高齢の動物に麻酔をかける時は、若い動物と違い、いくつかのリスクがあります。基本的には、麻酔前の一般状態と血液検査、レントゲン検査、超音波検査などの通常の検査で大きな異常がなければ、年齢が高いから麻酔ができないということはありません(若いに越したことはありませんが)。しかし、通常の検査ではわかり辛い疾患が隠れている場合があります。
全身麻酔時に重要なことはたくさんありますが、とくに重視するのが、呼吸と血圧です。この2つの管理がきちんとなされれば、通常、全身麻酔は上手くいきます。
しかし、一見元気そうに見えても、高齢動物では、脳腫瘍などの脳の疾患や、アジソン病や甲状腺機能低下症などのホルモン異常、洞停止や房室ブロックなどの不整脈などが隠れている場合があります。このような疾患があると、呼吸や血圧に変化が起きて、麻酔時にトラブルが起こる可能性が上がります。一般的に、脳腫瘍で神経症状が出るような状態はかなり進行した状態です。診断するには全身麻酔下のMRIが必要です。また、統計的にはヒトより犬の方が多いというデータがあります。副腎皮質機能低下症(アジソン病)や甲状腺機能低下症も疑わしい症状があれば術前に検査をしますが、費用がかかるため症状がなければ行われない場合が多いです。また、検査をしてもグレ-ゾーンの結果が出ることがあります。洞停止や房室ブロックなどの不整脈は術前に心電図を測定してもわからない場合があります。
このような疾患が隠れていた場合は、全身麻酔のリスクとなります。高齢動物では、検査の結果は正常でも若い時と違い各臓器の機能が弱ってきています。どの場合の全身麻酔もそうですが、メリット・デメリットを総合的に判断して、動物のために一番良い選択をすることが必要です。
こちらもご覧ください
→No77 犬の甲状腺機能低下症
→No80 副腎皮質機能低下症
→No117 全身麻酔
→No137 不整脈