No.59 雷恐怖症 Thunderstorm phobia

雷が鳴ると不安、脅え、パニック、問題行動を起こす犬や猫は、以外と多くいます。今回は雷恐怖症を考えてみましょう。花火恐怖症も同じような考え方ができます。

恐怖症を定義すると『実際の刺激とは不釣合いな、継続的な恐怖や不安などの不適応反応』です。雷恐怖症は軽度なもの(歩き回る、震える、隠れる、流涎)から重度なもの(パニック、逃避、破壊活動)まで様々な症状があります。パニックや破壊活動は動物もヒトも怪我をする可能性があります。多くの場合、雷恐怖症はだんだん悪化します。また、その子によって、雷、光、雨、風、暗闇などの実際の恐怖反応のきっかけは異なります。

基本的に動物は、強い恐怖や不安、脅えを感じると次のような生存反応をとります。

恐怖・不安・脅え→交感神経が活性化→副腎髄質からアドレナリン分泌→闘争or逃走

もう少し細かく全身を見ると、

行動:過剰な警戒、回避行動。ハンドリングや保定、撫でようとするだけでも攻撃が誘発されることがあります。

心臓:心拍数の上昇

内分泌:糖質コルチコイドの分泌上昇、血糖値の上昇

消化器:食欲不振、異常食欲、胃腸障害(流涎、嘔吐、下痢、しぶり、血便)

神経:活動性の増加、反復行動、振るえ、自傷

眼:瞳孔散大

肺:過呼吸

以上のような症状が見られます。雷恐怖症の原因はわかっていませんが、遺伝的傾向、過去の経験、学習などの全てがかかわっていると考えられています。また、分離不安などの他の問題行動を持っている動物は症状がひどくなる傾向があります。また、猫でも雷恐怖症はありますが、一般的には犬ほどひどい症状を出すことは稀です。

問題行動の治療の基本原則は


・不安の除去

・慣らすか忘れさせるか

・悪い行動は無視、良い行動にはご褒美
です。雷恐怖症でも同じです。具体的な対応として、不安の除去については、雷の音を聞かせない。窓を閉めて光を見せない。TVなどの音でごまかす。大好きなおもちゃで気を紛らわす。などの当たり前のことが基本となります。このような方法だけでうまく行く場合は良いのですが、激しい症状を示す場合は他の方法も必要となります。

雷を忘れさせることは出来ませんので、慣らすために雷の音の入った音源を用意します。聞こえるか聞こえないかの小さな音から聞かせて、その時にスペシャルなおやつを与えます。音を少しずつ大きくしていくわけですが、本当に少しずつ行って下さい。1回に30分の訓練をするより、5分ずつ毎日少しずつ行った方が効果はあがります。

また、訓練する時間がないし、本当にひどい症状を呈しているような場合は、薬剤を使用する場合もあります。

ベンゾジアゼピン系:短時間作用の抗不安薬。ジアゼパム、アルプラゾパム、クロラゼペートなど

セロトニン系:長時間作用の抗不安薬。フルオキセチン、バロキセチン、セルトラリン、クロミプラミン、アミトプチリンなど

フェロモン製剤:ドッグアピージングフェロモン(犬)、フェリウェイ(猫)

以上のような薬剤や製剤がありますが、当院では雷恐怖症にはホメオパシーを推奨しております。70~80%の犬に効果が出ます。簡単な投与で副作用もありません。ぜひご相談下さい。