御家庭で爪切りなどを用いて切る方がいらっしゃるのですが、とても危険です。綺麗に削れると良いのですが、出血させると命にかかわる場合があります。縦割れしてしまうと対応が複雑になります。


セキセイインコの嘴の過長

こちらもご参照下さい
No.405 小鳥の出血
No.321 セキセイインコの肥満


No.483 小鳥の多飲多尿

多飲多尿は鳥類の診療においてしばしば遭遇する症状の1つです。鳥の尿には水分尿と尿酸の2つがありますが、ここで言う多尿とは水分尿が多いことです。鳥は尿と糞便を同時に排泄するため、排泄された水分が全て純粋な尿とは限りません。 下痢の場合には、腸管から分泌された水分が排泄されることもあり、多尿の多くは下痢と勘違いされています。実際に下痢の場合もありますが、多飲多尿の時の便は形状を保っており、その周囲に浸み込む水分が多い状態です。鳥の正確な尿量を測定することは困難なため多尿の定義は不確定ですが、体重の20%以上の水を飲み便の周囲に1cm異常の水分が浸み込んでいれば多尿と判断します。

小鳥の多飲多尿の原因は様々ですが、主に生理的な原因と病的な原因に分けられます。

生理的な原因
・換羽期:換羽期は甲状腺ホルモンが多量に分泌されるため代謝率が増加し、肝臓においてタンパク質合成が盛んに行われることの結果として多尿となります。
・雌の繁殖期:発情期はエストロジェンの影響で血中Caが増加し、多尿が引き起こされます。また産卵のためCaや水分摂取量が増加し多量の代謝水が産生されます。肝臓においてもタンパク質の合成が盛んに行われ、その結果多尿となります。
・食事:ペレット食、野菜・果物の多給
・その他:興奮やストレス、高温多湿環境など

病的な原因
・腎臓病:糸球体腎炎、感染性腎炎、腎腫瘍、痛風、高Ca、腎リピドーシス
・肝臓病:肝炎、肝リピドーシス、肝腫瘍
・糖尿病
・ビタミン異常:ビタミンD過剰症、ビタミン欠乏症
・その他:下垂体腫瘍、・二次性副甲状腺機能亢進症、敗血症など

診断は、生活環境、身体検査、糞便検査、レントゲン検査、血液検査などを実施して総合的に判断します。しかし小鳥では血液検査が難しい場合も多く、必ずしも確定診断が可能なわけではありません。現実的には仮診断をして、治療的診断を行っていく場合がほとんどです。

多飲多尿の原因が生理的な場合には基本的に治療は必要ありません。病的理由の場合にはその病態に応じた治療を行います。

小鳥でも多飲多尿は注意です

こちらもご参照ください
No.426 猫の肝リピドーシス
No.424 高Ca(カルシウム)血症
No.304 糖尿病 (Diabetes)
No.91 小鳥の基本
No.56 慢性腎臓病(CKD)2
No.55 慢性腎臓病(CKD)1
No.3 飲水量とPUPD


No.482 熱疲労と熱中症

熱中症は、高温や高湿度の環境下で体温が上昇し、体内の水分や電解質のバランスが乱れて起こる症状の総称です。主な症状にはめまい、頭痛、吐き気、動悸、パンティング、などがあり、重度の場合は、筋肉痙攣、意識障害や臓器障害が出て命に関わります。一方、熱疲労とは、高温や高湿度の環境下で生じる疲労や不快感のことです。はっきりと症状は現れず、何か怠そうだなとか、少し元気がないなという状態が一般的です。一見健康そうにみえますが、これは熱中症の前段階です。熱疲労と熱中症の違いは、主に症状の程度や重篤さにあります。定義は曖昧ですが、簡単に言えば熱疲労がひどくなったものが熱中症です。

動物はヒトよりも熱疲労や熱中症を発症しやすいです。体内で発生した熱は血液にその熱を移します。熱い血液は体表の皮膚近くの毛細血管に広がり、熱を体外に放出することで、温度を下げ冷えた血液が体内に戻っていくことで体を冷やします。体が熱くなると皮膚が赤く見えるのは、皮膚直下の血管が拡張してたくさんの血液をそこで冷やしているからです。また、ヒトでは主に汗をかくことによって熱を下げますが、汗腺が少なく被毛に覆われた動物は体温を下げるのが苦手です。動物は主に呼吸によって体内の熱を外に出そうとしますが、その時に外気温が高いと、また暑い空気を吸ってしまい悪循環となります。高温、多湿、風が少ない、アスファルトの上などの照り返しの強い環境では外気への熱放散がより減少します。幼体や高齢、持病がある場合、短頭種、被毛色が濃い場合はよりリスクが上がります。

また、よくあるトラブルは、風が入るから大丈夫とエアコンを点けない。夜はエアコンを止めてしまう。冷房が効いた部屋があるのに暑い部屋にずっといて、そのまま熱中症になってしまうケースです。動物は暑いから涼しい部屋に行こうと思わない場合があります。とくに猫で多くみられます。1年経つと犬猫でもヒトの年齢でいえば4-5歳の歳を取っています。去年大丈夫だった環境が今年はダメという場合は多々あります。

個体差もあり、あくまで目安ですが、次頁の快適な温度と湿度をご参考にしていただいて、動物もヒトも事故の無いように夏を乗り切ってください。

夏場に推奨される室温と湿度の目安(24時間この環境が推奨されます)
犬:室温20~24℃、湿度40~60%
猫:室温20~25℃、湿度40~60%
フェレット:室温15~24℃、湿度40~60%
ウサギ:室温16~22℃、湿度30~60%
チンチラ:温度15~20℃、湿度30~40%
モルモット:室温18~24℃、湿度50~60%
ハムスター:室温20~26℃、湿度40~60%
セキセイインコ・オカメインコ:室温20~28℃、湿度40~60%
文鳥:室温25~28℃、湿度50~60%
ヒト:室温25~28℃、湿度50~60%


熱疲労・熱中症に注意してください

こちらもご参照下さい
No.438 冷房病と熱中症
No.124 夏に気をつけたいこと
No.85 涼しくしてあげてください
No.73 夏のトラブル
No.19 熱中症、熱射病


No.481 猫のゴロゴロ

猫がゴロゴロ喉を鳴らすのは、行動学では「喉鳴らし」、英語では「ピュリング」、フランス語では「ロンロン」などと呼ばれ、声帯を震わせて鳴らしていると考えられています。普通の声と同時に鳴らすことができるのが特徴で、ニャーニャー鳴きながらゴロゴロも発することができます。喉をゴロゴロと鳴らすのは生後2日目からであると言われています。生まれたばかりの子猫は視覚や聴覚が発達していないので、母猫は子猫に近付く時にゴロゴロと喉を鳴らして「ここにいますよ」「ミルクを飲みましょうね」などとサインを送ります。そして、子猫は「お腹空いたよ」「早く来て」とお返しゴロゴロをします。このように、ゴロゴロは母猫と子猫のコミュニケーションの1つであるとされています。

猫のゴロゴロ音には自律神経やホルモンバランスを整える効果があります。ゴロゴロ音の周波数は25ヘルツの低周波です。20~25ヘルツの音は副交感神経を優位にする働きがあります。副交感神経が優位になるとリラックスしたり、ハッピーホルモンと言われるセロトニンの分泌を促進します。一般的には機嫌が良いとき、リラックスしている時に鳴らすことからヒトの笑顔のような感覚に近いと考えられています。

また、ヒトの血圧を下げたり、不安を和らげたり、ストレスをなだめたりする効果があるので、免疫力や自然治癒力を高める副作用のない薬とまで言われています。日本でもセラピーキャットが医療や介護の現場で活躍し始めています。ゴロゴロ音の効果だけでなく、猫のように好き勝手にしたいな、自由にしたいなと憧れたり、自己投影したりすることで、がんじがらめになって病んでしまった人たちを癒しています。また、逆セラピーといって猫の世話をすることによってヒトの患者さんの癒しにつながることがあります。癒し癒される関係になり、絆が深まることで感情の交流が生まれ、回復や治癒につながるケースも少なくありません。

その他にもゴロゴロ周波数は、骨の形成を促進したり強化したりする周波数とほとんど同じであるとされています。骨に刺激を与えて新陳代謝を活発にする働きがあります。昔から猫は骨折をしても他の動物より早い速さで回復することは知られていて、人医学界では、ゴロゴロ音の周波数からヒントを得た超音波による医療器が開発され、骨折治療に使われています。ベッカム選手や松井選手が使用した事で話題になりました。


ゴロゴロは母猫と子猫のコミュニケーション


No.480 膀胱内の腫瘤

血尿や頻尿などの検査で膀胱内に腫瘤(Mass)が見られる場合があります。膀胱内の腫瘤が悪性のものであった場合、ほとんどが移行上皮癌です。移行上皮癌は転移性・浸潤性が強く悪性度の強い癌です。膀胱内部の粘膜表面の細胞である上皮細胞は伸び縮みができる移行上皮と呼ばれる種類のものです。その移行上皮細胞が癌化したものが移行上皮癌です。移行上皮癌は膀胱三角と呼ばれる、膀胱内部の左右にある尿管の穴と尿道の穴を結ぶ三角形の領域に発生しやすいといわれています。また一方で、慢性膀胱炎などが原因でできる良性の膀胱内ポリープもあります。

初期症状はどちらも似ていて、血尿や頻尿といった膀胱炎症状が一般的です。膀胱内に腫瘤をみつけたら、まずはその腫瘤が何者なのかを調べます。診断するためには、カテーテル吸引生検による細胞診を行います。膀胱内病変の位置に、尿道より挿入したカテーテルの先端をキープし注射器で吸って陰圧をかけ細胞を採取します。大型犬であれば、膀胱鏡(内視鏡)で組織を採取可能です。

その後、取れてきた細胞の異型性などを病理専門医によって細胞診を行います。これは、悪性腫瘍が疑わしいのかどうかの検査であって、確定診断はあくまでも組織検査となります。また現在では、細胞のBRAF遺伝子(V595E)の変異の有無を検査することで、完璧ではないもののかなりの確率で移行上皮癌が検出できるようになりました。

治療は、悪性腫瘍の疑いが低ければ内科的に抗生剤や消炎剤で経過観察します。悪性腫瘍が疑われるなら早期の外科手術、疑いが低くても内科的な治療に反応しない場合は外科手術が推奨されます。 移行上皮癌は化学療法(抗癌剤)ではなかなか効果がみられません。獣医界では非ステロイド抗炎症薬(NSAID)のピロキシカムという薬がよく使用されます。また、近年では副作用の少ない分子標的薬も使われだしています。


膀胱内のMass


No.479 プロドラッグとアンテドラッグ

プロドラッグとは、体内に入ってから患部に到達するまでの間に、薬効成分が分解されないように化学構造を変換した薬です。投与前はほとんど活性化していない状態、もしくは不活性の状態ですが、投与後に体内で起こる代謝によって本来の薬効を示すようになります。薬物送達システム(Drug Delivery System:DDS)という、疾患部位に必要な薬効成分が、適切な時間のみ作用するように調製する技術を利用して作られる薬の一種です。インフルエンザの時に使用されるタミフル(オセルタミビル)が有名です。また、DDSを利用したその他の薬には放出制御製剤(コントロールドリリース製剤)が挙げられます。

アンテドラッグは、ソフトドラッグとも呼ばれ、特定の部位でのみ強く作用し、体内に吸収されることで急速に不活性化し効果を失う薬剤のことです。こちらも、薬の分子構造に工夫を加えることで製造されます。アンテドラッグの代表的な薬には各種のステロイド薬があります。

このように、プロドラッグとアンテドラッグとは逆のメカニズムによって作用していますが、どちらも副作用の軽減や、薬が必要な部位への吸収率を上げる事、薬の持続時間を調節する事などを目的に使用されます。まだまだ獣医界での研究や報告は少ないですが、これから使用頻度は増えていくと考えられます。


プロドラッグ タミフル


No.478 猫との散歩

近年、都会では犬と猫の飼育頭数が逆転し、犬の様に猫と一緒に屋外を散歩をされる方も多くなってきました。固体差はありますが、リードを嫌がらず中には散歩を楽しみにしている猫もいます。可能なら小さい頃からリードに慣れさせておくのがベストです。散歩には首輪よりはハーネスの方が良いです。猫も安心するし首輪が抜けて逃亡したなどという事故も防げますし、猫が引っ張った時に気管が締め付けられることもなく快適です。

散歩するのが好きな猫は嬉しそうに飼主さんの後をついて来ますが、エンジョイ出来ない場合には無理は止めましょう。また、屋外では飼主さんがコントロールしている事を忘れずに、都会で交通量の多い街では、驚いた猫が急に走り出したりして逃亡や交通事故の原因になる場合があります。必ず適切なリードとハーネスを用いましょう。

リードを使った散歩は、四肢のストレッチや運動不足解消など以外にも、様々な音を聞いたり、新しい匂いを嗅いでおもしろいものを見つけたり、猫にとって良い経験、刺激となります。また、芝生、土、砂利石、タイルや道路などをパットで触知して、パットから出るフェロモンをそこに残していきます。散歩中のパットへの刺激は屋内とはくらべものにならないほど多彩です。

慣れないうちは、くれぐれも猫が刺激に圧倒されて散歩が嫌にならない様に、最初は短い時間、場合によっては抱っこから始めましょう。猫好きのヒトが急に触ってくるのにも注意して下さい。また、犬の散歩と同様に外気温や湿度にも十分な注意が必要です。


ハーネスは子猫のうちから


No.477 犬の環椎軸椎亜脱臼 (環軸亜脱臼)

脊椎のうち第一頚椎を環椎、第二頚椎を軸椎といいます。通常、脊椎と脊椎は椎間板が間に挟まってクッションの役目を果たしていますが、環椎と軸椎の間には椎間板が存在しておらず4つの靭帯によって支えられています。生まれつき、あるいは外傷などによってこれらの靭帯の形成に異常が起こると、環椎と軸椎が亜脱臼を起こし脊髄が圧迫を受けます。このような状態を環椎軸椎亜脱臼 (環軸亜脱臼)といいます。

犬の環軸亜脱臼は大半が生まれつきの靭帯形成異常によるもので、半数以上が1歳未満に初期症状を示します。中には成犬、老犬になってから、怪我や激しい遊びなどによって症状が起こる事もあります。原因が不明の場合もあります。大多数がチワワ、ポメラニアン、マルチーズなどの小型犬種で発症しますが、中型犬以上でも認められる事があります。猫ではあまり起こりませんが、馬やラクダなど様々な動物種で報告があります。また、肥満は悪化因子です。

主な症状は、頭部を動かすと激しい痛みを感じ、頭や頚を触られることを嫌がります。抱っこをすると痛がる場合もあります。症状が軽い場合は軽い麻痺やナックリングだけの場合もあります。骨と骨が不安定なので些細な運動や衝撃で急激に症状が進んでしまう場合もあります。重症化すると起立不能となり、呼吸筋に麻痺が出ると呼吸困難になって生命に関わる様になります。

診断には頸椎のレントゲン検査、場合によってはCT、MRI検査が必要ですが、頸椎が不安定な可能性がある犬に対しては細心の注意が必要です。レントゲン写真上は本症のように見えても、MRIやCT検査で頭蓋骨と環椎の間の関節に起こる別の異常であると判明する事もあります。

症状が軽度であったり若い犬の場合には、安静と頚のコルセットを数週間装着する事で症状に改善が見られる事がありますが、外科手術によってこの2つの頸椎を固定する方法が最も有効な治療方法です。骨に特殊なピンを数本挿入して骨セメントで固める方法が成績が良いですが、犬の大きさや年齢によっては骨が柔らかすぎて手術が困難な事もあります。術後は骨同士が癒合するまでの間(6-8週間)安静が必要です。


犬の環椎軸椎亜脱臼