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No.236 新型コロナウイルス(2019 n-CoV)

中国、武漢で発生した新型コロナウイルス(2019 n-CoV)に対する質問を毎日受けます。1番多い質問は、「動物にも感染するのか?」というものです。

現時点では、動物からヒトや他の動物に感染を媒介するというエビデンス(証拠)はありません。ご自宅の動物からヒトが感染することも、その逆も非常に考えづらいです。 しかし一方で新型コロナウィルスが「急激な展開を見せる」ことに対しては警戒が必要です。

世界小動物獣医師会(WSAVA )のOne Health Committee の委員長である Michael Lappin 先生は以下のこと推奨しています。

・十分に衛生状態を保てる限りは飼っている動物と一緒にいること
・猫は屋内にとどめておくこと
・もし家族や友人で新型コロナウィルス感染症で入院している者がいる場合は動物を預けに出すこと
・不安がある場合は速やかに獣医師に相談すること

また、一部の地域で販売されている犬で消化器症状を起こすコロナウイルスに対するワクチンも効果はありません。新型コロナウイルスは型が明確に異なるからです。

新型コロナウイルスについてはいまだに分からないことが多いです。今のところ、動物が感染しているかどうかの検査の方法もありません。とりあえずの課題は速やかにヒトでの感染をコントロールすることです。早く終息して欲しいですね。

世界小動物獣医師会(WSAVA ) による指針


No.235 角膜潰瘍 (Corneal ulcer)

角膜は眼球の前面で、映像を網膜に届けるために透明で、眼球内容物を守る強い膜です。約0.5mmという薄い膜であるにもかかわらず強度があり、表面から上皮、実質(コラーゲン線維)、デスメ膜、内皮の4層からなっています。眼の疾患の中でも角膜潰瘍はよく見られる疾患です。猫ではヘルペスウイルスが原因となっている場合が多くあります。

一概に潰瘍と言っても、その程度は様々で、軽いものから、上皮(一番上の層)の潰瘍を表層性潰瘍、実質まで達した潰瘍を中層性~深層性潰瘍、デスメ膜まで達した潰瘍をデスメ膜瘤、角膜に穴が開いてしまった状態を角膜穿孔といいます。また、角膜のコラーゲン線維が融解した状態の潰瘍を融解性潰瘍と言います。どの潰瘍も痛みや充血、目脂が見られ治療が必要です。とくに、デスメ膜瘤、角膜穿孔、融解性潰瘍は危険な状態です。それ以外にも、最近増加している、見た目的には重篤な潰瘍に見えなくても、数週間から数ヶ月間治らない自然発生性慢性角膜上皮欠損(SCCEDs)などがあります。

デスメ膜瘤
角膜潰瘍が深くなり、内側の薄い膜しか残っていない状態です。いつ角膜に穴が開いてもおかしくない状態です。角膜穿孔した場合には、失明の危険が高まるため、出来るだけ穿孔する前に外科手術により潰瘍を修復することが必要です。

角膜穿孔
角膜に穴が開いてしまった状態です。眼球内の主には前房水という眼の中の液体が眼の外に出て来ます。前房水だけでなく、虹彩や中には水晶体などが出てくることもあります。眼の中の構造物が出てくることはもちろん大変なことですが、前房水だけでも出て来た場合でも、眼球が虚脱し、眼内出血や網膜剥離、将来的に緑内障を引き起こし、失明にいたることもあります。緊急手術が必要になります。

融解性潰瘍
細菌感染などの要因で、角膜のコラーゲン線維を溶かす酵素が働き、丈夫な角膜を溶かしていく状態です。進行が早いことが特徴で、半日で角膜が真っ白に混濁し、ぶよぶよした状態になります。特にシーズーやパグなどの短頭種は融解性潰瘍を起こしやすい犬種です。酵素の働きを止め角膜の融解を止めないと角膜穿孔になります。

自然発生性慢性角膜上皮欠損(SCCEDs)
角膜の表面の上皮が剥離した状態で、表層性潰瘍に分類されます。通常、表層性潰瘍は1-2週間で治癒するはずですが、いつまでも良くも悪くもならない潰瘍です。この場合点眼だけではよくならないので、やはり角膜表面の外科処置が必要になります。治療用のコンタクトレンズなども使う場合があります。


角膜潰瘍


No.234 小型犬の橈尺骨骨折

橈骨、尺骨とは前足を構成する前腕部の骨で、これらの骨折はトイプードル、チワワやポメラニアンなどの小型犬でよく認められ、抱っこからの落下やソファーからのジャンプといった些細な事故の結果起こるものがほとんどです。通常は橈骨、尺骨の両方の骨折が起こり橈尺骨骨折と呼ばれますが、それぞれ単独での骨折が起こることもあります。診断は触診とレントゲン検査です。

治療は通常、外科手術が選択されますが、この部位は周囲の組織が少なく、血流が乏しい骨のため、他の部位の骨折と比べても骨がくっつかない癒合不全が起こりやすい上、特に多い遠位骨折(手首に近い方での骨折)では少しのズレが足の変形につながってしまいます。また、犬はヒトと違い、後肢よりも前肢の方に体重の負荷がかかっています。そもそも安静にするという概念はありません。適切な手術法の選択が必要です。

外固定や髄内ピンなどの固定法を単独で用いた場合には癒合不全などの合併症が起こるリスクが高く、特別な症例を除いてはプレート法または創外固定法などの方法で強固な固定をすることが望ましいとされています。プレート法と創外固定法にはそれぞれ特徴があり、骨折の形態や犬の年齢、体重、活動性、健康状態、飼主様のご意向など、様々な要素をもとに治療方針を決定します。

近年、血流阻害を起こしづらいロッキングプレートや、重量の軽いチタンプレートの登場で、癒合不全のリスクは格段に減少しましたが、プレートの破損事故なども稀にみられ、厄介な骨折の1つです。


トイプードルの橈尺骨骨折(チタン製のロッキングプレート)

こちらもご参照下さい
No180 ロッキングプレート


No.233 冬の乾燥と痒み

気温が低くなると血行が悪くなり、被毛や肌細胞に栄養が届きにくくなります。また、冬は皮脂膜も減少します。さらに、空気の乾燥により、被毛や肌の水分量が減り、皮膚表面に微細なひび割れができて、皮膚のバリア機能が低下します。バリア機能が低下すると、外部からの刺激を防ぐことができないため、刺激を受け続け、痒みの神経が皮膚の表面近くまで伸びてきてしまうことから、ちょっとした刺激でもかゆくなる、痒み過敏の状態になってしまいます。

室内でも、冬になると空気が乾燥する上に暖房が欠かせません。しかし、普通のエアコンは空気を暖めるだけなので、ますます湿度が低下してしまいます。そのような状態が続くと乾燥肌トラブルにつながります。できれば加湿器を使用してください。冬の犬や猫の室内の適温は、年齢や健康状態によっても異なりますが、目安は18℃~22℃、湿度は45%~60%です。この湿度にきちんと加湿するには、8畳のお部屋なら16畳分の加湿器が必要だといわれています。とくにマンションは乾燥しやすいので注意して下さい。また、電気こたつや電気毛布、ペットヒーターなどはかゆみがひどくなりがちなのと、使用を誤ると低温火傷のおそれがあるので注意しましょう。

また、冬はシャンプーにも注意が必要です。熱い温度のシャンプーや長時間の入浴は、皮脂や角層の保湿成分が奪われ、被毛もパサパサになります。ゴシゴシこすると、被毛も痛めるし、肌表面の皮脂膜を剥がし、角層を痛めてしまいます。優しく洗うようにしましょう。タオルドライ時も、なるべく、ふかふかのタオルを使用して下さい。

シャンプー中は角層に水分が入り込み、肌は一時的に潤いますが、お湯によって肌がふやけ、角層の細胞の間にゆるみが生じていますので、よりお肌の中の水分が逃げやすい状態になっています。シャンプー後はできるだけ早く、保湿剤を使って水分が逃げないように蓋をしてあげてください。当院では、ヒト用入浴剤のキュレルやフェルゼアをリンスやコンディショナーのように使うことを推奨していますが、被毛や肌に合えば何でも良いです。迷われる場合はご相談下さい。


キュレルの入浴剤

こちらもご参照下さい
→No161 乾燥と痒み


No.232 第19回飼主様向けセミナーのお知らせ

当院ホームページのお知らせにも載せていますが、ウェスト動物病院 第19回飼主様向けセミナーの詳細が決まりました。

日時:令和2年3月15日(日)16:30-18:30(開場16:00)
場所:横浜ベイシェラトン 5階 日輪
テーマ:『動物の皮膚病(仮題)』
講師:岩崎利郎 先生

今回の講師をお願いした岩崎先生は、獣医師、PhD(獣医学博士)、東京農工大名誉教授など多くの肩書きを持っていて、現在はVet Derm Osakaで皮膚科診療の指導をされ、英ウィメンズクリニック(スタッフが2000人以上いるヒトの不妊治療で関西でとても有名な病院です)で論文の指導をされていて、日本不妊症学会(ヒトの学会です)の理事もやられています。また、アジア獣医専門医の団体を発足させて、日本人で初めてアジア獣医皮膚科専門医になられました。70歳ですが、趣味はエレキギターと外車ととても若々しく、獣医師ならだれでも知っている伝説の先生です。講演も人気があり、なかなかいらしてもらえない先生です。とても楽しくわかりやすいお話をしていただけると思います。

ご都合のつく方は、是非ご参加ください。お申込みは、カレンダーと一緒にお配りしている申込み用紙にご記入いただいて、当院受付にご提出していただくか、お電話でのお申込みも可能です。締め切りは3月1日(日)です。特設サイト


岩崎利郎 先生


No.231 もし動物に咬まれてしまったら

先日、2002年に大分県でフェレットに咬まれ、その3カ月後に蜂窩織炎(細菌による皮下組織の炎症)を発症して17年後に亡くなったという警察官の話が報道されていました。通常、蜂窩織炎は急性の病気ですので、非常に稀なケースですし、公務の中でのことで本当にお気の毒だと思います。この件について、北里大学獣医学部小動物第1内科の木村祐哉先生は「フェレットの口腔内常在菌としてはパスツレラやコリネバクテリウムがあり、その他の動物と同様に、それらへの注意が必要となる。また、日本は狂犬病清浄国だが、場合により狂犬病も疑う必要がある」とコメントしています。

現実問題として動物に咬まれてしまった時はどのように対処したらよいのでしょうか。一般的な動物の咬傷事故の場合は、最初は患部を水道水などの流水で洗浄します。血を流しながら3-5分行います。その後、きれいなタオルなどで3-5分圧迫して血を止めます。通常、健康な方なら消毒薬は必要ありませんが、小さな子供さん、ご高齢な方、病気の治療中の方、相手が野生動物の場合や、傷が深い場合、血の止まりが悪かったり、患部の腫れがひどかったり、痛みが引かないようであれば、早期に外科を受診してください。破傷風菌の感染が疑われる場合はワクチンが必要です。また、裂傷部が大きい場合は縫合が必要な場合もあります。海外での動物咬傷事故では、狂犬病が問題になることがあるため、より注意して下さい。

また、咬傷事故が犬によるものだった場合、その犬の飼主さんは『事故発生届』を区役所の生活衛生課に届け出る必要があります。その犬は獣医師による狂犬病鑑定(通常3回程度)を受けて、犬が狂犬病に罹患していない診断書(咬傷犬狂犬病検診票)を受け取り、その診断書も区役所の生活衛生課に提出する必要があります。

こちらもご参照ください
No131 人畜共通伝染病1
No132 人畜共通伝染病2
No133 人畜共通伝染病3


No.230 ハムスターの低体温症(疑似冬眠)

ハムスターの低体温症(疑似冬眠)は、11月~3月の冬季に多くみられるトラブルで、発見が遅れると死亡する深刻な状態ですが、原因のほとんどは飼育上の問題です。

低体温症の1番の原因は寒さ(5℃以下)です。 冬季は必ず保温が必要です。 第2に食事不足です。 温度が下がったうえに、カロリーの不足が起こると、体温が維持できずに数時間で死亡します。

病院へ来る症状で最も多いものが「朝見たら冷たくなっていた」、「学校(仕事)から帰って見たら動かない」というものです。 軽度のものは、ふらふら歩くというような場合もあります。

軽症の場合は暖めるだけで回復し短時間で元気になる場合もありますが、内臓機能(とくに心臓)が障害をうけると、回復したように見えても、その後すぐに状態が悪化する場合があるので、3-7日間は十分に注意しなければなりません。 重度のものは、保温と同時に、点滴やブドウ糖の投与、心肺機能を守る処置をして、レーザーなどの理学療法も行い救命します。 その後数日間、集中的な治療が必要な場合もあります。

予防は、保温と食事管理です。ハムスターは種類を問わず好む温度は18~21℃といわれています。最低気温が20℃以下にならないようにお部屋を温めましょう。ペットヒーターだけではなく、必ずエアコンを使用して、お部屋の全体の温度を24時間20℃を下回らないようにしてあげて下さい。また、食事は切らさないように、バランスよく常時ケージに入れておきましょう。


No.229 様子を見る

「様子を見る」という対応のことを「経過観察」といいます。「経過観察」は、獣医師が動物に対して行う「医療行為」の選択肢の一つです。

「経過観察」とは、「何もしない」ではなく、「治療介入せずに様子を見てみる」という意味です。病気の中には、初期の段階で、症状や検査結果に軽微な変化しか表れず、診断がつきにくいものがたくさんあります。こういう段階から、効果が期待できるわけでもない中途半端な治療を加えると、症状や検査値が変化し、ますます正確な診断から遠ざかってしまいます。

「様子を見ましょう」は、「治療せずに、数日あるいは数週間、数カ月の一定期間をおいてからもう一度診察や検査をしましょう」「治療をせずに経過を見て、何らかの症状の変化があった段階でもう一度受診をして下さい」という判断です。

大切なことは、この経過観察期間の後、動物の体にどんな変化があったか、あるいは何も変化がなかったかを最も正確に判断できるのは、「経過観察」という方針を選択した獣医師だけだということです。

よく「1週間くらい前から軽い下痢が続いてます。病院に行った方がよいでしょうか?」といった相談のお電話があります。こういう質問をされて「連れて来なくても大丈夫ですよ」と答えることはまずできません。診察せず、飼主さんの語る主観的な情報だけを頼りに「経過観察」という医療行為を行うことが危険だからです。

『様子をみることは全ての病気に対して選択肢の1つであるが、それが1番良い選択であることは少ない』日本一の獣医臨床病理診断医、平田雅彦先生の言葉です。


No.228 猫コロナウイルス(Feline coronavirus: FCoV)と猫伝染性腹膜炎(FIP)

猫コロナウイルスは、多くの猫が保有しているウイルスで、猫腸コロナウイルス(FECV)と、猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)があります。この2つは非常に似ているため検査で区別することが困難です。症状は、猫腸コロナウイルスは、軽い下痢などの消化器症状を引き起こす程度ですが、猫伝染性腹膜炎ウイルスは、致死性の高い猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症させます。

猫コロナウイルスの感染経路は明らかになっていませんが、糞便や唾液中のウイルスが口や鼻を介して感染すると考えられています。猫から猫へ容易に感染するのは猫腸コロナウイルスです。一方、猫伝染性腹膜炎ウイルスの感染力は弱く、猫から猫への感染はないと考えられています。現在のところ、FIPは、猫腸コロナウイルスに感染した猫の体内で、ウイルスが突然変異を起こすことで発症すると考えられています。猫からヒトや犬などの他の動物種には感染しません。

FIPを発症すると、血管に炎症が生じ、腹膜(胃や肝臓など臓器の表面とそれらの臓器がおさまっている腹腔を包んでいる膜)に炎症が起こります。症状はウェットタイプとドライタイプの2つに分類されますが、どちらのタイプも初期症状は、発熱や食欲低下など、どんな病気にもよくある症状です。多くの場合治療への反応が悪く、診断後、数日から数ヶ月で亡くなってしまう致死率の高い病気です。

1. ウェットタイプ
多くがこのタイプです。体重減少・元気減退・発熱等の症状とともに、腹水や胸水が溜まり、肺を圧迫することにより呼吸困難などの症状を起こします。病原性が高く、多くの場合2か月以内に死亡します。

2. ドライタイプ
体重減少・元気減退・発熱等の症状とともに、眼にぶどう膜炎や虹彩炎などの症状を起こしたり、脳内に炎症を起こし、麻痺や痙攣などの神経症状を起こします。腎臓や肝臓・腸にも異常が現れることがあります。ウェットタイプに比べ、やや慢性的な経過をたどる傾向がありますが、これもまたほとんどの場合は致死的です。

猫コロナウイルスの感染を調べるには、血液中の抗体を調べる検査が一般的です。その他にも血液や糞便中のウイルスを検出する遺伝子検査(PCR検査)も行われることがあります。腹水や胸水を用いて遺伝子検査を行うこともありますが、現在、いずれの検査も猫腸コロナウイルスと、猫伝染性腹膜炎ウイルスを区別することはできません。そのため、猫コロナウイルスの抗体価が高い、ウイルスが陽性など、ウイルス感染がある場合でも、症状と併せて、総合的に、猫腸コロナウイルスを保有しているだけの状態なのか、FIPを発症している可能性が高いのかなどを判断する必要があります。

FIPは、全年齢の猫で発症がみられますが、多くは1歳未満の幼猫で発症します。愛らしい仔猫の時期に本当に切ない病気です。FIPの発症は、免疫抑制を起こすウイルス感染や、環境のストレスなどが関与していると考えられていて、多頭飼育下でFIPが発生した場合には、その集団での発生率は高くなることが知られています。

FIPの治療は、抗生物質、抗炎症剤等の投与と併せて、症状により胸水や腹水の抜去、栄養保持などの対象療法を行います。代替療法を用いる場合もあります。治療への反応が悪いことが多く、現在のところ完全に治す治療法はありません。最近、エボラ出血熱治療薬の研究の中で発見された、GS-441524という研究用試薬がFIPに効果があるという実験結果が出ましたが、エボラ出血熱の治療を優先すべく、猫に対しては認可を申請していません。インターネットなどで高額で販売されているのを見かけますが、現在のところ闇の薬です。ワクチンも海外にはありますが、きちんとした効果は確認できていません。1日も早く良い治療法が確立されて欲しい疾患の1つです。


No.227 高齢犬に対するフィラリアやワクチンなどの予防

高齢の犬に対して、狂犬病や混合ワクチンといった予防注射や、フィラリアやノミ、ダニの予防を行うかどうかは飼主さんにとっても迷うことの一つでしょう。個々に考えてみましょう。

狂犬病の予防注射については、日本では生後91日以上の犬に対して接種が義務付けられています。狂犬病は日本での発生こそ50年以上ありませんが、インドや中国、その他いくつかの国々でも、いまだに毎年多くのヒトが亡くなっている怖ろしい病気です。法的にも、高齢だけを理由に狂犬病予防注射を接種しないということはできません。健康状態に問題がある場合には、動物病院で狂犬病予防注射猶予証明書を発行することができます。猶予証明書は毎年必要です。

混合ワクチンについては、健康状態、飼育されている環境によって判断します。健康状態に問題がある場合や、ワクチンの効果を消してしまうような薬を飲んでいる時は接種することはできません。また、伝染病の流行地域に住んでいる場合は、接種のメリットがデメリットを上回ると考えられます。混合ワクチンの接種を行わないと、ペットホテルやドッグラン、ドッグカフェなどの施設を利用することが出来なくなる場合があります。抗体価検査を行うという方法もあります。

フィラリアにおいては、蚊に刺される環境にないのであれば、予防薬の投与は必要ありませんが、少しでも感染の可能性があれば投与すべきでしょう。ノミやダニにおいても、お散歩に行けないくらいの高齢な場合は予防する必要はありません。

現在のワクチンや各種予防薬は、かなり安全性の高いものになっています。迷った場合は獣医師と相談して、一番良い選択をしてあげて下さい。

こちらもご参照ください
No7 狂犬病予防注射
No11 フィラリア予防
No47 狂犬病予防注射について
No136 抗体価検査