No.411 病的な震え(振戦)と痙攣1

代謝異常
病気の場合に考えられる症状として、腎機能異常、肝機能異常、電解質異常、低血糖、高アンモニア血症、低カルシウム血症、低リン血症など代謝性疾患によるものが考えられます。

・急性腎不全、慢性腎不全
腎臓は、血液を濾過し、余分な水分や老廃物などを尿として体外へ排出する機能を担っています。腎臓の機能が低下すると、排出されるはずの老廃物が犬の体内に蓄積されて血中の老廃物濃度が高まります。老廃物や毒素が体内に蓄積し、様々な障害を生じる状態を尿毒症といい、深刻な全身症状をもたらします。尿毒症の原因としては、急性腎不全、慢性腎不全、中毒などがあげられます。尿毒症では震えや痙攣が起こることが多いです。それ以外の症状として、食欲低下、元気消失、口臭、脱水、嘔吐・下痢などが見られる事があります。

・肝機能障害
肝臓機能低下や門脈体循環シャントなどにより肝性脳症が生じ、震えや痙攣が起きることもあります。肝性脳症とは、本来肝臓で解毒されるはずのアンモニアなどの体内代謝物や毒性物質が、肝臓でうまく解毒されないために全身を循環してしまい脳へ影響を与え、神経系等に障害をきたす症状を言います。他に嘔吐、よだれ、ふらつき、元気消失、徘徊行動、旋回行動、昏睡や意識障害などがみられます。

・低血糖
低血糖症とは、血液中の糖分濃度が著しく下がってしまう状態です。震えやひどくなると痙攣が起こります。その他、ふらつくき、ぐったりする、嘔吐などの症状が見られることが多いです。原因としては、子犬の長時間の空腹、糖尿病患者に対してインスリンの過剰投与、キシリトール誤食、インスリノーマ、肝機能低下による糖の産生低下、副腎皮質機能低下症などのホルモン疾患などが考えられます。

・低カルシウム血症
血中のカルシウム値が低値になると、神経や筋の興奮の異常が生じ、震えやひどい状態では痙攣が起こることあります。それ以外の症状としては、神経過敏、ぐったりする、嘔吐などの消化器症状が見られることがあります。原因としては上皮小体機能低下症、エチレングリコール中毒、出産による乳汁への過度のカルシウム移動などが考えられます。

中毒
体にとって毒性のある物質や、犬が食べてはいけないものを食べてしまうことで生じる有害作用を中毒といいます。これらの中毒によって、先述した尿毒症や肝性脳症、低血糖などの状態になると、震えや痙攣の症状が見られることがあります。誤食による震えの可能性がある場合、ただちに病院を受診する必要があります。
犬に震えや痙攣を起こす可能性のある物質
チョコレート
キシリトール
キシリトール
カフェイン
ニコチン
マカデミアナッツ
消炎鎮痛薬(人の痛み止めや解熱剤など)
殺虫剤など

こちらもご参照ください
No410 生理的な震え
No408 ニコチン中毒
No402 誤食をしたかもしれない時
No395 犬の低血糖
No365 門脈体循環シャント
No301 慢性腎不全(CKD)の推奨される治療
No300 慢性腎不全(CKD)のステージ分類
No9 犬、猫に与えてはいけない食品、薬