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No.272 猫の巨大結腸症

前回ご説明したように、猫は様々な原因で便秘を起こします。適切な対処をしないと、巨大結腸症を引き起こすことがあります。猫の巨大結腸症は、大量の便がたまり、大腸(なかでも結腸)が巨大になってしまう病気です。どの年齢の猫でも発生がみられ、数日から数か月にわたって便が出にくい症状を患って来院されます。結腸に慢性的に便が溜まると、時間の経過とともに便の水分が吸収され、便が非常に硬くなりより排泄しづらくなります。結腸はゴムのように伸縮性があり、その伸縮する力を使って排便を促します。巨大結腸症ではこのゴムが伸びきっている状態となり、うまく排便ができなくなります。結腸に便がたまりやすくなる原因としては、偏った食事や生活環境、結腸の神経異常、脊髄疾患、腸管や肛門の狭窄、交通事故等による骨盤骨折、腸管内外の腫瘍による圧迫、異物などによる通過障害、原因不明の特発性のものなどがあります。

長時間排便体制を取っている、排便時に痛がるといった症状がみられます。塊の便が出ないので、代わりに粘液や血便だけが排出されることがあり、下痢をしていると間違われることもあります。その他に、食欲が落ちる、元気がない、体重が減る、嘔吐、脱水などがみられることがあります。

巨大結腸症の治療は、内科的に食事や薬でコントロールできる場合もありますが、結腸切除術という外科手術が必要な場合が多くあります。便秘を軽く考えず、早期に対処しましょう。

巨大結腸症の猫のレントゲン 緑の・の中が便です

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No271 猫の便秘


No.271 猫の便秘

皆様、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。新型コロナウイルスのため、大変なご苦労をされている方も多いと思います。効果的なワクチン、治療薬、状況に合った政治判断が本当に欲しいです。今回は最近とても多い猫の便秘のお話です。

排便困難や排便回数の減少がみられることを便秘といいます。猫はもともと便秘になりやすい動物です。猫の便秘には重篤な病気が隠れている場合もあるので、軽く考えない方が良いです。便の回数や量には個体差があるので一概には言えませんが、3日出なければ何らかの処置が必要です。また、排便があっても、一部しか出ていなくて、実際には重度の便秘になっている場合もあります。そのような時の便は、小さく硬くコロコロしていて表面は乾燥気味です。

排便時に大きな声で鳴いていたり、トイレがいつもより長い場合は便秘かもしれません。便の切れが悪かったり、とくに高齢猫で多い便の後に嘔吐があるような場合は要注意です。生まれつき尻尾が短いマンクスや、腰椎の少ない猫、骨盤狭窄、高齢猫などは便秘になりやすいです。冬場は夏に比べて飲水量が減って便秘になりやすい季節です。

猫の便秘の原因は様々ですが、腸管の神経の異常の他、お腹の中の腫瘍や腎疾患、脱水が原因になっていることもあります。足や腰の骨、骨盤、関節や筋肉、神経などに問題がある場合も排泄時に思うように踏ん張ることができず、便秘を引き起こすことがあります。肥満も悪化因子の1つです。猫の便秘を軽く考えてはいけない理由のひとつに、慢性的な便秘から発症する『巨大結腸症(次回で解説します)』という病気があります。巨大結腸症とは、硬い便が結腸(直腸の手前の腸)に大量にたまることで、結腸が異常に広がる病気です。この状態になると手術が必要になる場合もあり、対応が遅れてしまうと、肝疾患や敗血症で命に関わることもあります。そのため「たかが便秘」と侮ってはいけません。

猫の便秘の治療は、基本的には人と同じように、内服薬で便を柔らかくしたり、浣腸などの処置が中心です。それでも自力で排便をすることが難しい場合には、獣医師が手を使って排便を助ける摘便という方法をとります。毛球症の管理やトイレの環境の見直しも重要です。

予防は水分を多く取る事、適度な運動、一般的には可溶性繊維の入った食事が推奨されます。マッサージなども効果的です。


No.270 過剰咆哮(無駄吠え)

犬の飼主さんで無駄吠えに悩んでいる方は多いです。無駄吠えが見られているとき、最初になぜ吠えているかを考えます。主に以下の5つに分類されます。

1.関心を求める行動
2.警戒信号
3.一緒に吠えている(社会的促進)
4.認知機能低下症(認知症)
5.分離不安

問題行動の治療は大きく3つの方法を組み合わせて行います。1つ目は環境の整備や調節、2つ目は行動療法、3つ目が薬物療法です。今回は主に1つ目と2つ目の方法を解説します。

1.関心を求める行動
おやつちょうだい、撫でで下さい、かまって下さい、という気持ちで吠えている場合です。この場合は、吠えても無駄と犬に思わせることが重要です。吠える行動は無視が基本です。予測可能なときは知育トイを与えます。

2.警戒信号
誰か来たよ、こっち来ないで、というときです。チャイムがなって吠えるのもこの状況です。いわゆるピンポンワンワンには、玄関に犬が出れないように柵を作っておき、ピンポンがなったら、大丈夫と教えるためにおやつをばら撒き、そちらに意識を向けます。また、普段からの練習として、ピンポンが鳴るとおやつを与えるを繰り返すことも必要です。
また、お散歩中に他の犬や子供、自転車などに吠える場合は、怖くて吠えています。距離をとり、他の行動をさせて、早く通り過ぎておやつを与えます。この時に、飼主さんの方を見てもらうため、普段からアイコンタクトの練習をしましょう。『名前を呼ぶ→顎の下におやつを持っていく→目があったら与える』を繰り返します。このアイコンタクトを使って、散歩中に横について歩けるようにします。

3.一緒に吠えている(社会的促進)
飼主さんが帰宅したときなどに嬉しくて吠えてしまう場合などです。その時に飼主さんが一緒に喜んでしまうと、犬も興奮して治まらなくなります。できるだけ、いつも通りの行動をして下さい。また、叱ると無駄吠えが酷くなるのも社会的促進です。問題行動が叱ることで解決することは、ほとんどありません。

4.認知機能低下症
認知症に完全になる前からの処置が大事です。
・脳と体への刺激(運動)
・抗酸化作用のあるフード・サプリメントの使用
・知育トイ
・ノーズワーク:犬に見えないところでおやつを入れた空き箱やタッパーを適当な場所に置き、それを探させるゲーム
・グータッチゲーム:じゃんけんのグーの中にでおやつを持ち、犬がタッチできたらおやつを与える
これらを組み合わせて、状況によっては投薬も考慮します。

5.分離不安
大好きで頼っている「仲間」の人間が出かけて物理的に離れてしまうと社会動物である犬は多かれ少なかれ不安に感じます。不安という気持ちが通常よりも強く出たり、不安な気持ちを抑える脳内ホルモンが足りなかったりするため、気持ちが落ち着かせられなくなり、動物たちはいろいろと派手な行動をして気持ちを抑えようとします。以下のことをしてみて下さい。
・「行ってきます」のあいさつをしない
・お出かけの10分くらい前に犬が長いこと遊んでいられるような知育トイを与える
・お出かけのフェイントをかける(出かけるとみせかけて出かけないなど)
・家の中で粗相をしたり破壊をするからと言って犬をケージの中に入れてお留守番をさせない(不安の強い犬を狭いところに無理に入れる と余計不安が増してケージにかみついてけがをしたり、ケージをひっか いて爪から出血したりします)

行動療法は、すぐに結果が出るものではありませんが、エンジョイしながら、まず1ヶ月頑張ってみて下さい。上手くいかない場合はご相談下さい。

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No111 認知症(CDS) 夜鳴き


No.269 紐状異物

犬や猫、フェレットは、紐や糸を誤飲してしまうことがあります。これは他の異物による閉塞よりも厄介で、腸の穿孔や壊死が生じやすいです。

紐や糸が腸に絡まると、腸はたぐり寄せられ、よじれた状態で閉塞してしまい、蠕動によって腸が切れてしまったり、虚血により壊死してしまう場合があります。

腸が完全に閉塞した場合には嘔吐、腹痛、食欲低下などの激しい症状が出ます。異物が胃の中にとどまっていれば無症状のこともありますが、後に腸に流れて閉塞する恐れがありますので、放置して大丈夫というわけではありません。

治療としては、異物が胃の中、十二指腸にある段階なら、通常、内視鏡で摘出することが可能です。十二指腸以降の腸に流れて閉塞している場合には、早急に手術をする必要があります。腸の損傷は時間が経つほど進行していきます。腸の壊死が広範囲に生じていたり、穿孔して腹膜炎になっていたりする場合は手術をしても助けらないことがありますので、早めの対処が重要となります。

紐状異物は特に猫において多くみられ、紐や糸そのものでなくても紐状のおもちゃ、衣服、布、絨毯などで危険性があります。紐で遊んでいて目を離したすきに誤飲してしまうという例が多いので、飲み込んでしまいそうな猫の場合は紐で遊ばないことです。

紐を誤飲しても運が良ければ流れて便に出てきます。しかし上記のように閉塞した場合には命に関わりますので、誤飲に気付いたらすぐに動物病院にご相談ください。特に嘔吐などの症状が出ている場合は緊急性がありますのでご注意ください。


内視鏡で摘出した紐状異物


No.268 食物アレルギー

食物をアレルゲンとした即時型の食物アレルギー(食べてすぐに蕁麻疹や呼吸困難などの症状がでるもの)は、従来は経口摂取によりアレルゲンが体内に入ってアレルギーを引き起こすと考えられていました。しかし、現在では、肌のバリア機能が低下して湿疹があるところから食物などの様々なアレルゲンが体内に入り、アレルギーを引き起こすことが判明しています。これは経皮感作と呼ばれています。

本来は体に害を与えない食べ物を、なぜ異物と判断してしまうのでしょうか。感作されてしまう原因に関しては、まだ全てが明らかになっていませんが、体の中で何らかの炎症やダメージがある部位で食べ物と出会ってしまうと、体の免疫機構が、その食べ物を悪いものと勘違いしてしまい、感作されるのではないかと考えられています。そして、炎症やダメージがある部位の中で、最も重要な部位が子供の時期の湿疹のある皮膚であることが分かっています。

つまり、湿疹のある皮膚と家の中にある小さな食べ物のかけらが出会ってしまうことによって、その食べ物を悪いものと勘違いして感作されてしまい、その後に、実際にその食べ物を口から摂取した時に異物と判断し、免疫反応が過敏に働いてしまうというメカニズムです。これは哺乳類全般にあると考えられています。

食物アレルギーは、ヒトでも動物でも、若齢のころに発症する割合が高いと言われていますが、最近の研究では、経皮感作によって大人でも食物アレルギーを発症する可能性があることがわかっています。湿疹などで表面の角層が傷ついていると、アレルゲンはもとより細菌やウイルスの侵入を許してしまい、皮膚のバリア機能障害を引き起こします。これを防ぐためにも、保湿をしっかりと行うことがなによりも有効です。ヒトの研究では、新生児期から保湿剤を塗布していた乳児は、保湿をしていない乳児に比べてアトピー性皮膚炎を発症するリスクが低いということも判明しています。湿疹や炎症などの肌荒れが起きない様に、動物も赤ちゃんの時代からしっかりとスキンケアを行い、皮膚からアレルゲンを取り込まないよう注意することが重要です。

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No267 犬の皮膚の保湿


No.267 犬の皮膚の保湿

シャンプーの後や冬場の室内では皮膚は乾燥します。犬の皮膚の乾燥は、痒みの他にも、白いフケがついたり、被毛自体がパサパサしたりなどの症状が出ますが、見た目では分からない場合もあります。特に、アトピー性皮膚炎や脂漏症のような皮膚病がある犬においては、皮膚の乾燥が悪化因子になることが報告されています。これらの皮膚病が、一見良くなっているように見える時のスキンケアは非常に重要です。

犬の保湿剤にも、クリーム、ローション、乳液、ジェルなど様々なタイプのものがあります。被毛が多い部位には塗布しやすいローション、被毛が少ないお腹などには残留性が高いクリームや乳液、肉球などの表面が硬い部位にはジェルなどの浸透性が良いものを使うなど、部位によって使い分けをするのが理想です。また、シャンプーの時に、保湿剤が入った入浴剤を使用することもオススメです。

成分に関しては、セラミド、ヒアルロン酸、リピジュア、アミノ酸、尿素などが配合されたものが保湿力が高く、皮膚の潤いが期待できます。特にセラミドはヒトセラミド、動物セラミド、植物セラミド、セラミド擬似物質などの種類があり、中でもヒトセラミドは最も保湿力が高いと言われています。犬の保湿剤にもヒトセラミドを採用しているものがあります。また、最近では、皮膚の表皮細胞を活性化し、抗酸化物質のグルタチオンの産生を促進し、コラーゲンとエラスチンの働きを活性化させ、皮膚バリア機能を高める機能がある。ナールスゲンも注目されています。

この時期、健康な犬の快適な室温は22-23℃くらいですが、冬場にエアコンを使用すると、湿度はより下がります。加湿器などによって室内の湿度を上げることも重要です。犬が快適な湿度は50-60%です。


乾燥したアトピー性皮膚炎の犬の皮膚


No.266 ウサギの斜頸

首をかしげているように頭が斜めに傾いている状態を斜頸と言います(正確には捻転斜頸)。主に脳か耳の疾患が原因です。首が左右どちらかに傾いていてまっすぐに戻らない、眼振(眼球が揺れ動く、脳の場合は縦揺れ、耳の場合は横揺れが多いです)、まっすぐ歩くことができず同じ方向にグルグルと歩き続ける、立てなくなり横に倒れてグルグル回り続ける(ローリング)などの症状が出ます。

脳の場合は、主にエンセファリトゾーン(微胞子虫)という寄生虫により、中枢神経系に異常をきたし発症します。耳の原因はスナッフルの原因菌であるパスツレラや歯牙疾患からなどの細菌感染により、耳の奥にある平衡感覚をつかさどる器官(前庭)に異常が起こり発症します。

診断は諸症状と身体一般検査の他、神経学的検査、レントゲン検査やCT検査によって鼓室や前庭の状態をみます。また、血液検査でエンセファリトゾーンの抗体値を調べることもあります。

治療は、抗生剤、ステロイド、エンセファリトゾーン症の場合には駆虫薬も使用します。食欲が出るまでは点滴や強制給仕も行います。斜頸は再発も多く、終生治療が必要になることもあります。完全に元通りになる場合もありますが、症状が軽くなっても首は傾いたままの状態で固定されたり、後遺症が残るケースもあります。


捻転斜頸でたちあがれないウサギ


No.265 看取りと安楽死についてとその後

飼主様セミナーのアンケートに入っていた質問です。重いテーマなので別に書きます。読みたくない方はスルーして下さい。

とても悲しいことですがいつかはお別れがきます。最後はご自宅で看取りたいというのは、多くの方々が同じお考えだと思います。我々獣医師、動物看護士も同じ考えです。しかし現在の日本で、まだヒトでもほとんどの方がご自宅で最期を迎えるのが難しいように、痛みが無いように苦しくないようにするには、ご自宅では困難な面があるのは否めません。

また、下記の3つが揃ってしまったら、安楽死も選択肢になります。
1.治らずコントロールもできない病気
2.痛みが取れない状態
3.食事ができない状況
海外でヒトの安楽死が合法化されている地域では、「患者の心身に耐え難い苦痛がある場合」「患者の苦痛を緩和するために安楽死以外の方法がない場合」が実施の条件として挙げられています。

前回のメルマガでも書きましたが、犬や猫、他の動物も明日の心配はしていません。今が快適かどうかです。ご自分の、生き方、哲学、宗教感などを含めて、看取り方は最後は飼主さんのご判断になります。

亡くなった後は、ヒトと同じように火葬をされる方がほとんどです。公共の場所や業者さんなど多くの施設があります。小さな動物や大きなお庭がある方は、少し深く掘って土に返してあげるのも良いと思います。犬の場合は最寄りの区役所に、亡くなったことをご連絡して下さい。


No.264 第19回 飼主様向けセミナー ご質問のまとめ

今回の内容と違うご質問もありますが、私なりに答えさせていただきます。

犬のUV防護服について
犬も強い紫外線を長時間浴び続けると皮膚や眼にダメージを受けます。外飼いでずっと紫外線を浴びるのは良くないと考えられます。しかし、犬はヒトと寿命が違うので、紫外線に対してヒトほど神経質に注意しなくても良いと思います。イタリアングレーハウンドやヘアレスドッグなどの被毛が少ない犬が着るのは良いと思います。また、おしゃれとして犬が喜んで着てくれるならそれもOKです。

動物の皮膚構造
被毛があることを除けば、それほどヒトとかわりませんが、真皮層は厚く、皮膚と筋肉の間の脂肪組織(皮下織)は、動物種によりますが、基本的に動物の方が発達しています。

猫のトイレ
No151 猫の排泄の問題をご参照下さい。

犬にとっての充実した生活
犬や猫、他の動物も明日の心配はしていません。今が心身ともに快適かどうかが全てです。また、犬は飼主さんのことが大好きです。飼主さんが幸せなら犬も幸せで充実した生活を送れると思います。

高齢犬からの歯磨き
若い犬でも高齢犬でも歯磨きは一緒です。デンタルブラシで歯磨きをしてあげる事が最も推奨されています。最初は嫌がる場合も多いので、おやつなどを利用し、少しずつ時間をかけながら習慣づけてあげて下さい。ガムやジェルなどの効果は限定的です。また、歯垢のうちは歯磨きは有効ですが、歯石になってしまったら、いくら歯磨きをしても効果はありません。スケーリングが必要です。
こちらもご参照下さい
No18 歯石
No97 歯周病1
No98 歯周病2
No108 高齢動物の歯の疾患
No134 プラークコントロール
No218 口腔鼻腔瘻

カロリーを抑えた食事を取り、SPF値の高いサンスクリーン剤で紫外線を避け、セラミドを塗りましょう。


No.263 第19回 飼主様向けセミナー

昨日の芋川玄爾先生のセミナー『皮膚のアンチエイジング』にご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。参加出来なかった方のために要旨をまとめました。

・体全身のエイジングに関与する最も大きな因子は細胞内のミトコンドリアで、食物として取り入れたグルコースと、呼吸により取り入れた酸素から、生物体のエネルギー源であるアデノシン三リン酸(ATP)を産生する際に、取り入れた酸素の2%が必然的に活性酸素種(ROS)となり、このROSがエイジングの元凶と言われている。

・摂取カロリーを65%程度とすると、さまざまな生物種において寿命の延長や抗老化現象が見られる。

・加齢に伴い、顔面にはしわやたるみなどの形態変化が起きることはよく知られており、その主要な悪化要因に紫外線(UVAやUVB)による光老化の影響が報告され、この光老化は非露光部位で起こるような自然老化とは区別されている。

・顔が若く見えると長生きする。皮膚の代謝は21歳から落ち、37歳でしわが出る。若くて健康な皮膚は弾力性とハリがある。日焼け、シミがないと若く見える。老け顔にはうねりがある。うねりを化粧で隠す、つまり化粧は若顔を目指している。

・シミ、しわ・たるみの発生は紫外線暴露により生じたROSがより明瞭な作用を引き起こす。

・アセトン・エーテル溶媒(いわゆる石鹸)の処理時間、また、肌荒れの強さに比例して溶出している主成分はセラミドである。

・角層内に存在する水は、単なる普通の水(自由水)ではなく結合水(構造水)なので、乾燥に抵抗して蒸発しない、また低温に抵抗して凍らない水として、角層の柔軟性を保ち、きれいなぷるるん肌を支えている。

・乾燥が生じる最も頻度の高い要因が加齢や皮膚洗浄によるセラミド減少によることから、生じた乾燥を改善する方法として最も合理性のある方法は、この失われたセラミドを補充し結合水を回復させることにある。

・日焼けをしない量の紫外線でも皮膚の弾力性はなくなる。

・コラーゲンは主に皮膚の強さに関係する膠原繊維。体内で作り出すことができる。コラーゲンは増えても仕方なく、増えすぎると皮膚が硬くなる、よって、コラーゲンを経口接種したり塗ったりしても意味はない。塗るコラーゲンはねっとり感で騙されてる。

・エラスチンは皮膚の弾力性に関係する弾性繊維。基本的に再生しない。紫外線でしわができるのは、エラスチンがたわむことによる。UVBは真皮に入らないが、表皮でサイトカインを作り真皮に影響する。

・血管内皮細胞が産生する血管収縮作用を有するペプチド(タンパク質の1種)、エンドセリン(EDN)にUVBを照射すると、メラノサイト細胞が増殖し、メラニン生成の促進に結びつく。EDNがメラノサイトに作用すると、細胞内のカルシウム濃度が上昇してプロテインキナーゼC系が活性化され、メラノサイトの増殖につながる。また、メラノサイト細胞膜上にEDNに対するレセプターが存在することが明らかにされた。このシステムの制御は、新しい美白剤のターゲットになるものと考えられる。

・種々の生薬エキスからEDNによる細胞内カルシウム動員を抑制するものとして、数百のエキスをスクリーニングした結果見出されたもののひとつがカミツレエキスで、シミの予防が期待される。

・ショウキョウエキス(ショウガの根茎)もしわ・たるみの予防が期待される。

・動物は表皮にメラノサイトがないのでシミができづらい。ヒトは表皮の最下層の細胞の10個に1個がメラノサイト。隠れシミは皮膚の中にあるメラニンが原因。突然のシミをシミ爆弾という。若い時の日焼けの経験による。

・チロシナーゼは、メラニン色素をつくり出すメラノサイトが持っている酵素。チロシナーゼ阻害剤でメラノサイトがメラニン合成を抑制して美白効果がある。しかし正常な皮膚もチロシナーゼを持っているため、いずれ破たんが来る。

・UVA(紫外線A波):肌の奥にある真皮まで到達し、真皮にあるコラーゲンやエラスチンを破壊する。徐々にしわ、たるみなど老化の原因になる。

・UVB(紫外線B波):主に表皮を赤くさせ、炎症を起こす。日焼けをして肌が黒くなったり、肌にシミ、そばかすができたりする原因となる。ガラス窓で室内に入って来ない。

・PA(Protection Grade of UV-A,UVA防止効果指数):一時的な黒化を引き起こし、長時間かけて肌の弾力を失わせるUVAを防ぐ効果を表す目安。黒斑が生じるまでの紫外線量を4段階の「+」マークで表示し、「+」の数が増えるにつれ、UVAに対する防御効果が高いことを表すが、実際にはあまり意味がない。

・SPF(Sun Protection Factor、紫外線防御指数):UVBを防ぐ効果指数。1~50+までの数値は、素肌に何も塗らない場合に比べて、この日焼け止めを塗った場合に何倍の紫外線に耐えうるかを表す。つまり、UVBによる炎症をどれぐらい長い時間防止できるかを表しており、数値が大きい方がUVBに対する防御効果が高い。

・日焼けは紫外線からの体の防御システム。出来るだけ長く効くSPF値の高いものを使って繰り返し塗る。冬でも塗る必要がある。塗り込むのはダメ。理想は1時間で塗りなおし。

資料は若干ですがあまりがあります。欲しい方は受付にお申し出ください。