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No.336 朝食前に黄色いものを吐く犬猫

朝食前に黄色いものを吐く犬や猫は結構たくさんいます。吐いた後にケロッとしている場合が多いので見過ごされがちです。ネットを検索すると、朝吐く犬や猫はお腹が空きすぎて胃酸・胆汁などの消化液が多く分泌され、この消化液が胃を刺激することで胃液を吐いてしまうと説明されていて「逆流性胃炎」「胆汁嘔吐症候群」などという名称が付けられています。しかし、これは最近誤りだということが分かってきました。

たしかに空腹時間を減らすとこの症状が軽減する場合もありますが、そもそも健康な犬や猫は12~24時間ぐらいの絶食では嘔吐はしません(ヒトも同じです)。朝食前に黄色いものを吐く犬や猫を精査すると、十二指腸炎や膵臓のトラブル、肝臓・胆嚢の疾患などが多く認められます。また実際に治療を行うと症状が治まる場合が多いです。

きちんとしたを診断するには、血液検査、便検査、レントゲン検査、超音波検査、内視鏡検査などが必要です。詳しい検査をした方が良い目安は、
・月に3度以上黄色いものを嘔吐する
・整腸剤などの簡単な治療に反応しないか、反応しても投薬を止めると同じ症状が出る
・3ヶ月以上症状が続いている
・小腸性の下痢がある
などです。

朝食前に黄色いものを吐くという症状を軽く考えず、早目に対処をしましょう。


朝食前に黄色いものを吐く場合は要注意

こちらもご参照下さい
No280リンパ球形質細胞性腸炎と炎症性腸疾患
No189膵炎
No154超音波検査
No141消化管内視鏡
No123下痢
No70胆嚢疾患


No.335 犬のレプトスピラ症 (Leptospirosis)

先日、逗子海岸でレプトスピラに感染して亡くなった犬の報道がありました。レプトスピラ症は、スピロへーター科・レプトスピラ属の細菌によって引き起こされる人畜共通伝染病です。犬だけでなく、牛、馬、豚、山羊、羊などの家畜をはじめ、ネズミやコウモリ、キツネなどの野生動物を含む多くの哺乳類に感染します。ヒトでは4類感染症に定められ、動物では一部の血清型が家畜伝染病予防法により届け出義務があります。

菌の感染はレプトスピラ症に罹っている動物の尿中に排泄された病原体を直接あるいは間接的に取り込むことによって成立します。つまり、尿で汚染された水や食物を摂取することで起こるということです。媒介の主役は都市部ではネズミだといわれています

レプトスピラ感染症は世界的に広く分布し特に高温多湿の熱帯亜熱帯で発生が多く、日本では関西以西での発生が主となっています。犬での発生状況は減少傾向ですが、毎年30件前後の発生報告があります。

感染した動物は急性の風邪の様な症状から、黄疸・出血・発熱・腎機能不全・肝機能不全を伴う症状を示します。一方で感染してもほとんど症状を示すことなく、菌を排出し続ける場合もあります。動物の種類によっては数週間から数年に渡り菌を排出します。また、犬は他の動物種よりも、腎不全・肝不全になる場合が多く、ハムスターは感染すると1週間ほどで死亡すると言われています。

診断は、禀告、臨床症状、菌の動態、抗体の推移等も考慮して総合的に行います。近年では血液を用いたPCR法・血清学的診断法の組み合わせにより確定診断します。潜伏期間は、数日から20日程度で、感染後1~3週間後に抗体価は最大になります。菌は発症前から間欠的に血中に現れ、抗体価の上昇とともに血中から消失し、尿中に排出されます。

治療は対症療法が中心で、腎障害、肝障害に対する治療、消化器症状に対する治療、DIC(→No144播種性血管内凝固症候群(DIC))に対する処置が必要となるケースもあります。病原治療としてはペニシリン、ドキシサイクリンなどの抗菌剤を使用します。

横浜市でこの病気を過度に恐がる必要はありません。全国手的にも感染犬はとても少数ですし、早期に発見してきちんとした治療をすれば助けられることの方が多いです。また、血清型が合わないと意味がないのですがワクチンもあります。当院にも御用意があります。ご心配な方はご相談下さい。


レプトスピラ症のワクチン


No.334 錠剤の飲ませ方

犬や猫に錠剤やカプセルを飲ませる基本的な方法をご説明します。確実なのは下記の方法です。

1.「今から飲ませるぞ」とヒトの方が構えてしまうと、犬や猫も嫌な予感がして警戒してしまいます。薬は見せないようにして、「何でもないよ」といった感じで近付きましょう。お薬を用意するところも見せない方が良いです。

2.優しく撫でながら背後から体をおさえ、利き手と逆の手の親指と人差し指・中指を犬歯のすぐ後ろに入れ、利き手も使って顔をしっかり上に向かせます。

3.利き手の人差し指・中指で薬を持ち、残りの指で下顎を引っ張り口を開きます。

4.喉の奥めがけて薬を落とし、利き手の人差し指で薬を一押しして喉の奥に押し込み、両手で口を閉めます。カプセルの場合は向きに注意しましょう。

5.10秒ほどそのまま上を向かせておき、喉を優しく撫でます。舌がペロっとしたらきちんと飲めている証拠です。よくわからない場合は口を開けて確認しましょう。

6.お薬の種類によっては、この後、シリンジなどでお水を少量飲ませる場合もあります。上手く飲めたら誉めてあげましょう。

上を向けることと、一押しがコツです。上手く行かない場合はご相談下さい。


No.333 変性性腰仙部症候群 (馬尾症候群 Degenerative LumboSacral Stenosis;DLSS)

変性性腰仙部症候群とは、腰仙椎移行部(第7腰椎と仙椎の間)の病変により神経徴候が現れる疾病で、腰部の痛み、後肢の跛行・歩様異常、酷くなると歩行困難、排尿・排便以上が出現します。馬尾症候群やDLSSとも呼ばれます。ボーダーコリー、ボクサー、ジャーマンシェパード、雑種犬などの中~大型犬に多く、使役犬やアジリティー犬でよくみられます。また2:1で♂の方が多いといわれています。小型犬や猫にもみられますが稀です。中年齢以降(平均7歳)で徐々に症状が進行する慢性疾患です。

原因は、
・椎間板ヘルニア Hansen II型(→No82椎間板ヘルニア1No83椎間板ヘルニア2)
・関節間靭帯の肥大
・仙椎アライメントの不整
・L7(第7腰椎)の骨棘形成
・仙椎間関節突起の骨棘形成
・硬膜の線維化
上記の様なものから、腰仙部の慢性進行性の変形により神経が圧迫や血行障害などを受けることで発症します。

疑う初期症状は、
・運動後やジャンプ後に動きたがらなくなる
・腰仙部を圧迫すると痛がる
・後肢を後ろに伸ばすと痛がる
・後肢伸展時の痛みに左右差がある
です。通常いずれも慢性経過を辿ります。

診断は、症状と神経学的検査、直腸検査も有効です。レントゲン検査、脊髄造影、CT、MRIが必要なこともあります。

治療は薬剤による疼痛管理と安静が基本ですが、半導体レーザー、代替医療などが効果的な場合もあります。重症例は手術ですが、背側椎弓切除術(Dorsal Laminectomy)、外側椎間孔切除術(Lateral Foraminotomy)などの手術法が報告されていますが、かなり難易度の高いものです。全身麻酔は必要となりますが、硬膜外ステロイド投与は比較的簡単に行えて効果的です。


変性性腰仙部症候群のレントゲン(すべての症例がこのように見える訳ではありません)


No.332 肛門腺 (Anal glands)

肛門を時計に見立てて4時と8時の位置に一対の袋があり、肛門腺と呼ばれています。そこに貯留する分泌物は通常は興奮時や排便時に、肛門に入ってすぐの肛門腺の出口から排出されます。色や形状は様々で、透明、黒、緑色だったり、液状、泥状や固い固体に近いものもあります。分泌物は独特の強い臭いを出します。スカンクのおならで有名です(実際にはおならではありませんが)。

肛門腺の分泌物は中~大型犬の場合、排便と一緒に絞られて排出されるので大きな問題になることは少ないですが、小型犬や猫では、うまく分泌物が排出されずに肛門嚢内に残存することで、違和感や痛みを感じたり、炎症を起こしたり破裂したりすることがあります。そのため、定期的に肛門腺を出して予防する必要があります。目安は月に1度程度、中~大型犬でも溜まっている場合は絞った方が良いです。

肛門腺が溜まった時の症状は、
・お尻をこすりながら歩いている
・よくお尻を噛んだり舐めたりしている
・お尻付近を触ると怒る
・排便時に痛がる
・肛門付近から分泌物が出ている
などがあります。

絞り方は、

1.尻尾を上げる:尾をまっすぐ上に持ち上げます。

2.肛門嚢の位置を確認:肛門嚢は肛門の4時と8時の位置にあります。

3.絞る:肛門嚢の位置が確認できたら、その少し外側に指を置き、やや頭側に指を押し込みます。押し込んだところで肛門嚢を指で挟み込む感覚で肛門側に分泌物を出します。

強い力は必要ありません。慣れないうちは片側ずつやってみて下さい。分泌物は臭いが強く、こぼれる場合もあるので、お風呂場や汚れても大丈夫な場所で行うのがおすすめです。上手く出ない場合や出血が見られる場合、傷になっている場合、痛みがある場合は、無理をせずに診察を受けて下さい。

当院では、予防注射と犬の場合フィラリア予防(犬の場合)をきちんとしていただいているワンちゃん猫ちゃんには、肛門腺の処置は爪切と共に無料で処置させていただいております。上手く行かない場合はお気軽にお声掛け下さい。


No.331 子宮蓄膿症(Pyometra)

子宮蓄膿症は子宮内に膿が蓄積されて起こる疾病です。発情期を過ぎたあたりに膣から子宮の中に、大腸菌、ブドウ球菌などの細菌が入り込んで生じる子宮内膜炎が引き金となります。細菌感染が体の免疫機能を上回って、炎症で生じた膿が子宮内に大量に蓄積されてしまった状態です。さらに、菌そのものや、細菌がつくる毒素が体の中を廻り、最終的にはDIC(→No144種性血管内凝固症候群)、敗血症や腎、肝不全をはじめとする多臓器不全などの合併症から危険な状態に陥ります。また、その過程で拡張した子宮が破裂し、膿が腹腔内に漏れて腹膜炎を生じてさらに緊急化することもあります。

子宮蓄膿症は、6歳以上の不妊手術を受けていない雌犬に4頭に1頭程度の確率で生じます。特に中高齢犬で、今まで出産したことがない犬、または長く繁殖を停止している犬に多いと言われています。犬以外にも、猫、ウサギ、フェレット、ハムスター、ハリネズミなど、多くの哺乳類でみられます。

原因は、発情後1~2ヶ月間の黄体期に出る黄体ホルモン(プロジェステロン)にあるといわれています。プロジェステロンには細菌感染の温床になる子宮内膜の増殖、子宮の出入り口となる子宮頚管を閉ざす役割、さらに体の免疫力を下げてしまう働きがあり、これらの要因が組み合わさって子宮蓄膿症が生じます。排卵後には犬の体は妊娠、出産の準備のためプロジェステロンが分泌され始め、これが子宮壁の嚢胞性過形成(子宮内膜が厚くなり、水膨れしたような状態になること)を引き起こします。この状態の子宮粘膜は細菌感染しやすい環境になっています。子宮内に入り込んだ細菌は健康なら免疫機能によって自然に排除されますが、黄体期には精子を受け入れられるよう緩んでいた子宮頚管が閉ざされるため、細菌感染による炎症産物が子宮内から排出しにくくなり子宮蓄膿症となります。

診断は、発情の1-2ヶ月後の膿の様な帯下、多飲多尿、お腹が膨らんできたなどの症状と、レントゲン検査、超音波検査で行います。また、全身状態を把握するための血液検査も重要です。子宮蓄膿症に類似の病気として、子宮水腫、子宮粘液症という子宮内に膿ではない体液や粘液状のものが貯まってしまうものや、子宮の腫瘍などとの鑑別が必要です。乳腺腫瘍(→No68乳腺腫瘍1No69乳腺腫瘍2)を併発している場合も多いです。

子宮蓄膿症の治療の基本は外科手術です。卵巣子宮摘出術を行って、外科的に膿が溜まった子宮と原因となる卵巣を取り除くことがベストです。しかし、合併症を生じていることも多く、通常の卵巣子宮摘出術(→No286不妊手術.No125去勢手術・不妊手術)と比べてリスクの高いものとなりがちです。DICやPre-DICの状態では、輸血(No173犬の血液型と輸血No174猫の血液型と輸血)の用意が必要な場合もあります。内科的治療に関しては、プロジェステロンの働きをブロックすることを目的とするアグレプリストン(Alizin)が欧米で承認を受けて使用されるようになってきていますが、日本ではまだ承認されていません。

予防は若い時期の不妊手術です。繁殖の予定がない場合は不妊手術を受けましょう。

子宮蓄膿症の子宮(手術時の写真が出ます。苦手な方はクリックしないで下さい)


No.330 眼瞼腫瘍

犬の眼瞼(まぶた)に発生する腫瘍の20~30%は組織学的に悪性と言われていますが、逆に言えば大半(80~90%)のものが臨床的に良性です。性差はなく、どちらかというと上眼瞼に発生しやすいです。好発犬種としては、ビーグル、シベリアンハスキー、イングリッシュセッター、プードル、ジャックラッセルテリア、ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバーといわれていますが、どの犬種でも発生します。もっとも多いものはマイボーム線由来の良性の皮脂腺腫です。また、犬の眼瞼腫瘍は局所再発はみられますが、他部位への転移は稀です。

猫での眼瞼腫瘍の発生は少ないですが、発生したら、扁平上皮癌、肥満細胞腫、メラノーマなどの悪性のものである確率が高いです。とくに白い猫に多いです。

治療は外科的な切除と凍結手術が中心となります。眼瞼部はあまりサージカルマージンは取れませんが、犬での報告で、再発率は外科切除で15%、冷凍外科手術で11%、再発するまでの期間は外科手術で28.3ヶ月、冷凍外科手術で7.4ヶ月であったというものがあります。

眼瞼の1/4-1/3くらいまでの大きさなら手術は大変ではありませんが、それ以上になると、他の部位の皮膚で眼瞼を形成する必要があり、手術が頻雑になります。とくに腫瘍が角膜表面に当たってしまっている場合は早目の治療が必要です。眼に限らず、天然孔(眼、耳、鼻、口、外陰部、肛門)の近くの腫瘍は、なるべく小さなうちに対処する必要があります。


犬の上眼瞼の腫瘍


No.329 便秘はなぜ悪い

便秘の時には、気持ち悪さや腹痛を伴うことが多いです。このような便秘時の症状を便秘型IBS(過敏性腸症候群) といいます。しかし、それ以外にも便秘は体にダメージを与えます。

腸の働きは、食物から栄養分を吸収し、不要なものを便として排泄するのが最も重要な機能です。しかし、ヒトの研究ですが最近わかってきたことがあります。腸は「第2の脳」とも呼ばれ「考える臓器」でもあるのです。脳内の神経伝達物質であり、精神を安定させる作用を持つ、セロトニンの90%以上が腸で作られるという報告もあります。また、ドーパミンという快楽に関係した作用を持つ神経伝達物質も、50%程度が腸で作られるとされています。ストレスなどで腸の働きが落ちるとセロトニンやドーパミンの分泌が低下します。そうすると、鬱病などの心の病気になってしまいます。また、ヒトの腸内には約1億個以上の神経細胞があり、網目状のネットワークを構成しています。この神経細胞は脳からの司令を受けることなく機能しています。すなわち腸には自律機能があります。

便秘の定義はまだきちんと決まったものがありません。しかし、食べたものが消化され排便されるまでの時間はヒトでは24時間が目安ですから、1日1回以上の排便がなければ厳密な意味では便秘ということになります。便が長期間腸内に留まると腸内細菌叢(腸内フローラ)に悪影響を及ぼします。腸内細菌叢は、乳酸菌、ビフィズス菌など約5000種類の菌が600~1000兆個あり身体を守っています。腸内細菌叢の具体的な働きは、免疫力を高める、感染防御、消化吸収の援助、ビタミンの合成、腸管運動を促進させるなどです。また、ヒトが持つ免疫細胞の70%以上が腸に存在していると考えられていて、いわゆる善玉菌が減り悪玉菌が増えると、発癌物質、発癌促進物質、アンモニア、硫化水素、メタン、活性酸素などの有害物質を発生させます。これらはIBSの原因にもなります。便秘の時のおならが臭いのもこのせいです。そして、これらの有害物質が腸壁から吸収され、下痢や便秘の他にも、肌荒れや疲労感、アトピー、口臭、高血圧、糖尿病、肥満、炎症性腸疾患、癌などを引き起こすと考えられています。動物での研究はまだまだですが、おそらくヒトと同じ様なことが起こっていると推察されます。


図はNexWelさんのウェブサイトから引用

こちらもご参照下さい
No314慢性腎不全(CKD)と便秘
No304糖尿病
No280リンパ球形質細胞性腸炎(LPE)と炎症性腸疾患(IBD)
No271猫の便秘
No259高血圧
No163脳腸相関
No164脳-腸-微生物相関


No.328 尿石症:腎・尿管・膀胱・尿道結石

腎臓・尿管・膀胱・尿道の尿路系に結石ができることを尿石症といいます。結石がどこに形成されるかによって名称が異なり、腎臓にできれば腎結石、膀胱と腎臓をつなぐ尿管内にできれば尿管結石(→No158猫の尿管結石)、膀胱内にできれば膀胱結石、尿道内にできれば尿道結石と呼びます。結石の種類にはいくつかあり、ストラバイト、シュウ酸カルシウム、尿酸アンモニウム、シスチンが代表的ですが、これらが混合してできる場合もあります。犬猫だけでなく、どの動物種でも起こる可能性があります。

多くは遺伝的な素因が原因となりますが、活動性の低下や肥満、栄養摂取、飲水量にも関連していると考えられています。また尿路感染症や副腎機能亢進症、門脈体循環シャントなど多くの病気とも関連性が知られており、特に尿路感染症は併発していることが多いです。また尿道結石の場合、ほとんどがオス犬やオス猫で見られます。これはオスの方がメスよりも尿道が細いため、結石が尿道につまりやすいためです。

尿石症における主な症状は、血尿や排尿痛、排尿困難など排尿に関わる問題が挙げられます。しかし腎結石や尿管結石などの場合は特定の症状として見られることは少なく、状況によって元気食欲の低下や発熱、腎障害などが見られることがあります。「おしっこが出ない」「何度もトイレに行く」「排尿時に変な鳴き声をする」「血尿がでる」といった症状があれば膀胱結石や尿道結石などの可能性があります。「食欲がない」「元気がない」「お腹を痛そうに丸めている」といった症状は他の病気にも当てはまりますが、尿管結石などによる腹痛や腎結石の可能性も考えられます。無症状のこともあるので注意が必要です。

診断は、症状、尿検査、画像検査、血液検査によって行います。尿検査では、尿中に結石の成分である結晶や細菌感染、炎症の有無などを見ることができます。特に膀胱結石や尿道結石などの下部尿路の結石は見つけやすいです。画像検査では、腹部のレントゲン検査や超音波検査を行うことで、腎臓、尿管、膀胱、尿道内のどこに結石が存在するのかを判断することができます。血液検査では、結石によって腎不全や炎症、感染などを引き起こしていないか、他の病気が隠れていないかを評価することができるため、全身状態の把握を行うことが可能です。

結石の存在する場所によって治療法が異なりますが、多くは結石を外科的に摘出する必要があります。ただし、ストラバイト結石などは大きさにより、食事療法による内科治療で結石を溶かすことができることもあります。そのため結石の種類を同定することは重要です。どんな結石の場合も食事療法の併用が重要となります。腎結石の場合は、症状や悪影響を認めない限り、食事療法のみで経過観察を行うことも多いです。尿管結石の場合は、腎不全を引き起こし命に関わることもありますので、内科的治療への反応が悪ければ、早期の外科治療が必要です。膀胱結石の場合は結石の大きさや症状によって外科的に摘出する場合と経過観察をする場合があります。尿道結石の場合は、尿が出なくなっている場合が多いので、緊急の処置が必要です。

予防は水分をしっかり取ること、尿を我慢させないこと、食事の見直し、定期的な健康診断です。


犬の膀胱結石


No.327 ウサギの骨折

ジャンプ力に優れているウサギの骨は、ヒトや犬、猫などと比較するとずっと軽くて薄く、脆いです。体重に対して骨の占める割合を比べると、人間は18%、犬は14%、猫は13%に対し、ウサギは7%です。ウサギは、外敵から逃げやすくするために骨が軽くなったといわれています。そのため、外傷では骨折がとても多いです。特に肢や腰の骨の骨折が多いですが、全身の骨が脆いのであらゆる骨を骨折します。

骨折の原因は、高い場所からの落下、着地の失敗、誤ってヒトに踏まれる、ケージやドアに挟まる、すのこに肢を引っ掛ける、抱っこを嫌がり暴れるなどですが、筋肉量に対して骨の量が少ないため、自分の筋力(いわゆる足ダンでも)で骨折を起こしてしまうことがあります。また、病気(上皮小体機能亢進症や骨粗鬆症、腫瘍など)に付随して起こる場合もあります。

治療は、骨をピンやプレート(→No180ロッキングプレート)で固定する手術、バンテージでの固定、ケージレスト(動きを制限すること)などを組み合わせて行います。骨折した部位や受傷部位の状態、うさぎの年齢や一般状態などにより、どの治療方法を取るかを判断しますが、体が小さい場合が多く、プレートなどの強固な固定が可能なインプラントが使えない場合があるのと、骨が脆いため、犬や猫よりも治療が難しい場合が多いです。

骨折の治療はウサギに限らず、最初の2週間がとても重要です。自己治癒能力で、骨折を治すための細胞や蛋白がどんどん産生されるのが初めの2週間です。また、術後の安静も重要です。ウサギは穴を掘るのが好きなため、とくに前肢の骨折では、環境の整備やきちんとした看護が必要です。繰り返しになりますが、骨が脆いため、犬や猫なら2-3ヶ月くらいで完治するものがウサギはそれ以上かかります。最悪の場合断脚の可能性もあります。


ウサギの橈尺骨折 ピンディングでの治療