最近、甲状腺機能低下症の犬をよくみます。
犬の甲状腺機能低下症の多くは、自己免疫性の甲状腺炎または特発性の甲状腺萎縮を原因としています。中~高齢犬での発生が多く、猫では稀です。
よくみられる症状として
・全身症状:肥満(50%)、虚弱や運動不耐(20%)
・皮膚症状(80%):乾燥、落屑、脱毛(尾部、前胸部、間擦部、長期になると両側対称性脱毛)、脂漏、色素沈着、膿皮症、被毛の変色、などがみられます。細菌や真菌の二次感染がなければ、通常は痒みはありません。
・神経症状:虚弱・運動失調・反射低下などの末梢神経障害(5~10%)。内耳神経麻痺・顔面神経麻痺・三叉神経麻痺・斜頚・眼振などの中枢神経症状(少数例)。
・循環器症状:ほとんどの症例で心機能の低下、叙脈。
・その他:繁殖障害、粘液水腫(むくみ)、低体温、眼疾患。
・一般血液検査:軽度の非再生性貧血(25%)、低Na、高コレステロール(75%)、低血糖、ALP・ALT・CKの上昇。
上記のようなものがありますが、簡単に言えば活力の低下です。
確定診断には血液で、血清総サイロキシン(T4 90%で低下)、血清遊離サイロキシン(fT4 90~98%で低下)、血清甲状腺刺激ホルモン(TSH 60~65%で上昇)を測定します。
治療は甲状腺ホルモンの投薬です。通常は、投薬後1週間ほどで活力の改善がみられます。皮膚症状などの改善には数ヶ月単位の時間がかかります。残念ながら生涯に渡る投薬が必要なことが多いです。