No.372 血小板増多症

血小板とは、血液に含まれる細胞で、骨髄中の巨核球の細胞質から産生されます。主に、血管壁が損傷した時に集合して、その傷口をふさぎ止血する役割を持ちます。出血などで血管内皮細胞が傷害を受けると、血小板が血管内皮に接着し、血小板どうしが凝集し、傷口を塞いで血栓を形成します。これを一次止血と呼びます。その後、ここから凝固因子が放出されることによって、血液中にあるフィブリンが凝固し、さらに血小板や赤血球が捕らわれて強固な止血栓が完成します。これを二次止血と呼びます。これらが乾燥したものを一般に、「かさぶた」と呼びます。なお血小板は、出血などが起こらない限り、一定期間存在したのち脾臓で処理されます。血小板の基準値は犬や猫では20万~60万/μlです。60万/μlを大きく上回る場合を血小板増多症と呼びます。

血小板増加症の主な原因は、急性出血、慢性炎症、各種悪性腫瘍、脾臓機能低下、巨核芽性白血病、内分泌系疾患です。

ヒトでは頭痛、めまい、耳鳴りなどの血管運動症状がみられる場合がありますが、一般的に動物は無症状なことが多く、重度になると、血栓症や逆に止血異常が見られるようになります。

診断は、まずは出血のチェックを行います。レントゲン検査や超音波検査などの画像診断で腫瘍のチェックをします。副腎や甲状腺などの内分泌系の検査を行う場合もあります。そこで異常が見られない場合には骨髄での異常を検出するために骨髄の検査が必要です。

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No278免疫介在性血小板症


No.371 大腸性の下痢への対処

犬や猫やフェレットで、水分吸収を行う大腸に異常があって下痢が起こる大腸性下痢は、1回の便の量は正常かもしくは少なめで、回数は頻回になります。便の形状は軟便から液状で、大腸粘液が混ざっている場合は粘液便となります。多くは急性ですので体重の減少はあまり見られません。症状が長く続くと、身体がアシドーシスという状態になって呼吸が深く速くなることがあります。

成体で持病がなく、食欲もあって嘔吐や多飲多尿などの他の症状がない場合、原因は食べ過ぎや、食べ慣れないものを食べた、環境の変化、ストレスなどの単純なものが多いですが、幼体や高齢、持病がある場合は注意が必要です。

治療は、大腸を休ませることと安静です。食事は食べ慣れたものを、普段の半分の量から、次は6分目、その次は7分目と増やしていって、3日くらいかけて徐々に元の量に戻してみてください。脱水しないように水分は十分に採らせてください。お散歩は軽めにして、ドックランなどは回復するまで止めましょう。足やお尻を洗うくらいはよいですが、全身シャンプーも控えましょう。病院では、点滴や止瀉薬、整腸剤を使用することもあります。2-3日しても改善しない場合、嘔吐や血便、食欲不振、発熱などがあれば早目にご来院下さい。

また、ウサギやチンチラ、ハムスター、ジリスなどの齧歯類の下痢は、犬や猫と違って重症であることが多いので、様子をみることはせずに早目の治療が必要です。

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No123下痢


No.370 ハムスターのウェットテイル

ハムスターのウェットテイルとは、尻尾が水溶性の下痢や腸からの分泌物よって濡れた状態になるためにこのように呼ばれます。幼体のハムスターでよくみられる症状で、重篤化しやすく生命に関わることもある消化器病です。正式な名称は増殖性回腸炎または伝染性回腸炎といいます。

ウェットテイルは、カンピロバクターなどの腸内細菌、酵母型真菌、ウィルス、トリコモナス、ジアルジアなど原虫感染をはじめとする寄生虫感染、不適切な食事、ストレスなどの原因が様々に関わって発症すると考えられています。

症状は、尾部、臀部、尻尾周辺が水溶性下痢で濡れている状態になります。ひどい場合は下半身がずぶ濡れに見えるようになることもあります、黄色下痢や水様性下痢が続いて脱水症状を伴っていることが多いです。食欲不振からの栄養不良が長引くと体重減少、削痩を呈し次第に衰弱していきます。下痢による激しいしぶりは腸閉塞や直腸脱などの生命に関わる重大な合併症を引き起こすこともあります。

診断は、まずは身体検査でお尻周りの汚れがないかを確認します。食欲不振を訴えて来院したハムスターのお尻周りが下痢便によって汚れていることが診察室で発見されることもよくあります。下痢の量が少ない場合には飼主さんがこういった変化に気づくのは難しいこともあります。外見でウェットテイルの状態を確認したら、糞便検査でジアルジアやトリコモナス原虫などの寄生虫の異常な増加や、増殖して運動性を増した腸内細菌がいないかどうかを調べます。多くの場合典型的な症状に加えて、糞便検査で細菌や寄生虫感染が認められます。

治療は、糞便検査で確認された原因によって抗生剤や抗菌剤、駆虫薬の投与を行い、下痢による脱水を予防ないし改善させるための皮下輸液などの支持療法が必要となります。重症化して腸閉塞や直腸脱が起こった場合は緊急手術が必要になることが多いです。軟便くらいのうちに早目に対処することが重要です。

また、ご自宅に迎えたころに、寄生虫などがいないかどうか、検便を含め全身のチェックを病院で受けておくことが推奨されます。ハムスターに最適な環境管理がなされていない場合にも発症し易いため、ハムスターが生活するのに適した温度(20~26度)や湿度(40~60%)を常に保つようにしましょう。また、オガクズの床敷きはやめて、紙製なものか牧草を使いましょう。


ハウスターの軟便。この段階で対処しましょう。

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No346ハムスター、チンチラの直腸脱
No54動物が快適な気温・湿度


No.369 緑内障 (Glaucoma)

眼の中には眼房水という液体が循環しています。その働きは、眼の各部位へ酸素や養分を運搬することや老廃物を除去することです。また、眼球内の圧(眼圧)を保ち、眼球の形を保持する役割も担っています(硝子体という部位も関係しています)。眼房水の産生量と排出量が一定であることは、眼圧を保持するために重要なことです。様々な理由からその排出量が減少すると眼圧は上昇します。

緑内障は、眼圧上昇が主な原因となり視覚障害が進行していく病気です。原因に伴って二次的に眼圧が上昇する場合と、もともと素因を持っている動物が発病してしまう場合があります。主な初期症状は、眼が大きくなる、眼の充血、涙の増加、眼をしょぼしょぼする、こするなどの違和感や、眼の痛みを訴えることなどです。もしも、高い眼圧のまま1日以上経過してしまうと視覚を喪失してしいます。そのため、緑内障の発症に気が付いた際には、すぐに治療を開始する必要があります。ただ、早期治療が功を奏する場合ばかりではありません。

緑内の治療をする際、全身状態とともに眼圧上昇の原因を考えます。原因が判明すればその治療法を検討しますが、まずは眼圧をコントロールする治療を開始します。一般的な治療は、眼圧降下作用のある点眼薬のうち、最も適したものを選択して使用することです。必要ならば、眼圧降下作用の期待できる薬剤を注射することもあります。痛みの軽減や併発症に対する治療も行います。また、他方の眼に、発症リスクがあると判断されれば、予防的な点眼を始める場合もあります。すでに視覚を喪失し、回復の見込みがない場合は、痛みの除去と眼球の形状を保持する方法を考えます。レーザー治療、シリコンボールの挿入、眼内への薬物注入などの方法があります。実際には点眼治療によって、視覚よりも眼球形状の維持に努めるケースの方が多いです。


大きくなっている右眼が緑内障です


No.368 ハムスターの頬袋脱

ハムスターには大きく広がる頬袋が左右一対あります。この中に食べ物や床材を入れて運ぶのですが、この頬袋が反転し口から飛び出したままになってしまうことがあり、これを頬袋脱といいます。ハムスター全般でみられますが、ジャンガリアン、キャンベルハムスターに多くみられます。

頬袋は予想以上に大きく、前足の辺りまで物を詰め込むことが可能です。頬袋脱の原因は、頬袋の損傷・感染、腫瘍などのほか、内側に張り付いた食事や床材を取ろうとして飛び出してしまう場合もあります。食事を詰め込み過ぎて中で詰まってしまい、腐敗してしまうこともあるので注意が必要です。炎症が少ない場合や単純な脱出のみであれば戻せる場合もありますが、戻せない、繰り返し起こる、時間が経過している、重度の炎症や腫瘍を伴う、組織が壊死してしまっている場合などは切除手術が必要となります。

切除手術は、脱出した頬袋の状態や原因にもよりますが、比較的大人しいハムスターの場合は局所麻酔でも可能です。当院ではサンダービートという外科用エネルギーデバイスを使用することにより、短時間での手術を行っております。頬袋脱の時は食事もできないので早目の対処が必要です。


ジャンガリアンハムスターの頬袋脱

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No275 外科用エネルギーデバイス


No.367 無麻酔歯石取りの危険性

近年、無資格者や一部の獣医師による、麻酔をかけずに行う、犬や猫に対する無麻酔歯石取りによる弊害が多発しています。無麻酔での歯科処置は、アメリカ獣医歯科学会をはじめ国内外複数の団体によって、危険で不適切な行為であると注意喚起されています(日本小動物歯科研究会→無麻酔で歯石をとる?! (sadsj.jp))。獣医師以外による動物の口腔内への施術は法律的にも認められていません。動物の状態を正しく評価せずに、無麻酔で長時間動物を押さえつけて実施する歯科処置は、動物に恐怖や苦痛を与えるだけでなく、十分な歯科処置ができない上に非常に危険です。

歯石除去は、各歯1本1本のきちんとした評価をして、歯周ポケットや歯の裏側まできちんと行うことが重要です。状態によっては抜歯や様々な口腔内の治療も必要となります。歯石は細菌の塊です。動物が処置中にむせて、取った歯石が気道に入ると気管支炎や肺炎を起こすことがあります。菌血症となり心臓や肝臓などのトラブルに発展する場合もあります。一見健康そうに見える歯の歯根や骨にトラブルが起こっている場合はよくあって、臨床獣医師の多くが経験しています。また、歯石や歯周病によって下顎骨が弱っている動物に処置を行って骨折させた例もあります。押さえつけることによる股関節脱臼や膝蓋骨脱臼も報告されています。

安全に適切な歯科処置を行うためには全身麻酔下で処置を行う必要があります。全身麻酔は100%安全とは言い切れませんが、適切な術前検査や麻酔管理によってリスクは限りなく小さくすることができます。動物の年齢や性格、持病の有無などの情報だけでは歯石取りや麻酔のリスクは判断できません、術前検査(血液検査、レントゲン、超音波検査など)によって当日の健康状態や持病の重症度などを詳細に評価することが重要です。持病を持つ高齢動物でも、検査結果に基づいて麻酔薬を選択したり起こり得るリスクを予測し、予め対策・準備するなど適切な麻酔管理を行えば、多くの場合安全な麻酔下での歯科処置が可能です。


猫の下顎骨折のレントゲン写真

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No248スケーリングと犬の寿命
No187高齢動物の全身麻酔のリスク
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No108高齢動物の歯の疾患
No98歯周病2
No97歯周病1
No18歯石


No.366 消化管間質腫瘍 (Gastrointestinal stromal cell tumor:GIST)

犬の消化管間質腫瘍はGIST(ジスト)ともいわれ、近年、犬でよく診断されるようになった胃や腸の悪性腫瘍の一種です。新たにGISTとして分類されるようになったものの中には、従来は平滑筋の腫瘍などに分類されていたものもあります。GISTは筋層に発生する腫瘍です。筋層の中の消化管運動のペースメーカーの役割をするカハール介在細胞という細胞が腫瘍化したものがGISTです。

GIST発生の詳しい仕組みは分かっていません。カハール介在細胞の表面には、KIT(キット)と呼ばれるたんぱく質があり、特定の物質の刺激で細胞に増殖するよう伝達をする、細胞増殖のスイッチのような働きを持っています。GISTの症例の一部では、KITを作るための遺伝子(c-kit遺伝子)に変異があることが分かっており、このことがGIST発生に関わっているのではと考えられています。

GISTの症状は、嘔吐、食欲不振、元気がない、体重減少などですが、腫瘍が大きくなるまで症状が現れにくく気付かれにくいといわれています。特に症状がなく、健康診断などでたまたま見つかる例も多いです。

診断には、症状、触診、血液検査、レントゲン検査、超音波検査、FNA検査、場合によってCT検査を行い、手術で摘出したものを組織検査をして確定診断をします。症状の緩和や全身の状態を改善するための治療も同時に行います。GISTは、肝臓、脾臓、腸間膜リンパ節などへの転移も報告されています。放置すると、腫瘍細胞により腸管がもろくなり穴が開いてしまって腹膜炎になることもあります。

治療の基本は外科的な摘出です。化学療法としては、腫瘍細胞の表面にある異常なKITの細胞増殖シグナルを抑える分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害剤)を、補助的または手術が困難な症例で使用することがあります。化学療法を行う場合は投与前にc-kit遺伝子変異解析を行うことが推奨されます。再発や転移の可能性があるので、手術後も経過に注意する必要があります。

犬の胃のGIST
(手術時の写真が出ます。苦手な方はクリックしないで下さい)


No.365 門脈体循環シャント (Portosystemic Shunt:PSS)

門脈体循環シャント(PSS)は、本来肝臓に入るべき胃腸からの血液が、シャントと呼ばれる異常な血管を経由して肝臓で解毒を受けないまま全身を巡ってしまう疾患です。胃腸からの血液には、アンモニア、メルカプトン、短鎖脂肪酸など数多くの毒素が含まれており、解毒を受けなければ体に害を及ぼします。この解毒業務を受け持っているのが肝臓です。正常であれば胃腸からの血液は、門脈と呼ばれる専用の血管を通じて肝臓内に入り、解毒を受けて全身を巡る血液循環(体循環)に合流します。しかしシャント血管があると、門脈から体循環につながる血管に近道ができてしまっているため、解毒を受けていない血液がそのまま体循環に混入してしまいます。その結果、有害な物質が体の各所に届くようになり、様々な弊害を生み出すと同時に、肝臓が栄養失調に陥って小さく萎縮していきます。この状態が門脈体循環シャント(PSS)です。

PSSは先天性のものと後天性のものがあります。先天性は生まれた時からシャント血管が存在します(一般的には先天性が外科治療の対象です)。後天性は何かしらの原因(肝臓の炎症、繊維化など)によって門脈圧が亢進し、複数のシャント血管できてしまいます。後天性は多発性(マルチプル)といわれ、太かったり細かったりする様々な血管から、解毒されていない血液が後大静脈に流れ込みます。このようなタイプは基本的には手術が適応ではありません。

PSSの犬や猫は、シャント血管の場所や太さによって様々な症状を示します。先天的な異常であるため、子供の時から同腹の子と比較して体格が小さく、体重増加が見られないなどの発育障害が生じます。また、食欲不振、うつ、下痢や嘔吐、多飲多尿などもみられます。門脈シャントが原因の尿石症で血尿や排尿困難を呈する場合や、肝臓による解毒が出来ないために起こる、運動失調、昏迷、脱力、円運動、こん睡などの神経症状が認められる肝性脳症が起こる場合もあります。しかし、症状がほとんどなくシニアになるまで発見されない症例もたくさんいます。猫ではcopper eyeという銅色の眼を呈する子もいます(copper eyeだからといって必ずしもPSSだとはいえません)。

PSSでは、血液検査の特徴として血液中のアンモニアや胆汁酸の高値を認めることがあります。通常犬の血液中の胆汁酸の濃度は25μmol/L以下と非常に微量ですが、重度な肝障害や門脈血流が大静脈に流入すると、血中の胆汁酸の濃度が異常な高値になります。胆汁酸は肝臓に極めて特異性の高い物質です。肝臓の逸脱酵素や胆管酵素に異常が認められない場合でも、肝機能や門脈循環に異常がある時には必ず上昇するので、これらの疾患が示唆される症例においては非常に有用な検査となります。また、超音波検査もPSSに有効な検査法です。

確定診断には、以前は全身麻酔下で開腹をしての門脈造影検査が必要でしたが、現在では、血管造影CT検査を行うことによって、開腹をしなくても鮮明に腹部内の血管を確認することができるようになりました。それによってPSSの確定診断が得られるようになるだけなく、シャント血管のいろいろなタイプを分類できるようになり、さらに、どこでシャント血管を処理すれば、最も良い治療効果が得られるかについても術前に評価できるようになりました。

治療は先天性の場合は通常外科手術が第1選択です。シャント血管を縫合糸で結紮、閉鎖する方法が一般的です(この手術の数日後に一次的な痙攣が起こることがあります)。しかし、シャント血管が数本ある場合(マルチプルシャント)は手術が非常に困難なことが多く、治療が難しくなります。手術以外の治療は、点滴や低蛋白食、抗生物質などの内科的な対症療法に限定され、内科治療のみで治ることは残念ながらありません。重度発症の場合は、生まれてすぐ、あるいは数ヵ月で亡くなる確率が高い病気です。遺伝的な要素が指摘されているため、門脈シャントの遺伝子を持つ可能性がある動物は繁殖に使わないことが薦められます。


宮崎大学獣医学部のホームページから引用


No.364 フクロモモンガの自咬症

フクロモモンガはストレスによる自咬症がよく起こるため、ストレスを溜めない飼育環境作りが大切です。ストレスがたまると、尾や手足など体の一部を咬み壊したり、毛を抜く異常行動がみられます。酷い時は骨まで齧ってしまいます。

野生では6~7頭以下の群れで生活をしています。この群れの中で社交性を持ち、主に声を出してコミュニケーションをとっています。この性質を考えた飼育が必要です。単独飼育であれば、十分にヒトとの接触をもった良い関係を保つため、部屋の中で遊んであげたり運動させることが必要です。

飛膜を使い滑空する動物で野生では50mくらいは滑空します。しかし、飼育下ではどんなにケージが大きくても十分な運動は確保できません。せいぜい5~6m程度滑空すればよいほうです。運動ならびに滑空しないことで肥満になることはもちろん、筋肉や骨の発達に大きな影響を与えます。運動や滑空することでストレスの予防になります。

部屋に放す場合は事故や誤食に十分注意してください。部屋に放しても最初はうろうろしたり、ぴょんぴょんと飛び跳ねるなど駆け回るくらいかもしれませんが、好奇心旺盛なので部屋に変化を作ったり、登れる場所を設けると喜びます。ハンガーに服をかけ壁に設置するだけでも登れる場所になります。ヒトに馴れてくると、ヒトがおやつを見せると自然に近づいてきます。おやつを手に持って届きそうで届かないような距離で見せます。最初は手に乗らずに伸びをして取ろうとしますが、届かない場合は手に飛び乗ってきます。この距離を毎日少しづつ長くしてみてください。また、猫じゃらしを必死で追いかけるようなフクロモモンガもいます。これも運動不足解消になります。

自咬症が起こってしまった場合は、早目にカラーをして物理的に齧れない様にします。傷のケアをしながらストレスの解消を考えます。傷が完全に治るまでカラーは外せません。再発防止には、飼育環境の整備の他、代替医療や、場合によっては薬剤の力が必要です。治療はケースバイケースですが、大変なことが多いので予防がとても大切です。基本的には、出来れば複数飼い、適切な飼育環境、ヒトとの関係をよくすること、運動をしっかり行うことが自咬症の予防です。

自咬症で尾が変形してしまったフクロモモンガ

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No.363 フクロモモンガの飼育

フクロモモンガは野性では群れで生活しているため、社交性を考えた飼育環境が必要です。複数で飼うことが理想ですが、単独飼育の場合は飼主さんとの良い関係性が大事です。

活発な動物なので、活動する空間として大きくて高さのあるケージが理想です。夜行性なので主に夜に活動します。昼間は部屋を暗くしたりケージにカバーをかけます。ケージの中には飛び回れるように枝や蔦を入れて、高い位置に休息スペースとしての棚を設置して下さい。また、枝や棚(踊り場)の他に、エサ容器や給水器などをレイアウトします。休む場所である小屋あるいは寝袋なども必要です。また、ケージの外に放すことで運動量を増やして下さい。部屋に放す場合は、事故や誤食に注意して下さい。ケージを広くする以外に、飛翔させることと、匂いで人に馴らすことがポイントになります。

糞や尿を決まった所にする習性がないためトイレを覚えにくいので、こまめなケージの掃除をしなければなりません。気温が21℃以下になると動きが鈍くなり休眠します。休眠中は体温を約15℃くらいに下げて活動も食事の量も減ります。また、夏場はケージを直射日光が当たる所や締め切った部屋に置くと熱中症になる可能性があります。部屋の温度を管理し涼しい場所に置いてあげて下さい。冬の寒い時期は保温器具で寒さを防ぐ工夫をして下さい。24℃~27℃が理想です。自ら積極的に毛づくろいをするため入浴やシャンプーなどの必要はありません。

フクロモモンガは雑食性で、野性では、樹液、果汁、花粉や花蜜、昆虫などを食べています。昔は果物や昆虫を主食として飼われていましたが、代謝性骨疾患が多発し、短命に終わっていました。そこで食事の果物や昆虫に、カルシウムやビタミン剤を添加する方法がとられたきましたが、現在ではペレットを主食にすることがオススメです。基本的にフクロモモンガ用ペレットを中心に、果物や野菜、動物性蛋白質(昆虫、ミルワーム、低塩煮干しやチーズ、ゼリーなど)を与えて下さい。活動し始める夜の早いうちに給餌します。選り好みも強く偏食する傾向がありますが、嗜好性の高い甘い果物を主食にはしないように注意して下さい。肥満と歯のトラブルの原因となります。


甘いものの食べ過ぎには注意

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